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第1節 調査研究の総合的推進

 環境保全及び公害防止の施策を推進するには科学技術の支えが必要である。また、その科学技術は理工学、医学、農学等広範な分野にわたり、各分野ごとの個別研究の拡充を図ることはもとより、これら分野間の密接な交流が求められている。
 環境保全に係る科学技術研究の分野は、大気汚染、水質汚濁物質の排出抑制、廃棄物の合理的処理、騒音・振動の低減、汚染の計測等公害防止技術の開発に関する分野、環境汚染が人や動植物に与える影響をは握評価し、望ましい環境の質を明らかにする分野、並びに各種汚染物質の自然生態系の中での挙動及び自然の有する浄化機能等環境汚染メカニズムの解明に関する分野に大別することができる。更に、最近はこれらの研究結果を基に、環境を改善し、良好な状態に維持していくための効果的な管理システムや開発等に伴う環境影響を事前に評価し有効な対策を講ずるための評価システムの開発等、具体的な対策の支えとなる研究分野が重要となってきている。
 これらの研究は現在、国、地方自治体、民間において幅広く進められているが、国においては、汚染影響のは握、汚染メカニズムの解明等に関する基礎科学的な研究をはじめ、各種基準の設定等国の施策推進の基礎となる調査研究を実施するとともに、公害防止技術についても、開発、評価等の基礎的研究を重点的に行っている。また、大規模かつ総合的な技術開発等であって、行政的ニーズの特に強いもの又は抜本的な新技術開発で無公害化を促進することとなるもの等については、民間を含めた大型のプロジェクトを編成し、あるいは民間に対して助成措置を講じてその推進を図っている。
 国はこれらの研究を進めるに当たっては、関連する科学技術の分野が広範であるばかりでなく、研究分野が相互に密接に関連しあっているものが多いことから、関係する研究機関、研究者の緊密な連携を図っていく必要がある。このため、環境庁においては「環境庁設置法」に基づき、関係行政機関の公害の防止等に関する経費の見積り方針の調整を行うとともに、各省庁の試験研究機関の公害の防止等に関する経費及び各省庁の試験研究委託費を一括計上し、調査研究の総合的な推進を図るほか、見積り方針の調整及び一括経常により総合調整後の緊急事案の発生等に機動的に対処するため、環境保全総合調査研究促進調整費による調査研究を実施している。
 また、環境庁においては所管行政の推進上重要な課題である各種の規制基準の設定、各種汚染物質の計測技術等に関し必要な調査研究を地方公共団体、民間機関等の協力の下に進める一方、附属機関である国立公害研究所の整備充実に努め、同研究所は、大型実験施設を用いた汚染影響、汚染メカニズムの解明等に関し本格的な研究に着手した。
 なお、地方自治体の公害試験研究機関においては、それぞれの地域における環境行政の基盤となる試験研究を実施しており、環境庁は引き続きその活動の推進を図るための措置を講じている。

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