1 農薬汚染の現況
戦後における農薬の生産の推移を見ると、毒性又は残留性の強い農薬は、その種類も生産量も著しく減少している。すなわち、BHC、DDT、ディルドリンに代表される有機塩素剤はその一例である。これらの農薬は、食品や環境中に長期間残留し、国民の健康や生活環境の保全に悪影響を及ぼすおそれがあるので、46年以降の使用禁止を含む厳重な使用規制を行っている。この結果46年頃まで散見された農薬残留基準を超えたBHC、DDT、ディルドリン等を含有する農作物等の流通は、最近報告されなくなった。また、BHC、ディルドリン等による農用地の汚染も、最近特に問題となったことはない。更に49年度の化学物質環境調査結果によると、DDT類、BHCについては水質には検出されておらず、農薬としての使用中止後の環境汚染の低減傾向がうかがわれる。しかし、一部の河川の底質、魚介類には微量ではあるが、これら物質が検出された例があり、また、瀬戸内海において47年から48年に捕獲した野鳥、特に海浜に生息する肉食性の鳥類からBHC、DDT、ディルドリンが高い特合で検出されており、環境中における有機塩素系農薬の残留がまだ完全には解消されていないことを示している。
有機塩素系以外の農薬についても、人体や環境に悪い影響を及ぼすおそれのないよう、農薬の適正な安全性評価が要求されている。