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第5節 

2 土壌汚染防止対策

ア 法的規制
 顕在化しつつあるこのような土壌汚染に対処するため「土壌の汚染」を公害対策基本法に定める典型公害とし、これに係る環境基準を設定することとするとともに、その実施法として「農用地の土壌汚染防止等に関する法律」(以下「土壌汚染防止法」という。)を制定したが、この法律の施行に伴い特定有害物質としてカドミウムおよびその化合物を指定するとともに、カドミウムおよびその化合物に係る農用地土壌汚染対策地域の指定要件を米に含まれるカドミウム量が1.0ppm以上であると認められる地域およびそのおそれが著しい地域とした。
 また、栃木県および群馬県の渡良瀬川流域ならびに秋田県の米代川流域等において古くから問題とされていた銅による土壌汚染の防止対策として、47年10月には、特定有害物質として、銅およびその化合物を追加するとともに、農作物等の生育阻害の防止の観点から、銅およびその化合物に係る農用地土壌汚染対策地域の指定要件を農用地(田に限る。)の土壌に含まれる銅が125ppm以上であると認められる地域とした。
イ 土壌汚染対策調査等
 土壌汚染防止法に基づく特定有害物質としてカドミウムおよびその化合物が指定されたことに伴って、46年度からカドミウムによる汚染地域および汚染のおそれのある地域について汚染の実態を把握するための土壌汚染防止対策細密調査を行ない、35都道府県の117地域約11,700ヘクタールについて約4,600点の土壌と米の分析を行なつた。(この調査は、国庫補助事業のほか、都道府県単独事業として行なつた。)
 この調査結果の概要は、第4-5-2表に示すとおりとなっており、土壌中のカドミウム濃度の最度値は千葉県野田谷津地域の109.2ppmであり、玄米中のカドミウム濃度の最高値は大阪府高槻地域の3.75ppmとなつている。
 また、食品衛生法に基づく食品規格(玄米中のカドミウムの量が1.0ppm未満)に適合しない米が生産されたのは28地域であつたが、その詳細は第4-5-3表に示すとおりであり、比較的汚染度の高い地域は、主として生野鉱山周辺地域等のような鉱山の周辺地域および東芝電気太子分工場周辺地域等の電気工場、メツキ工場等の周辺地域であつた。
 更に、カドミウムによる汚染のおそれのある地域については、引続き47年度においても37地域約7,000ヘクタールを調査しており、その結果についてはまとまり次第逐次公表されることとなつている。
 カドミウム以外の重金属類のうち、銅については、47年度以降銅による土壌汚染が認められる地域およびそのおそれのある地域について細密調査を実施しているところである。またひ素については、宮崎県土呂久地域におけるひ素による環境汚染が発端となつて、全国各地に散在する休廃止鉱山周辺地域が問題となり、このため47年度からこれらの休廃止鉱山周辺地域の環境汚染調査が実施されることとなり、これら環境汚染調査の一環としてひ素に係る土壌汚染の調査も実施されている。なお、この調査の結果、汚染のおそれのある地域については、さらに細密な調査が実施されることとなつている。
 このほか農用地の土壌のカドミウム、銅および亜鉛等による汚染の全般的状況を把握するための概況調査が実施された。
 この調査は原則として毎年同じ地点で調査されるものであり、昭和46年度の調査結果の概要は第4-5-4表のとおりである。
 更に汚染防止対策に資するため農用地の土壌が汚染されている地域またはそれらのおそれが著しいと認められる地域において、現地改善対策試験圃場を設置し、客土、土壌改良等の対策の効果について調査試験を実施した。
 また、鉱山等からの排水に含まれるカドミウム等特定有害物質による土壌汚染地域の被害防止対策の基準を検討するため、碓氷川水域等12域区に対策基準圃を設け調査を実施した。


ウ 土壌汚染対策事業
 46年度における土壌汚染防止対策細密調査の結果等によつてカドミウム1.0ppm以上を含む汚染米が検出された地域については、土壌汚染防止法に基づく農用地土壌汚染対策地域(以下「対策地域」という。)の指定の促進を図っており、現在までに第4-5-5表に示すとおり福島県の日曹金属(株)会津製錬所周辺地域、群馬県の碓氷川流域および渡良瀬川流域地域、兵庫県の生野鉱山周辺地域および東芝電気太子分工場周辺地域、長崎県の佐須川、椎根川流域地域、岐阜県畑佐地域ならびに秋田県の杉沢、柳沢地域の8地域が指定されており、指定総農用地面積は水田292ヘクタール、畑16ヘクタールとなつている。
 なお、カドミウム1.0ppm以上を含む米が生産された地域においては食品衛生法に基づく規格基準に適合しない米が生産されることを防止するために土地利用、非食用植物の作付け等の指導を図るとともに、水稲を栽培する場合についても水稲の品種の変更、水管理の改善、土壌の改良等の対策の効果について十分検討し、適切な措置をとるよう指導が行なわれている。これらの地域のうち対策地域に指定された地域で農用地土壌汚染対策計画(以下「対策計画」という。)が策定されたものは、第4-5-6表に示すとおり群馬県碓氷川流域および兵庫県生野鉱山周辺地域であるが、これらの地域においては排土、客土、水源転換等を内容とする公害防除特別土地改良事業を実施した。
 また、このほかの地域についても対策地域の指定の促進を図つている。

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