前のページ 次のページ

第1節 

2 汚染物質別の大気汚染状況等

 一般環境大気測定局のデーターを中心に、汚染物質別の大気汚染状況を見ると次のとおりである。
(1) 二酸化硫黄
? 年平均値の推移
 40年度から12年間継続して同一地点で測定を行っている一般環境測定局15局の年平均値の経年変化は、第2-1-2表に示すとおりである。これらの測定局は、四日市市の磯津や川崎市の大師保健所等をはじめ40年代の前半において代表的な二酸化硫黄汚染地域であった地域に設置されているものである。51年度におけるこれらの測定局の年平均値はピーク時のおおよそ3分の1に減少しており、この面での環境の改善が著しい。また、これらの測定局における40年度から51年度までの年平均値の単純平均値をみると、第2-1-3図に示すように43年度以降は汚染が着実に減少し、51年度においても引き続き改善の方向にある。
 また、50年度と51年度の2年間連続して有効測定時間以上測定している1,212測定局における年平均値の増減状況を示すと、第2-1-4表のとおりである。
 前年度に比較して二酸化硫黄濃度が増加している測定局は34局(2.8%)にすぎない。しかも、これらの測定局は各地域に散在しており、特定の都道府県における汚染の増加は見られない。また、減少している測定局は125局(10.3%)であり、地域的には福岡県において汚染状況の著しい改善が見られるほか、茨城、富山等の各県においても改善が見られる。
 なお、一時間値の環境基準(0.10ppm)の適合状況も年々改善の傾向にあり、1時間値0.10ppmを超えた時間数の最も多い一般環境測定局における不適合時間数は50年度の312時間から51年度の103時間と減少し、また0.10ppmを超えた時間数の全有効測定時間数に対し占める割合の非常に少い(0.1%未満)測定局数も50年度の727局から947局へと増加した。


(2) 環境基準の達成状況の推移と現状
 環境基準については次のようにして長期的な評価を行うこととしている。すなわち、年間にわたる1日平均値につき、測定値の高い方から2%の範囲内にあるものを除外した1日平均値(例えば年間365日分の測定値がある場合は高い方から7日分を除いた8日目の1日平均値)が0.04ppmを超えず、かつ、年間を通じて1日平均値が0.04ppmを超える日が2日以上連続しない場合を環境基準の長期的評価に適合するものとしている。
 長期的評価に基づく環境基準の達成状況の推移は、第2-1-5表のとおりである。51年度における環境基準を達成した都市及び測定局の総数に対する割合は、50年度に比べて都市、測定局とも約10%増加している。
 51年度において二酸化硫黄の測定を行った全国の測定局のうち年間測定時間が有効測定時間以上測定している測定局は、504都市、1,353測定局である。このうち51年度に新たに長期的評価による環境基準を達成した都市は48都市であり、これらの中には公害の原点といわれる四日市市も含まれている。また長期的評価による環境基準を達成しなかった都市は84都市である。
 しかしながら、環境基準未達成の測定局は約12%あり、東京、大阪などに多くなっている。これらの地域は、改善が見られるものの依然として環境基準を上回っており、現在実施中の総量規制等の効果が期待される。
 なお、これら環境基準を超えている測定局のうち、年平均値の上位測定局をみると第2-1-6表のとおりである。


