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第1節 環境庁の設置

 公害対策の推進にあたる行政体系の整備を図る見地から昭和45年7月30日内閣に公害対策本部が設けられ、第64回国会における関係法令の抜本的な整備や公害防止に関する財政、金融、税制面の対策の拡充整備等について調整と推進の任にあたってきている。この公害対策本部は、それなりの機能を発揮したとはいうものの、閣議決定に基づく臨時的性格の組織であるという制約は免れえないところであり、さらに欧米各国においても、環境汚染の防止、自然環境の保護等の行政を統一的に推進する強力な機構が逐次新設されつつあるという現状にかんがみ、この際、公害対策本部を発展的に解消して、新たに「環境庁」を設置する方針が決定されるに至った。
 この環境庁設置にあたっての基本方針としては、
(1) 環境庁においては、公害の防止に止まらず、広く自然環境の保全に関する問題をその行政の対象とすることとしている。
(2) また、これまで関係省庁に分散していた各種基準の設定、監視測定、取締り等の公害規制に関する権限をできるかぎり環境庁に集中して行政の一元化を図ることとしている。
 しかし、下水道、廃棄物処理施設その他の公害防止施設(公害防止事業団が実施するものを除く。)の整備等の公害防止事業の実施や、各省がその行政の一環として行なう調査、指導、助成等の業務は、関係各省の行政と密接に関連しているので、従来どおり関係各省の所管としているが、環境庁は、これらの業務についても総合調整権限を持ち、各省施策の総合的実施を推進していくこととしている。
(3) さらに、公害防止に関する科学的な調査、研究の重要性にかんがみ、国立公害研究所を設け、従来必ずしも十分でなかった公害の人の健康および生活環境に及ぼす影響の研究等を行なうこととしている。
 このような、方針の下に立案された「環境庁設置法案」を第65回国会に提出しているが、同法案の大要は、次のとおりである。
(1) 環境庁の所掌事務および権限
 環境の保全に関する基本的な政策の企画・立案および推進、関係行政機関の環境の保全に関する事務の総合調整、関係行政機関の公害の防止ならびに自然環境の保護および整備に関する経費の見積り方針の調整や試験研究費等の一括計上等その総合調整機能の強化を図っている。
 また、自然環境の保護および整備に関する事項としては、自然公園法の施行、国立公園の公園事業の執行、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の施行等の事務を行なうこととしている。
 さらに、公害の防止に関する事項としては、公害防止計画の基本方針の指示および計画の承認を行なうとともに、環境基準の設定に関する事務を行ない、さらに大気汚染防止法、水質汚濁防止法その他の公害の防止に関する諸法律の施行、公害防止事業団の監督の事務等を行なうこととしている。
(2) 環境庁の機構
 環境庁の長は、環境庁長官とし、国務大臣をもってあてることとしている。環境庁長官は、環境の保全を図るため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出および説明を求め、さらに重要事項について勧告を行なう権限を有するほか、とくに内閣総理大臣に対し内閣法第6条に基づく措置(行政各部の指揮監督)がとられるよう意見具申ができることとしている。
 また、環境庁の内部部局として、長官官房のほか、企画調整局、自然保護局、大気保全局および水質保全局の4局を置くとともに、附属機関として、国立公害研究所および公害研修所ならびに中央公害対策審議会、自然公園審議会および中央鳥獣審議会の3審議会を置くこととしている。
(3) その他
 環境庁は、46年7月1日から発足するようにしているが、国立公害研究所および公害研修所については、それぞれ48年度および47年度末までの間において政令で定める日から発足させるものとしている。
 なお、環境庁の設置に伴い、同法の附則で内閣法および各省設置法の改正その他関係法律の整理について所要の措置が講じられている。

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