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第1節 騒音の概況

 騒音は、公害に関する苦情のうちで最大多数を占め、市民生活の相隣関係的な事柄から臨海工業地帯の後背地域における事柄まで、大企業、零細企業を問わずひん発している。騒音公害解決の困難さは、発生源の多種雑多なことのみならず、高密度社会において高度経済成長を遂げつつあるわが国産業の地理的、社会的な本源的性格にも基因していると思われ、その解決は、公害問題のなかで最も困難なものである。こうした事情はひとりわが国のみの状況ではなく、世界の先進諸国いずれにおいても経験しているものである。騒音公害の根本的方策は、住居地域と工業地帯の分離および土地利用の純化を基礎とし交通輸送路の適正配置を配慮した都市計画であるが、高密度の既存工業地帯および交通輸送路を中心に発達してきた既存都市の形成過程を考えると、その解決は容易なことではない。今後建設される工業地帯、住宅地域、交通輸送路にあっては最初から環境保持を配慮するとともに、既存都市の再開発を積極的に推進する必要がある。

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