(2) 二酸化窒素
 二酸化窒素による大気汚染は、物の燃焼に起因して発生するものが主体と考えられる。その場合、直接発生するものはほとんどが一酸化窒素であるが、これが大気中で酸化されて二酸化窒素に変化する。
 大気汚染の発生源として、二酸化硫黄の場合には工場等が主たるものであるが、二酸化窒素の場合には、工場等に加えて自動車等の移動発生源のウエイトも大きく、また都市における各種商業施設や一般家庭における暖房等の群小発生源も存在する。
? 年平均値の推移等
 二酸化窒素について継続して測定を行っている一般環境測定局の経年変化を第2-1-7表に示した。これらの測定局のうち43年度から継続して測定している6測定局について経年的に年平均値の単純平均値をとり、図示すると第2-1-8図のようになる。次に、45年度からデータの得られた10局を加えた16局につき同様に経年変化を図示すると第2-1-9図のようになる。いずれも48年度からほぼ横ばい状態を示している。
 なお、51年度の一般環境測定局の年平均値の濃度別測定局数分布は第2-1-10表のとおりであった。
 また、50年度と51年度の2年間連続して有効測定時間以上測定している660測定局における年平均値の増減状況を示すと第2-1-11表のとおりである。
 一方、自動車排ガスに係る窒素酸化物の測定は97都市185局で行われているが、46年度より継続して測定を行っている26局の自動車排出ガス測定局の経年変化は第2-1-12表及び第2-1-13図のとおりであり、全体的には横ばいないし微増の傾向にあるが、大都市中心部に位置し自動車交通量の増加がみられない測定局である東京都内の自動車排出ガス測定局(霞ヶ関等3局)の経年変化では、47年度まで増加の傾向にあったものの、それ以降減少傾向をみせている(後述自動車排出ガス対策の項参照)。なお、51年度においては、自動車排出ガス測定局の年平均値の最高値は0.069ppm、全測定局の単純平均値は0.038ppmであり、前年度と同様である。
? 環境基準の達成状況
 51年度において二酸化窒素の測定を行った全国の一般環境測定局のうち年間を通じて有効測定時間以上測定している測定局は、390都市、798測定局である。
 このうち、長期的評価による環境基準を達成した測定局は72局である。これらの内訳は、39局が50年度に引き続き環境基準を維持し、14局が51年度に新設された局、10局は50年度は有効測定時間に達していなかった測定局である。しかし、この10局は、測定時間内で長期的評価を試みればいずれも環境基準を達成していたものである。残る9局は、50年度は環境基準を達成していなかったが51年度には達成した局である。
 次に、日平均値0.02ppmを超えた日数の有効測定日数に対する割合(環境基準不適合率)の分布を見ると第2-1-14表のとおりであり、有効測定局798局中環境基準不適合率2%以下の局は83局(10.4%)であった。
 また、二酸化窒素の環境基準を5年以内に達成するよう努める地域(5年達成地域)と、5年以内に中間目標(環境基準を年間総日数の60%以上維持)を達成し8年以内に環境基準を達成するよう努める地域(8年達成地域)とにおける環境基準の不適合率別測定局数を示すと、第2-1-15表及び第2-1-16表のとおりである。8年達成地域で中間目標を達成しているものは53局(18.5%)で、50年度の54局(21.4%)に比較して減少している。また、5年達成地域について、8年達成地域との比較を試みると、中間目標レベルに達している測定局は357局(69.7%)で8年達成地域の4倍弱を示しており、50年度の280局(67.6%)に比較して増加している。
 なお、日平均値の2%除外値が高い10位までの測定局をみると第2-1-17表のとおりであり、大都市に集中している。
 日平均値の2%除外値が0.090ppm以上の測定局は、50年度は16局であったが、51年度は7局に減少している。また、日平均値の2%除外値が0.100ppm以上の測定局は、50年度は0.126ppmを最高として7局であったが、51年度は大阪今宮中学校の0.105ppm1局となった。これら一般環境測定局ごとの日平均値の2%除外値の累積度数分布図を示せば第2-1-18図のとおりである。
 一方、自動車排出ガス測定局における二酸化窒素濃度は、試みに日平均値の2%除外値でみると、有効測定時間に達した測定局では0.021ppmから0.142ppmの範囲にあり、中位の濃度はおよそ0.07ppmであった。
 なお、自動車排出ガス測定局は、大気汚染防止法及び道路交通法の規定に基づき発生源たる自動車の交通規制等の措置を講ずるための基礎資料を得ることを目的として設けられているものであり、このため、環境基準に係る告示により環境基準が適用されないこととされている車道、交差点等の自動車排ガスの影響が最も著しいと目される箇所において大気をサンプリングしていることが多いので、環境基準と直接に対比しうるものではない点に留意しなければならない。
? 一酸化窒素
 一酸化窒素について、46年度から継続して測定している一般環境測定局27局における年平均値の単純平均値の推移は次のとおりである。6年間の推移で見る限りでは、一酸化窒素の濃度は減少傾向にある。
 46年度 47年度 48年度
 0.029ppm 0.027ppm 0.023ppm
 49年度 50年度 51年度
 0.024ppm 0.023ppm 0.023ppm


