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昭和43年度公害白書の発表にあたつて

総理府総務長官
床次 徳二
 今日、大気の汚染や河川の汚濁をはじめとし、さまざまの公害が各地でひん発し、国民の健康や生活環境に深刻な影響を与えております。
 わが国経済社会の発展は目ざましいものがありますが、反面、産業構造の重化学工業化や都市の膨張等に伴つて、公害も広域化、複雑化の度合いを深め、公害問題は、いまや緊急な解決を迫られる政策課題となつております。
 このような事態を前にして、昭和42年8月には公害対策基本法の制定をみ、公害問題の根本的解決のための施策の理念と方向が明らかにされ、従来の個別応急的な対策とは異なつた総合的、計画的な公害対策の実施へのレールが敷かれました。
 その後、基本法の趣旨にのつとり、環境基準の設定や公害防止のための規制措置の拡充等各般にわたる施策が着々と実施に移されてきましたが、公害問題は、その発生原因や影響範囲、さらには防止のための対策等の点で複雑多岐にわたつており、実効ある公害対策を進めていくためには、公害問題の全貌についての正確な認識のうえに立つて問題の解決にあたつていくことが、きわめて重要であります。
 このたび、公害対策基本法に基づき、政府が第61回国会に提出した報告を昭和43年度公害白書として発表することといたしました。この白書は、わが国初の公害白書として関係各省庁において執筆し、総理府および厚生省が取りまとめにあたつたものであります。
 この白書が、公害問題に対する国民各位の認識と理解を深め、公害問題の解決のためいささかなりとも貢献しうるならば幸甚に存ずる次第であります。
昭和44年6月

厚生大臣
齊藤 昇

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