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環境白書の刊行にあたって

環境庁長官
小沢 辰男
 環境庁が発足してこの7月1日で5年になります。この間、各種施策の推進と各方面の努力によって、我が国の環境汚染の一部に改善が見られるようになったことは喜ばしいことでありますが、複雑化、多様化している環境問題には、なお解決すべき多くの問題が残されております。
 一方、我が国経済は、資源エネルギー問題を契機として低迷期に入り、昭和50年代を迎えて、成長率が低下するのは避けられないと予想されております。このような情勢の下で、国民の信託にこたえて、複雑化、多様化している環境問題の解決を図っていかねばなりません。
 今回の白書は、これまでの環境行政の成果であると同時に今後の行政の出発点である環境の現状について概観するとともに、不況が環境汚染にどのように影響したか等不況と環境問題の関係について分析し、更に環境行政が当面する主要な課題について論じております。
 環境はかけがえのないものとして、現代において使い果たすことなく後の世代に継承すべきものであります。このためには、世界にも類を見ない高密度経済社会を形成する我が国においては、格段の努力が必要であり、長期的総合的視野のもとに堅実な環境行政を進めていかねばなりません。この白書が、国民各位の環境問題に対する認識と国の施策に対する理解を深め、豊かな環境を生み出す契機となることを願う次第であります。
昭和51年6月

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