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第4節 

1 鳥獣保護の現況

 近年、我が国においても野生鳥獣保護に対する関心が急速に高まってきた。
 これは各種の開発によって我々の周辺から鳥や獣が姿を消しつつあることが広く国民の関心の的となってきたことによるものと考えられる。
 このような気運は、国際的な潮流となっており、渡り鳥や絶滅のおそれのある動植物を各国が保護していくための各種の国際取決めの締結となって現われている。
 いうまでもなく野生鳥獣は、自然環境を構成する重要な要素の1つであり、自然環境をより豊かにする上で欠くことのできないものであると同時に、その減少は人間にとっても生活環境の悪化を示す1つの指標ともなるのであるので、次の考え方により昭和50年度においてもその保護措置の強化を図った。
(1) 野生鳥獣保護のための諸措置
 野生鳥獣の保護を図るための基本的な施策は、その捕獲を禁止又は制限し、併せて違法な捕獲を取り締まることである。
 同時に、野生鳥獣の生息環境を保全するとともに、野生鳥獣の生息に悪影響を及ぼす一定の行為は規制していくことも必要となる。
 鳥獣保護区の特別保護地区の制度はこの観点から設けられているものであり、この区域内において、水面の埋立て若しくは干拓、立木竹の伐採又は工作物の設置を行おうとするときは、環境庁長官又は都道府県知事の許可が必要とされている。
 次に、野生鳥獣の保護を図るためには、流通過程での規制を行うことが必要となる。このことについては、「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」による一般的な規制のほかに、絶滅のおそれのある鳥類については「特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律」により一層厳しい譲渡等の規制を行っているところである。
 更に、このような措置によっても、その種の存続が脅かされる特定の鳥獣については、人工増殖、移殖等の特別の保護策を講じる必要がある。
 このため、49年から設けている特定鳥獣増殖対策検討会において、トキ、タンチョウ、イリオモテヤマネコ、ライチョウ等絶滅のおそれのある鳥獣について、人工増殖、移殖の必要性等について検討を行った。
(2) 鳥獣保護区の設定
 鳥獣保護区は、鳥獣の保護繁殖を図るため、環境庁長官又は都道府県知事が設定するものであって、その区域内では鳥獣の捕獲が禁止されているほか、保護繁殖施設の設置等が行われている。
 50年度には、国設、都道府県設併せて143か所、155千haの鳥獣保護区が設定された。
 国設鳥獣保護区としては富山県に本州山岳地帯における最大級の北アルプス鳥獣保護区等が設定されたほか、屋久島をはじめとする島しょにも鳥獣保護区が設定された。
 更に、鳥獣保護区内において鳥獣の保護繁殖上重要な区域については、特別保護地区として指定しているが、50年度には、国、都道府県併せて55か所、24千haが指定された。
 49年度末の鳥獣保護区等の設定状況は、第6-4-1表のとおりである。


(3) 狩猟の適正化
 野生鳥獣の保護の強化のためには、狩猟の適正化を図ることが必要である。このため、50年度においては、「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行規則」の一部を改正し、狩猟鳥獣の種類の削減、狩猟期間の短縮、捕獲数制限の強化等の狩猟の適正化の措置を講じた。
(4) 貴重動物の保護
 鳥獣保護区等に生息する貴重な動物、生息環境の保全と一体として保護を図る必要がある動物の保護増殖対策を総合的に実施するため、トキ、北限のサル、ライチョウについて給餌、保護設備の整備等の保護対策を講じた。
(5) 渡り鳥観測網の整備
 渡り鳥の生態をは握する上で標識調査を実施することは最も効果的であるとされており、我が国においても従来から小規模ながら行われてきたが、日米渡り鳥等保護条約の調印を契機として積極的な保護対策を展開すべく渡り鳥の観測ステーションの拡大整備を48年度から行い、現在までに、渡り鳥の渡来地、越冬地等重要な地点に、1級ステーション9か所、その他渡り鳥の通過地点に2級ステーション21か所をそれぞれ設けている。
 50年度においては、上記ステーションにおいて渡り鳥の生体を調査した。

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