 一方、自動車排出ガス測定局における一酸化窒素の測定結果については、経年的な変化をみると、各年度に有効測定時間に達した全測定局の年平均値の単純平均値は以下のとおり推移している。
 47年度 48年度 49年度
 0.069ppm 0.069ppm 0.064ppm
 50年度 51年度
 0.064ppm 0.065ppm
 なお、NOからNO2への酸化程度を示すNO2/(NO+NO2)の値は、一般環境測定局では、25.3〜95.9%の範囲(全測定局の約77%が50%以上)にあり、自動車排出ガス測定局では、18.4〜75.5%の範囲(全測定局の約93%が50%以下)にある(第2-1-19図参照)。
(3) 一酸化炭素
 一酸化炭素の主な発生源は、自動車からの排出ガスである。したがって、その汚染の程度をは握するには、交通量の多い道路端、交差点付近等における一酸化炭素濃度の推移を見ることが必要である。例えば、都内3か所の自動車排出ガス測定所における一酸化炭素濃度は、40年度以降漸増したが、45年度には初めて減少し、それ以降は漸減傾向にある。また、地方自治体の設置している全国283局(有効測定時間に達した局)の51年度測定結果では、測定局を設けている目的から環境基準と直接対比することはできないが、8時間値が20ppmを超えた日数が1回以上あった自動車排出ガス測定局は3か所、日平均値が10ppmを超えた日数が1日以上の測定局は25か所であった。
 一方、43年度から継続測定している一般環境測定局は、東京、大阪の国設大気測定所であり、その測定値の推移は第2-1-20表のとおり、両測定局とも50年度は51年度に比べほぼ横ばいといえよう。
 次に、50年度と51年度にわたり継続して有効測定時間以上測定している110測定局における年平均値の増減状況を見ると第2-1-21表のとおりであり、増加している測定局の割合は、50年度(14%)より低くなっている。
 なお、51年度一酸化炭素測定データのうち有効測定時間以上測定している測定局は、112都市、151局あるが、これらの測定局について長期的評価による環境基準達成状況を見ると、いずれの測定局も環境基準を達成している。
第2-1-19図 昭和51年度一般環境測定局及び自動車排出ガス測定局におけるNO2

(4) オキシダント
 オキシダントの発生は気象条件に大きく左右されるため、高濃度のオキシダントの発生状況は年によりばらつきを示しているが、注意報発令濃度である1時間値が0.15ppmを超えた日数の経年変化をみると、第2-1-22表のとおりである(注意報の発令回数等については、第2節5参照)。
 オキシダントの昼間の1時間値が0.15ppm以上の日数が多い10位までの測定局は、第2-1-23表のとおりであり、埼玉県下の各都市に集中している。
 なお、52年度においては、光化学オキシダント測定の精度向上のため、動的校正法の導入、既存オキシダント側定機の読み替えを骨子とする総理府令が施行されたが、51年度はこの新しい測定法採用以前であるのでオキシダント濃度の数値は従前と同様に表示されている。


(5) 炭化水素
 炭化水素は、有機溶剤を使用する工場、石油類のタンク等の固定発生源から排出され、また、自動車排出ガスにも含有されているなど、多種多様な発生源から排出される。
 従来から行われている炭化水素の測定は、メタン、非メタンの分離測定のできない全炭化水素の測定である。ところが、50年11月には、JISで非メタン炭化水素の測定法が定まり、また、51年8月中央公害対策審議会より「光化学オキシダントの生成防止のための大気中炭化水素濃度の指針について」が答申され、この中で、炭化水素の測定については非メタン炭化水素を測定することとし、光化学オキシダント生成防止のための濃度レベルの指針として6〜9時の3時間平均値が0.20ppmC〜0.31ppmCの範囲にあるとされた。今後は、非メタン炭化水素の測定体制を整備することとしている。
 一般環境測定局では、51年度の非メタン炭化水素の測定は31都市、39測定局で行われた。
 6〜9時の3時間平均値の年平均値の濃度分布を示すと第2-1-24表のとおりである。
 一方、自動車排出ガス測定局における非メタン炭化水素の測定は、7都市9測定局において行われたが、その6〜9時の3時間平均値の年平均値は0.37ppmC〜1.15ppmCの間にあった。
 なお、参考までに、全炭化水素について一般環境測定局における年平均値の経年変化を示すと第2-1-25表のとおりであり、年々減少の傾向がみられる。
 また、同様に、自動車排出ガス測定局について経年変化をみると第2-1-26表のとおりであり、年々減少の傾向がみられる。


