前のページ 次のページ

第1節 

1 土地利用の適正化

(1) 我が国の国土面積は、おおむね37万km
2
であり、そのうち、可住地面積が全国土の約3割にすぎず、この狭あいな国土に1億1千万人の人間が居住し、巨大な経済社会活動が営まれ、しかも、これらの活動が大都市地域に偏在している。
 このような高密度経済社会の形成と国土利用の地域的偏在は、しばしば土地利用の混乱、乱開発による自然環境の破壊、緑地の減少、公害の発生等の問題を生じさせてきたため、環境保全等に配慮しつつ国土の適正な利用を確保することが緊急の課題となっている。
 このような状況にかんがみ、各種個別法に基づき、様々の土地利用規制が行われている(第9-1-1表)が、更に、これらの個別法のいわば基本法として総合的かつ計画的な国土利用を図ることによって、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、地域の自然的、社会的、経済的及び文化的条件に配慮して、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある発展を図ることをねらいとした「国土利用計画法」が49年12月に施行され、50年度においては国土利用計画(全国計画)について具体的な検討がなされた。
 まず、全国計画については、49年度における全国土利用目的別現況面積の調査等を基に種々の検討を加え、50年2月から6回にわたる国土利用計画審議会の調査審議を経て、国土利用計画(全国計画)素案が作成された。同素案は、51年1月の第7回の審議会において審議され、更に、各都道府県知事の意向を反映するための措置を講じて所要の修正を加え、次いで文書による知事の意見の聴取を行った後、51年5月の第8回の審議会において諮問答申がなされ、閣議決定される運びとなった。


(2) 国土利用計画(全国計画)案は、国土の利用に関する基本構想、国土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標及びその地域別の概要、この目標を達成するために必要な措置の概要をその内容としている。
 国土利用の基本方針は、「国土利用計画法」第2条に定める基本理念にそくし、総合的かつ計画的な国土の利用を行わなければならないとして、国土利用を計画するに当たっては、37万km
2
の限られた国土において今後の人口増加等に適切に対処する必要があるので利用区分ごとの需要の調整が重要な課題であること、また公害の防止や自然環境の保全等に配慮する必要があること、更に国土の有効利用を促進することと、土地利用の転換については計画的な調整を図りつつ慎重を期することを配慮事項としている。
 以上に基づき、農用地、森林、原野、水面・河川・水路、道路、住宅地、工業用地、その他の国土の利用区分ごとに基本方針を述べ昭和60年度の規模の目標(面積表示)を定めている(第9-1-2表)。
 また、地域別の概要については、三大都市圏、地方圏別に規模の目標のあらましを定めている。
 以上のような規模の目標を達成するために必要な措置として「国土利用計画法」等の適切な運用、地域整備施策の推進、土地利用に係る環境の保全及び安全の確保、土地利用の転換の適正化、土地の有効利用の促進、国土に関する調査の推進の6項目を挙げている。
 このうち環境保全対策にかかわるものとして主要なものを挙げると次のとおりである。
○ 国土の保全、公害の防止、自然環境の保全等を図るため、土地利用を規制する区域の設定などを行い、開発行為等の規制の措置を講ずる。
○ 良好な環境を確保するため、開発行為等について環境影響評価を実施することなどにより土地利用の適正化を図る。
○ 都市の自然(緑)を確保するため、市街地において、良好な生活環境を確保するために必要な緑地を積極的に保全する。
○ 環境の保全と適正な土地利用を確保するため、過密地域における工場の立地抑制及び移転を促進し、住工混在地区の解消、緩衝緑地の設置、廃棄物の処理用地の確保等を推進する。
○ 公害の防止及び自然環境の保全を図るため、道路等の交通施設について緑地帯の設置、住宅の移転などの周辺対策等を推進する。
○ 大規模な土地利用の転換については、その影響が広範であるため、周辺地域をも含めて事前に十分な調査を行い、国土の保全、環境の保全等を図りつつ適正な土地利用の確保を図る。


(3) また、「国土利用計画法」に基づく土地利用基本計画の策定は、49年度に引き続いて進められ、51年3月末現在、東京都及び山梨県を除く45道府県の土地利用基本計画が内閣総理大臣の承認を受けた。
 土地利用基本計画は、土地取引の規制、開発行為の規制、遊休土地に関する措置を実施するための基本となる計画であり、土地取引に関しては直接的に、開発行為については個別法を通じて間接的に、規制の基準としての役割を果たすもので、これにより公害の防止、自然環境の保全等国土の保全に配慮しつつ適正かつ合理的な土地利用が推進されることとなった。
 土地利用基本計画には、都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域、自然保全地域の5地域区分の図面表示と土地利用の調整等に関する事項が定められているが、その概要は以下のとおりとなっている。
ア 5地域区分の指定状況
 土地利用基本計画(内閣総理大臣未承認のものについては原案)の5地域区分の指定状況は、都市地域約912万ha(国土面積の24.5%)、農業地域約1,756万ha(47.1%)、森林地域約2,524万ha(67.8%)、自然公園地域約517万ha(13.9%)、自然保全地域約6万ha(0.2%)、5地域のいずれにも区分されないいわゆる白地地域は約30万ha(0.8%)となっており、5地域が相互に重複している地域があるため、5地域と白地地域を単純に合計した面積は約5,745万haで、国土面積の約1.5倍となっている。
イ 土地利用の調整等に関する事項
 各道府県とも土地利用の原則、5地域区分の重複する地域における土地利用に関する調整指導方針を記載している。また、これに加えて35道府県においては土地利用上配慮されるべき公的機関の開発保全整備計画を記載しているが、その計画数は260件となっている。
 なお、土地利用基本計画に記載された開発保全整備計画は、土地利用転換の内容、土地利用計画との関連、環境保全対策との関連等について検討が行われており、計画段階における土地利用調整、環境保全対策等に十分配意されたものとなっている。

前のページ 次のページ