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第1節 大気汚染の概況

 大気の汚染物質には、いおう酸化物、一酸化炭素、窒素酸化物等で代表される気体状物質、すす、ふんじんのような粒子状の固体状物質、その他硫酸ミストのような液体状物質がある。発生源としては、火力発電所、各種産業の炉、自動車、ごみ焼却場、暖房等に分類される。
 大気汚染の傾向を見ると、昭和44年度においての排出基準の強化や燃料の低いおう化対策の推進等により、従来、いおう酸化物の高濃度汚染を出現していた地点で、その改善の傾向が現われはじめたところもみられるが、一部の都市では、依然として汚染度が高く、緊急時の措置を必要とする状態が発生している地点もあり、汚染の増加の傾向がみられるところもある。
 ふんじんに係る汚染指標のうち、降下ばいじんについては集じん施設の設置、石炭から重油への燃料転換等のために、過去数年来減少ないし横ばいの状況で推移してきたが、最近の資料によると地域によっては漸増の徴候がみられる。浮遊ふんじんについても、一般的には同様の傾向がみられる。
 また、都市汚染の型としては、急増する自動車からの排出ガスのほか、産業活動や都市生活に伴う大気汚染が問題であるが、とくに自動車から大気中に放出される炭化水素と各種の燃焼に伴って生ずる窒素酸化物とが、太陽光線を受けて光化学的反応を起こしてオキシダントを生じ、これらが相互に複雑に影響し合って目の刺激や植物の被害および視程の減少等を起こす問題が注目されその実態のは握が急務とされてる。
 今後の問題としては、大気中の浮遊微粒子であるふんじんとその成分のほか、弗化水素、悪臭物質による汚染、炭化水素、窒素酸化物の影響の解明や対策等がある。とくに、浮遊ふんじんと窒素酸化物は、いおう酸化物と一酸化炭素に引き続いて調査研究と対策を重点的に講ずべき汚染物質である。

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