(6) 浮遊粒子状物質
 浮遊粉じんのうち粒径10μ以下の粒子は沈降速度が小さく、大気中に比較的長期間滞留し、気道又は肺胞に沈着して呼吸器に影響を及ぼすことから、10μ以下の粒子を対象として浮遊粒子状物質に係る環境基準(1時間値の1日平均値が0.10mg/m
3
以下であり、かつ、1時間値が0.20mg/m
3
以下)が設定されている。
 浮遊粒子状物質の測定は、ろ過捕集による重量濃度を基準としてこれと直線的関係が得られる光散乱法を相対濃度測定法として行うことになっており、評価に際しては、重量濃度測定値と光散乱法による測定値との比を用いて光散乱法による相対濃度計の指示値を重量濃度へ換算することとしている。
 一般環境測定局における51年度の浮遊粒子状物質測定データのうち有効測定時間以上測定している局は、86都市、177局であり、このうち、環境基準の長期的評価を達成している測定局は50局(28.3%)である。
 なお、49、50、51年度継続して測定を行っている国設東京、大阪、北九州の3測定局の測定結果をみると第2-1-27表のとおりである。
 また、ハイボリウム、エアサンプラーで採取した浮遊粉じん(粒径10μ以上の粒子を含むので、環境基準と対比することはできない。)の経年変化及び浮遊粉じん中の硝酸イオン、硫酸イオンの経年変化は後に掲げる第2-1-29図のとおりである。


(7) 降下ばいじん
 降下ばいじんは、大気中の粒子状物質のうち重力により又は雨によって降下するばい煙、粉じん等である。
 測定は採取装置を用いて1か月間試料を採取し、その重量の秤量によって行い、測定結果はt/km
2
/月で示される。年平均値は月間降下ばいじん量を平均したものである。
 51年度に測定が行われた1,695地点中、10t/km
2
/月以上を示した地点数は147地点(8.7%)で、このうち20t/km
2
/月以上を示したのは20地点(1.2%)、30t/km
2
/月以上を示したのは9地点(0.5%)となっている。ただし、この中には桜島の噴煙の影響による鹿児島市内の測定地点のものが含まれている。20t/km
2
/月以上を示した測定地点は、セメント、石灰、鉄鋼関係の産業のある都市に多く見られる。
 47年度から継続して測定を行っている1,155測定地点について、降下ばいじん量の年平均値の推移を示すと第2-1-28表のとおりである。5年間で10t/km2/月以上の測定地点が著しく減少しており、この面での環境の改善が進んでいる。


(8) その他の物質
 近年、粒子状物質については、単にその量だけでなく、成分等その質的な面が注目されている。
 全国の主要地域に設置されている国設大気汚染測定所においては、前述の常時監視測定されている物質以外に、ハイボリウム・エアサンプラーにより採取した浮遊粉じん中の成分(ベンゼン可溶性物質、硫酸根、硝酸根、バナジウム等重金属、ベンゾ(a)ピレン等)及びローボリウム・エアサンプラーにより採取した浮遊粒子状物質中の成分(アルミニウム、バリウム等24元素)の分析を行っている。これらのうち、浮遊粉じん中の成分の測定結果は参考資料5に示すとおりである。
 このほかの常時監視測定されていない物質についても、環境大気調査として、測定法を統一化し大気中の汚染物質等の地域ごとの詳細な分布量の調査を行っており、52年度においては、全国9地域で総弗素、ガス状総ハロゲン等20数物質の測定分析を行った。
(9) 国設環境大気測定所における測定結果
 全国の主要な平野部の端に国設環境大気測定所を設置し、汚染物質の常時測定を行っているが、これら測定所は既汚染地域以外の地域に設けられていることから、これら測定所の測定結果は未汚染地域の濃度(バックグラウンド値)がどの程度であるかを知るための良い手掛かりとなっている。
 特に、箟岳等の人間活動の盛んな地域から離れた地点に設置されている測定局では、バックグラウンド値に近い濃度を示していると考えられる(第2-1-30表)。

前のページ 次のページ