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第1節 大気汚染の概況

 大気の汚染は、産業等の固定発生源から排出されるいおう酸化物、ふんじん、窒素酸化物等および自動車から排出される一酸化炭素、ふんじん、窒素酸化物等により引き起こされる。
 大気汚染の傾向をみると、いおう酸化物については、従来汚染の著しかった都市で汚染の減少が現われはじめた。しかし一方、大都市周辺の都市、新産業都市等で汚染が増加している地点もある。ふんじんのうち、比較的粒子の大きい降下ばいじん量は、集じん施設の設置等のために大幅に低下し、過去数年来、減少ないし、横ばい状況で推移してきたが、最近、地域によっては漸増の徴候がみられる。粒子の小さい浮遊ふんじんは、とくに、都市の中心部において最近増加の傾向がみられる。
 一酸化炭素については、東京および大阪等の大都市の交通ひんぱんな交差点付近を中心に交通量の増加とともに汚染が増加している。
 窒素酸化物は、自動車、産業の両方から排出されるものであるが、最近この濃度の増加がみられる。これはそのもの自体でも有害であるが、光化学スモッグの原因物質でもあり、今後注目しなければならない。
 光化学スモッグは自動車等から大気中に放出される炭化水素と各種の燃焼に伴って生ずる窒素酸化物とが、太陽光線を受けて生ずるものであり、この際オキシダントを発生させ、汚染物質が相互に複雑に影響し合って目の刺激や植物の被害および視程の減少等を起こすものであり、原因物質の規制、発生の予報および発生時の措置等によりこれの対策を行なっていかねばならない。
 今後、鉛、カドミウムなどのふんじん中の重金属、弗化水素、塩化水素、窒素酸化物、炭化水素のほか、悪臭物質による汚染が問題となると考えられるので、あらかじめ法規制等の対策を行なうことにより事前に強力な予防が必要である。

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