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環境自書の刊行にあたって

環境庁長官
小沢 辰男
 環境庁が発足して以来、4年近くになりますが、この間、各種施策の整備充実が進められ、環境行政は制度面の基本的整備を終えたところであります。こうした各種施策の推進と各方面の努力により、我が国の環境汚染に一部改善の傾向が見られるようになったことは喜ばしいことであります。しかしながら、我が国の環境汚染は全般的になお深刻で、問題は一層複雑かつ多様化しつつあります。
 一方、資源・エネルギー問題を契機に、我が国の経済社会の動向は従来の高度成長から安定成長へとその基調に変化が見られるようになってまいりました。このように変化する社会経済状態のなかで、複雑化しつつある環境問題の解決のため環境行政は今一つの試練の時期を迎えております。
 今回の白書は、「環境白書」として第4回目のものでありますが、以上のような観点に立って、今後の環境行政が進むべき方向を明らかにするため、これまでの環境問題の変遷とそれに対応した環境行政の進展を振り返りつつ、我が国の環境の現状を明らかにし、環境行政が当面する主要な課題について論じております。
 環境汚染を改善し、よりよい環境を作り出して行くことは、現代に生きる我々の課題であるとともに、後代に対する責務でもあります。この白書が、環境問題について国民各位の理解を深め、豊かな環境を生み出す契機となることを願う次第であります。
昭和50年6月

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