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環境白書の刊行に当たって

環境庁長官
三木 武夫
 環境庁の発足に伴い従来の「公害白書」から「環境白書」と名称を改めて以来、ここに第2回目の白書を発表いたします。
 近年におけるわが国の環境問題に対する認識の著しい高まりと各方面における汚染防除努力にもかかわらず、わが国の環境汚染の状況は、依然として進行している面があり、とくに、水銀、PCBなどの蓄積性の汚染や生活利便追求のもたらす財やサービスの使用、利用、廃棄に伴って生じる汚染は、複雑で根の深い問題となっております。
 今後わが国がこのような環境問題を解決していくには当たっては、これまでの経済成長や地域開発のあり方などの反省に立ち、環境保全を何よりも優先するという理念のもとに失われた環境の回復と新しい汚染の未然防止のためにあらゆる英知と努力を傾けていかなければなりません。そのために、今日もっとも強く要請されているのは、わが国の経済、社会のなかに国民的合意に基づく環境保全のための新しいルールを確立することであります。
 今回の白書におきましては、このような視点に立って、わが国の環境汚染の推移と現状、それがもたらされたメカニズムなどを客観的に分析し、今後のわが国がとるべき方向を示そうとしております。
 昨年の国連人間環境会議の開催に象徴されますように、環境問題は、いまや人類共通の最大の課題でありますが、特にわが国では、過密という酷しい条件ののもとで豊かで美しい環境を確保することは決して容易なことではありません。この白書の発表に当たり、私は、国民の皆様の環境問題に対する一層の御理解とその解決に対する御協力を期待し、この白書がそのために有益であることを念願する次第であります。
昭和48年5月

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