2 振動規制法による規制
51年12月1日に施行された振動規制法では、都道府県知事が振動を防止することにより住民の生活環境を保全する必要があると認める地域を指定し、この地域内において、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる振動について必要な規制を行うとともに、道路交通振動に係る要請の措置を定めることなどにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的としている。
本法は6章29条から成っているが、振動の住民に与える影響が主として心理的、感覚的なものであり、影響の及ぶ範囲も一般に発生源の周辺に限られるなど騒音と類似の特性が見られること、また振動と騒音は発生源を同じくする場合が多いことなどの理由から、法体系は騒音規制法にほぼ準じたものとなっている。
都道府県知事による地域指定の実施は、53年2月末現在で、1都2府14県において294市272町29村23特別区に及んでいる。
なお、振動規制法の円滑なる施行に資するため、52年度において振動発生の状況をは握する目的で、43道府県において振動規制実態調査を行った。
(1) 工場振動
工場、事業場振動について規制の対象になるのは、指定地域内にあって、政令で定める特定施設を設置している工場及び事業場(特定工場等という。)である。
政令で定める特定施設は、第4-2-2表に示す通りである。
特定工場等には、環境庁長官が定める基準(第4-2-3表)の範囲内において都道府県知事が定める規制基準の遵守義務が課せられており、都道府県知事(政令で市区町村長に委任されている。以下同じ。)は、規制基準に適合しない振動を発生することにより周辺の生活環境が損なわれると認めるときは、振動の防止の方法等に関し、改善等の勧告及び改善命令を行うことができる。
(2) 建設作業振動
建設作業振動について規制の対象となるのは、指定地域内において施工される建設作業であって、政令で定める特定建設作業である。
政令で定める特定建設作業は第4-2-4表の通りである。
都道府県知事は、一定の基準(第4-2-5表)に適合しない振動を発生することにより周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるときは、振動の防止の方法等に関し、改善勧告及び改善命令を行うことができる。
(3) 振動防止対策
工場施設については、低振動機械の採用、吊基礎、直接支示基礎(板ばね、コイルばね等を使用するもの)・空気ばねなどの防振装置の設置、機械基礎の改善等により、防振対策が行われている。
また、騒音と同じく振動が問題となる工場、事業場の多くは中小規模であり、資金的な面から移転が困難な場合が多いので、公害防止事業団などにおいて、共同利用建物の建設、あるいは、工場団地の造成を行い、中小工場にあっせんしている。
建設作業については、振動を発生する建設機械の改良のみならず、低振動工法の開発が積極的に進められている。
振動防止対策としては、以上のような対策が行われているが、今後は、発生源対策のみならず、振動の伝播減衰特性や家屋防振構造等を勘案して周辺対策を含めた総合的な土地利用計画等を検討する必要がある。
なお、環境庁では、行政担当者等の防振技術の参考に資するため、51年度の「振動規制技術マニュアル(基礎編)」に続き52年度には「振動規制技術マニュアル(工場振動編)」を取りまとめた。また、通商産業省では、業種ごとの振動防止対策指導書を作成し、当該業種における企業に対し指導を進めている。
(4) 低周波空気振動対策
近年、低周波空気振動による影響がクローズアップされてきている。しかし、低周波空気振動は、その発生源が多種多様(第4-2-6表)であり、その防止対策の確率が十分になされてはいないため、環境庁では51年度において、低周波空気振動がかなりのレベルで発生しているとして苦情が比較的顕著な場所を全国で10か所(道路橋3か所、工場施設6か所、新幹線トンネル1か所)選定して実態調査を実施したのに続き、52年度から低周波空気振動の生理的影響等に関する実験研究に着手している。
低周波空気振動のレベルと、物的・心理的・生理的影響等との相関のは握については、個人差が大きいことなどもあって、基準等の設定に至るまでには相当の年月を要するものと思われるが、現実に苦情・被害が発生していることにかんがみ、53年度から防止対策を明らかにするための調査を行い、低周波空気振動の防止に資することとしている。