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第3節 

4 騒音その他

 騒音・振動についての苦情陳情は、45年度においても地方公共団体に寄せられた住民の各種公害に関する苦情陳情の中で第1位を占めているばかりでなく、対前年の件数比においても最も大きな伸びを示しており、感覚的にも容易には握できる公害として住民の日常生活に大きな影響を及ぼしている状況がうかがえる。とくに、45年10月に実施された日本放送協会(NHK)による首都圏住民の公害に関する意識調査等によれば、従来、道路運送車両法に基づく保安基準をとおしての措置以外には格別の対策が講じられていなかった自動車騒音が、現在では工場騒音や建設騒音以上に住民の日常生活に対して大きな影響を及ぼしている事実が明らかにされ、騒音問題はさらに深刻化するおそれがある。
 地盤沈下については、東京都江東地区、城北地区においては、36〜38年をピークとして改善の傾向がみられるものの、なお、年間最大18cmをこえる沈下を示しているところもあり、東京に隣接する千葉県葛南地区においては年間沈下20cmをこえる地域さえあらわれている。大阪府においても、従来の沈下地域で改善がみられるものの、大東市、東大阪市ではなおかなりの沈下量を示し、また、岸和田市などの臨海部等においては新しい地盤沈下が発生している。
 悪臭についての地方公共団体に対する苦情陳情も、産業の発展と都市化の進展に伴い、逐年著しい増加の傾向を示しており、45年においては、各種公害に関するものの中で大気汚染に関するものをしのぎ、騒音、振動に関するものに次いで第2位を占めるに至った。とくに、クラフトパルプ工場や石油関連工場等において発生するメルカプタン類、硫化水素等を主要原因物質とする悪臭、養豚・養鶏場、へい獣処理場、魚腸骨処理場、し尿処理場等において発生するアミン類、アンモニア等を主要原因物質とする悪臭等が、周辺地域の住民に広範かつ大きな影響を及ぼしている。
 以上のほか、廃棄物の適正な処理の重要性が公害の根本的解決、快適な生活環境の保全という観点から、あらためて認識された。これは、近年の消費生活の向上、経済社会活動の高度化、高密度化に伴い、家庭や工場・事業場から排出される廃棄物がたんに量的に増大しているばかりでなく、質的にも複雑多様化し、その処理処分のゆきづまりが深刻化してきていることによる。とくに、最近のプラスチック廃棄物の増大は、その処理に際して高温を発生し、あるいは有害ガスを発生するなどのため、清掃事業の円滑な運営を妨げる大きな問題となっている。

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