1 悪臭の現況

(1)　概要
　悪臭はきゅう覚という人の感覚に直接知覚されるものであるだけに、古くから多くの地域で社会問題となってきた。特に近年において悪臭公害が全国的に住民の生活環境を損なうものとして問題にされてきたのは、各種企業の大規模化に伴う汚染の広域化、都市の近郊、郊外へのスプロールに伴う住民の悪臭発生事業場への接近、更に住民の快適な生活環境保全への関心の高まり等を反映したものとみられる。
　地方公共団体が受理した悪臭に関する苦情は昭和48年度において、19,674件に達したが、47年度に比して見ると、若干減少している(第4-4-1表参照)。

(2)　悪臭の実態
　悪臭の原因となる物質については、業種、事業の規模、作業方式等により種々異なるが、代表的な悪臭原因物質とこれを排出する主要な発生源事業場は第4-4-2表のとおりである。また、悪臭の原因物質の排出の形態及びその排出により影響を受ける地域の範囲について見ると多種多様であり、例えば、クラフトパルプ製造工場から排出される硫化水素、メチルメルカプタン等の大部分は高煙突からのものであり、1〜2kmも離れた地点に最大地上濃度が出現するのに対し、畜産業等については、畜舎等からの悪臭の原因物質の漏出が主であり、隣接地帯が最も強いといわれている。