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第8節 

2 51年度における地方環境情勢のは握

(1) 地方環境問題に関する情報の収集
 地方環境問題に関する管内諸情勢の常時は握を行っている管区等から報告された地方環境問題に関する情報は1,491件であり、より国民に密着したきめ細かい環境行政の推進に広く活用している。これを主な類型別で見ると次のとおりである。
ア 開発行為に伴う環境影響評価等に関するもの
 本類型の情報を開発行為の種類で見ると、電源立地計画をはじめ、港湾計画、道路鉄道計画などに関するものが多いが、51年度の特色としては、電源立地について予備調査の段階から立地を問題としているもの、流域下水道計画に基づく終末処理場の建設を巡り、工場排水との混合処理、有害物質の排除等が問題だとして立地に反対しているものが多く見られた。
イ 大気汚染に関するもの
 情報の内容では、固定発生源や移動発生源による汚染被害や対策に関するものを中心に、光化学スモッグの発生被害に関するものなどが多いが、51年度の特色としては、都道府県等における窒素酸化物汚染対策のための基礎的調査等に関するもの、工場の建設に伴う企業の脱硝装置設置の問題、硫黄酸化物総排出量の配分問題などが見られた。
ウ 水質汚濁に関するもの
 本類型は、都道府県における公共用水域の監視業務の動向に関するものが多いが、特に、閉鎖性水域での赤潮の発生やその被害、対策に関するもの、船舶事故等による油濁被害とその対策に関するものが注目された。
エ 騒音・振動・悪臭に関するもの
 騒音・振動関係は、自動車、航空機及び鉄道の3つの発生源別にほぼ同じ割合の情報があったが、自動車公害や航空機騒音に関する訴訟提起に関するものも含まれており、振動については、低周波振動に関するものなどがみられた。また、悪臭関係で特色のあるものとして、地方公共団体による独自の悪臭判定の試みに関するものなどが見られた。
オ 廃棄物・地盤沈下に関するもの
 産業廃棄物に関するものは、不適正な処理や不法投棄の事案をはじめ、焼却場や埋立処分地の確保に伴う地元住民との対立、県等における産業廃棄物処理基本計画策定の動向等多方面にわたっているが、51年度における報告のうちでは、埋立地からの汚水浸出や悪臭の実態、対策に関するもの、他地域からの搬入処分や処理施設設置等に伴う地方公共団体相互間の対立に関するものなどが注目された。地盤沈下関係では、地下水揚水規制に関する条例の制定等の動向に関するものが多く見られた。
カ 土壌汚染・農薬に関するもの
 土壌汚染関係では、県等の産米汚染調査結果に基づく対策や富山県下の神通川流域のカドミウム汚染農用地における復元対策に関するものなどがあり、農薬関係では、モリネート除草剤散布に伴なうものと疑われる魚類のへい死に関するものが多く見られた。
キ 公害健康被害に関するもの
 「公害健康被害補償法」に基づく地域指定、認定審査、補償給付及び地域指定されていない地域の住民健康調査に関するものがほとんどであるが、住民団体等が地域住民の健康被害に関する健康診断や実態調査を自主的に行っている事例なども見られた。
ク 自然保護に関するもの
 国立、国定公園内の行為、鳥獣の保護、鳥獣による被害、都道府県の自然環境保全地域の指定などに関するものが多いが、51年度は、52年度を初年度とする第4次鳥獣保護事業計画の策定のための作業を都道府県において進めたため、都道府県の鳥獣保護に関する施策や鳥獣保護団体の活動状況等に関するものが比較的多く見られたほか、ニホンカモシカなどによる農作物の被害に関するものが報告された。
 以上のほか、地方公共団体の環境保全に関する条例の要綱の制定、改廃、被害防止協定の締結、研究開発などに関する情報が見られた。
(2) 環境モニターに関するアンケート調査の実施
 環境問題に対する国民の意見、要望のなどを全国的には握し、環境行政の施策の参考に資するため、全国で500人の環境モニターを委嘱している。これらのモニターに対して、51年11月には環境影響評価(環境アセスメント)についてのアンケート調査を実施したほか、モニターから随時自発的な意見や要望が多数提出され、業務の参考に供している。
(3) 資料の収集及び整理
 行政管理庁の管区等及び地方行政監察局に配置されている調査官等を通じて収集した資料等の主なものは、次のとおりである。
ア 51年度における地方公共団体の環境保全に関する重点施策調査
 環境行政の推進に当たって地方公共団体が果たす役割の重要性にかんがみ、都道府県及び政令指定都市(9大市)の重点施策をは握し、国及び地方公共団体の環境行政を総合的に推進するための基礎資料とするもの
イ 環境問題に関する訴訟状況調査
 地域における環境問題として訴訟が住民等によって提起されるケースが多くなっていることから、地方環境問題は握の基礎資料とするもの
ウ その他
 環境庁が各都道府県及び各政令指定市に対して行う「大気汚染防止法」、「騒音規制法」、「悪臭防止法」及び「水質汚濁防止法」の施行状況等に関する調査の管区等での取りまとめの実施、都道府県及び各政令指定市における「公害の状況及び公害の防止に関して講じた施策に関する年次報告書」等の発行状況調査、「環境行政機構便覧」の充実を図るための調査等を行った。
 以上のほか、51年度における地方環境問題に関する情報報告及び収集資料等のより一層の活用を図るため、これらを環境問題別、都道府県別に分類、整理した「環境調査年報」を作成した。

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