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第2節 

6 その他の防止対策

(1) 農業および漁業被害対策
ア 第64回臨時国会において成立した「水質汚濁防止法」の趣旨に基づき、被害農地に対する被害防止対策を検討するため、水質汚濁による農業被害の著しい地区について新たに農業用水の水質調査を補助事業として実施する。さらに「公害防止事業費事業者負担法」等により地方公共団体が、農業被害に係る公害防止のための対策を実施する際に必要な水質汚濁原因割合の検討資料とするため、水質汚濁原因の追跡調査について助成する。
 また、都市汚水等による農業用水の水質汚濁に対処するため、かんがい排水施設の新設、改修および客土等を内容とする水質障害対策事業を引き続き実施する。
イ 漁業上重要な水域について、漁場環境の保全に関する基礎調査を41水域について引き続き実施するとともに、全国的な水質監視体制の整備のため、都道府県が行なう水質監視事業に必要な18水域の自動観測施設の設置につき引き続き助成する。また、漁業上重要な水域の水産資源の保護培養を図るため保護水面5水域を追加指定し、合計50水域の保護水面について維持管理を図ることとしている。
 突発的に発生する公害による漁業被害の原因究明のための初動体制等について、関係漁業者に対する指導講習会の開催(全国20か所)、資料採取に必要な器具、薬品の装備(海面50か所、内水面100か所)ならびに被害の防止軽減のための油中和剤および散布器の装備(海面25か所)について助成することとしている。また、油による漁業被害の多発地域に防油さくを設置するための経費について関係都道府県に助成する(15か所)。一方、継続的な水質汚濁により生産性の低下している漁場について、しゅんせつ、作れい、客土、耕うんなどの事業の実施により生産力の回復を図るための経費を助成する(5水域)ほか、産業廃棄物等の海洋投棄が行なわれている水域についてその影響調査を実施する(6水域)。
(2) 畜産公害対策
 市街地およびその近郊の畜産経営を適地に集団移動させ、畜産経営の合理化と飼養規模の拡大の促進を図るとともに、あわせて環境汚染の防止に資するため、引き続き畜産団地造成事業(新規40か所、継続25か所)を実施する。
 また、新たに家畜死体等を衛生的に処理加工して資源の再活用を図るための施設(1か所)の設置につき助成する。
 さらに、第64回臨時国会において成立した水質汚濁防止法により、各種排出水について排水基準が定められることになったことにかんがみ、公共用水域における畜産経営からの排出水について調査を行なうとともに、ふん尿の合理的な処理の開発についても研究を進める。
 なお、適地での生産性の高い畜産経営の育成とあわせて環境汚染の防止に資するため、引き続き農林漁業金融公庫を通じて畜産経営の移転に要する資金(貸付枠18億円)を融資する。
(3) 農林関連企業公害対策
 農林関連企業対策の一環として、農林関連企業に係る公害の防止が図られるよう、関係企業者に対し、公害防止措置の普及指導を行なうとともに、農林関連企業の産業廃棄物の処理状況についての実態調査を行なう。
 また、農林関係工場の排水の実態をは握するため、引き続き、みそ製造業等3業種について工場排水実態調査を行なう。
(4) 鉱山排水対策
 46年度においては、鉱害監督体制を大幅に拡充するとともに、休廃止鉱山の鉱害防止について、さらにいっそう努力することとしている。
 すなわち、鉱山における鉱害監督検査については、従来に引き続き鉱害発生の危険性を内包する度合いに応じ、とくに亜鉛、カドミウムを生産する鉱山、製錬所の鉱害防止対策および休廃止鉱山実態調査等を重点として検査内容の充実と巡回検査のひん度の増加を図ることとし、このために必要な機構の整備、監督検査機器の拡充を行なう。また、前年度に引き続き鉱山およびその周辺の水質汚濁防止に関する実態をは握し、中和処理施設の整備、沈でん池の増強、たい積場の管理強化等所要の措置について、より厳密な監督指導を行なっていくこととしている。
 とくに休廃止鉱山の鉱害防止については、45年度から全国的規模で微量重金属による鉱害防止に重点をおいた再点検を実施してきたが、46年度においては、調査対象鉱山の範囲を拡大するとともに、その検査の結果、問題がある鉱山について、旧鉱業権者に所要の鉱害防止対策を講じさせることができない場合であって、地方公共団体が実施する鉱害防止対策事業に対しては、46年度に補助金制度を創設し、事業の推進を図ることとしている。
(5) 製革業公害対策
 製革業の工場は、用排水を容易に確保放流しうる河川の流域に集団的に立地しているが、全般的に企業規模が零細であるなどにより企業力が弱いため、排水処理施設の設置が不十分であり、河川の汚濁が著しいので、46年度にピックルハイド(生皮を塩づけしないで、毛を抜き、裏の肉等を除いて酸処理をすませた皮)に応ずる体制を整備することとする。
 これは、わが国が、原皮の大半を輸入している米国およびアルゼンチンにおいて、従来の塩づけ原皮(生皮を毛のついたまま塩づけして出荷するもの)方式からピックルハイド化方式へ切替える動きが盛んになりつつあるので、このような原料革命に対処する体制を整備することにより、石灰づけ、裏打ち、脱灰等の前準備工程から生ずる公害を防止しようとするものである。
 すなわち、46年度においてピックルハイド化に対処する体制を整備するため、海外製革業調査団の派遣、原料問題等研究会(仮称)の開催、製革技術開発委託研究事業の実施等に必要な約2,945万円の予算を計上し、その推進を図ることとしている。

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