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第1節 

1 最近における水質汚濁の概況

 最近における我が国の水質汚濁の状況は、総体的に見ると明らかに改善の傾向が見られるが、望ましい水質環境に達していない水域も数多く残されている。昭和49年度全国公共用水域水質測定結果によると、カドミウム等の人の健康にとって有害な物質について、その環境基準値を超える検体数の調査総検体数に対する割合は、45年度1.4%であったものが年々減少し、49年度は0.20%と大幅に改善されている。なお、総水銀については、49年9月30日に環境基準が改定され、基準が強化されたが、総水銀に係る環境基準の評価方法に照らして環境基準を超えると認められる地点はなかった。また、アルキル水銀及び有機リンは、前年度に引き続き1検体も検出されなかった(第3-1-1表)。
 BOD、COD等の生活環境の保全に関連する項目については、環境基準値を超える検体数の調査総検体数に対する割合は、河川22.4%、湖沼35.1%、海域16.0%となっており、前年度に比し若干改善されている(第3-1-2表)。また、環境基準の類型当てはめが行われた水域(河川1,590、湖沼56、海域281)について、有機汚濁の指標であるBOD又はCODの環境基準の達成状況を見ると、河川では47.4%、湖沼では37.5%、海域では56.6%であった(参考資料10)。これは、これらの水域の中には環境基準の達成期間が到来していない水域も含まれていることもあるが、環境基準の達成が、いまだ十分ではないことを示しており、今後水質保全行政の一層の推進を図る必要がある。
 次に、主要公共用水域のうち97か所における平均水質(BOD又はCOD)の最近3か年の推移を見ると、水質が悪化する傾向にある箇所は24か所であり、水質が改善される傾向若しくは横ばい状態にある箇所が73か所となっている。
 また、41年頃から50年までの長期的推移から見ても、46年以前に水質汚濁のピークがあり、その後改善の傾向を示しているものが多く、全国的に見れば、最近の排水規制の強化等を反映し、水質汚濁の進行は明らかに鈍化し、一部の水域では改善されつつある。この改善の傾向は特に河川において顕著である(第3-1-1図第3-1-2図及び参考資料11)。
 なお、水質汚濁の態様については、BOD及びCODに代表される有機汚濁が大部分であるが、一時的な油等の流出による公共用水域の汚濁、一部の水域についてではあるが、ダムの築造に伴う長期濁水、火山地帯における河川又は湖沼の自然的要因による酸性化等の問題のほか、大規模発電所の温排水による環境への影響が問題となっている。

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