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環境白書の刊行にあたって

環境庁長官
石原 慎太郎

 環境庁が設置され、総合的に環境行政が行われるようになって6年になります。この間、各種施策の推進と各方面の努力によって、我が国の環境汚染の一部に改善が見られるようになったことは喜ばしいことでありますが、現在の環境が望ましい環境の質とはなお隔たりがあり、今後解決しなければならない多くの問題を残しています。
 今回の白書は、これまでの環境行政の成果であると同時に今後の行政の出発点である環境の現状について概観するとともに、すぐれて地域的な問題である環境問題を地域の状況と地方の環境行政との観点から分析し、更に公害防止費用の経済に与えた影響、防止技術の開発実用化等の諸問題について論じております。
 我が国経済は、石油危機を契機として、資源有限時代という新たな時代に立ち至っています。澄んだ大気も、清浄な水も、豊かな自然も、すべてかけがえのない天与の貴重な資源であり、現代において使い果たすことなく後の世代に継承すべきものであります。このためには、世界にも類を見ない高密度経済社会を形成する我が国においては、格段の努力が必要であり、環境破壊の未然防止を第一義として、長期的総合的視野に立って計画的に環境行政を進めていかなければなりません。この白書が、国民各位の環境問題に対する認識と国の施策に関する理解を深め、公害のない快適な生活環境を確保していくうえで貢献することができれば幸いであります。
昭和52年6月

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