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第3節 

6 その他の対策

(1) 農業用水の水質汚濁対策
 最近の水質汚濁による農業被害は、被害地域が広域化していること、汚染源が都市汚水等の不特定多数の汚濁源によって汚濁の状態が複雑多様化していること、さらに汚濁水が直接農業用水路に流入する場合が多いこと等からますます増加の傾向にある。
 このような状況に対処するため、都道府県を助成して農業用水路における水質汚濁の現状把握と被害地区における被害防止対策の推進に資することを目的とする農業用水水質調査を都道府県に助成のうえ実施し、都市汚水等に起因すると考えられるかんがい水中の過剰窒素分等の除去方法を検討するための汚濁物質除去試験を新たに実施した。
 また、都市汚水等不特定多数の汚濁源からの汚水による被害地区の水質汚濁対策として、水源転換、用排水路の分離等を事業内容とする水質障害対策事業(47年度18地区)を引き続き実施した。
(2) 漁業公害対策
 漁場に対する公害対策としては、次のような被害防止対策と被害漁場の復旧対策を実施した。
ア 防止対策
 突発的に発生する公害による漁業被害の防止等のためには、関係漁業者による初動調査体制を整備することが重要である。このため関係漁業者に対する指導講習会を47年度においても全国20か所で開催し、これに必要な経費の助成、また試料採取に必要な器具、薬品および被害の防止または軽減のための油中和剤、オイルフェンス等の購入費ならびに油による被害の多発海域に設置する防油柵の設置事業に要する経費について都道府県を助成した。
 さらに、47年度においては、PCBによる汚染防止のための有効適切な対策に資するため、全国の主要漁場49水域について関係府県の試験研究機関に委託してPCBによる水産物の汚染点検調査を実施するとともに、PCBによる汚染が認められた14水域については、さらに精密調査を実施した。
イ 復旧対策
 公害により生産性の低下している漁場の生産力の回復を図るため、46年度から都道府県が行なうしゅんせつ、耕うん等の事業に要する経費について助成しており、47年度においても引き続き助成した。
(3) 鉱山における水質汚濁防止対策
 鉱山に関する鉱害防止監督は、47年度に創設された那覇鉱山保安監督事務所および全国8か所の鉱山保安監督局(部)の鉱務監督官等により、鉱害の未然防止を期して厳しく実施されている。
 鉱山から排出される坑廃水については、鉱山保安法に基づき水質汚濁防止法と同等またはそれ以上の厳しい排出基準を定めて、強力な規制、監督を行なっている。
 47年度においては、鉱山の監督検査日数の増加を図るとともに、監督検査用の精密検査機器等を整備拡充して、坑廃水の発生源に対する検査のみならず広域にわたる環境の精密調査等も実施し、これら検査、調査の結果に基づき坑廃水の処理方法の強化等について具体的な監督指導に努めた。
(4) その他の対策
ア 防衛施設周辺における対策
 防衛施設周辺においても、防衛施設の運用により水質の汚濁をきたし、農業、漁業等の経営に支障を生ずる場合もあるが、国は、早くから防衛施設周辺における民生安定の総合的対策として、昭和28年に「日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等の行為による特別損失の補償に関する法律」を制定し、さらに、41年には「防衛施設周辺の整備等に関する法律」を制定して、周辺住民の民生安定及び生活環境の保護について万全を期しており、水質の汚濁等に対してもこうした統合的施策の一環としてつぎのような施策を講じている。
(ア) 市町村への助成
 防衛施設の運用により生ずる水質の汚濁による住民の生活又は事業経営上の障害の緩和に資するため、市町村が生活環境施設又は事業経営の安定に寄与する施設の整備について必要な措置をとるときは、当該市町村に対し、その費用につき一部を予算の範囲内で補助することとしている。
(イ) 損失の補償
 自衛隊及び駐留軍の特定の行為に伴い、水質の汚濁を生ぜしめた結果、農業、林業、漁業等の経営者が経営上の損失を被ったときは、その損失を補償している。
イ 関税措置
 関税面においても、47年度より、糖みつから酒類用アルコールを製造する際の中間製品である粗留アルコールについて新たに関税割当制度を設け、一定量以内のものについては無税輸入を認め、その輸入促進を図ることとし、糖みつのアルコール発酵廃液による河川の水質汚濁防止に資することとした。

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