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第1節 概説

 悪臭は、人の感覚に直接に訴える公害であるだけに、古くから住民の衛生的で快適な生活環境をそこなうものとして問題にされてきた。昭和42年に制定された公害対策基本法においても、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる悪臭によって人の健康または生活環境に係る被害が生ずることも公害の1つとして定義し、悪臭問題に対しても適切な対策をとるべきことを定めている。しかしながら悪臭問題については、これまで、国の法律による一元的な規制は行なわれず、また、地方公共団体の条例においても悪臭を規制しているのは宮城県公害防止条例等を数えるだけであった。悪臭公害が、これまでいわば未規制のまま放置されてきたことの理由としては、?大気汚染、水質汚濁等による深刻な被害を防止するための対策に力が集中的に向けられ、悪臭については、ただ人に不快感を与えるだけとしか認識されていなかったため、その対策が遅れたこと ?悪臭を含め「におい」は、人に心理的感覚的な影響を及ぼすものとしてとらえられ、その人の健康に及ぼす影響が明確には握できないこと ?機器による「におい」の分析および量的測定に困難な点が多く、人の嗅覚に頼らざるをえない面が多いこと ?悪臭の発生源が多種多様で、その発生源に即して悪臭を効果的に防除する技術、装置の開発が遅れていたこと、などが考えられる。

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