第2章
 循環型社会の形成に向けた国の取組

 第1節 循環型社会の形成に向けた法制度の施行について

1. 循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)

 循環型社会の形成に関する施策を総合的、計画的に推進するため、平成15年3月に循環型社会基本法第15条に基づいて循環型社会形成推進基本計画(循環型社会基本計画)を策定しました。その中で示した物質フロー指標に関する目標及び取組指標に関する目標の達成に向けて、各主体のパートナーシップの育成、各主体の活動への支援や情報の整備・提供、国自らも事業者・消費者として循環型社会の形成に向けた取組を率先的に実行する等、国全体の循環型社会の形成に関する取組を総合的に進めます。


 平成13年5月に環境大臣は「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」(基本方針)を決定し公表しています。その中では、まず、できる限り廃棄物の排出を抑制し、次に、廃棄物となったものについては不適正処理の防止その他の環境への負荷の低減に配慮しつつ、再使用再生利用熱回収の順にできる限り循環的な利用を行い、こうした排出抑制及び適正な循環的利用を徹底した上で、なお適正な循環的利用が行われないものについては、適正な処分を確保することを基本とすること等を定めています。これにより一般廃棄物及び産業廃棄物の最終処分量を平成22年度までに平成9年度のおおむね半分に削減することとしており、平成16年度においてもその達成に向けた取組を引き続き着実に推進していきます。
 平成16年度には、廃棄物処理施設整備費予算として、1,423億円(うち浄化槽分として264億円)を計上しており、PFI方式の活用などにより必要な廃棄物・リサイクル施設を効率的・効果的に整備することとしています。
 ごみの減量化・再生利用を推進するためのハード面の施策を推進します。具体的には、リサイクルプラザ(ごみの資源化と併せて不用品の補修及び再生品の展示等を行う施設)等の中間処理施設を整備するとともに、焼却施設等の整備の促進を図ります。
 また、ごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類を削減するために、平成14年12月から規制が強化されたことに伴って廃止された焼却炉の円滑な解体を推進するため、廃止された焼却炉の跡地を利用し新たな廃棄物処理施設を整備する場合に、当該廃焼却炉の解体費に対して補助を行います。
 またソフト面の施策として、市町村が実施する分別収集等ごみの減量化・再生利用に資する施策への支援を引き続き実施します。
 また、平成12年度から新たに創設された産業廃棄物処理施設のモデル的整備事業に対する補助制度により、廃棄物処理センターによる産業廃棄物処理施設の整備促進を図ります。
 最終処分場の確保が特に困難となっている大都市圏のうち、近畿圏においては、大阪湾広域臨海環境整備センターが行う広域処理場整備の促進及び埋立ての円滑な実施を図ります。また、首都圏においては、必要な広域処理場の確保に向けて、関係地方公共団体間に働きかけを行います。
 廃棄物処理法に基づき、市町村における適正な処理が困難となっている一般廃棄物として指定されている廃タイヤ等については、消費者が新製品を購入する際等において販売店が廃棄物を引き取り、可能な範囲で市町村以外のシステムで処理しています。このような、市町村の処理が適正に行われることを補完するために製造事業者等が行う協力を推進します。

3. 資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)

 平成13年4月に施行された「資源の有効な利用の促進に関する法律」(資源有効利用促進法)では、1)副産物の発生抑制を行うべき業種(特定省資源業種:鉄鋼業、紙・パルプ製造業等)、2)再生資源・再生部品を原材料として利用すべき業種(特定再利用業種:紙製造業、複写機製造業等)、3)材料の合理化を行うべき製品(指定省資源化製品:自動車、家電等)、4)材料・構造の工夫を行うべき製品(指定再利用促進製品:自動車、家電等)、5)分別回収を容易にするための表示を行うべき製品(指定表示製品:プラスチック製容器包装、紙製容器包装等)、6)自主回収・再資源化を行うべき製品(指定再資源化製品:パソコン、小形二次電池)、7)再生資源として利用できるよう工夫すべき副産物(指定副産物:石炭灰等)を指定し、それぞれに係る事業者に一定の義務付けを行い、事業者の自主的な取組の促進を図ります。


 平成15年度を初年度とする平成19年度までの第3期分別収集計画が策定されていますが、例えばプラスチック製容器包装については、平成19年度までに、全市町村数の8割を超える市町村が分別収集に取り組む計画となっており、その収集量は90万tを超える見込みです。
 計画に基づき、分別収集が着実に行われるように、分別収集に関する施設への補助など、引き続き市町村に対する支援に努めることとしています。
 また、事業者による再商品化義務の適切な履行の確保を図るほか、再商品化技術の開発、リサイクル製品の需要拡大、調査研究等の措置を講じます。

5. 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)

 「特定家庭用機器再商品化法」(家電リサイクル法)は、平成13年4月から施行され、平成14年度に全国の指定引取場所に搬入された廃家電製品は約1,015万台です。これらは全てリサイクルされ、新たに製品の原材料として利用されています。
 平成16年4月から、新たに対象品目として電気冷凍庫を追加するとともに、電気冷蔵庫及び電気冷凍庫の断熱材に含まれるフロン類の回収・破壊等の義務付けを制度化します。
 また、今後も、広報活動等を通じて家電リサイクルの理解をより一層深める取組を進めていきます。

6. 使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)

 平成17年1月1日からの自動車リサイクル法の本格施行に向けて、引き続き実務体制の検討・整備、関係事業者や自動車所有者に対する制度の普及・広報を行います。

7. 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)

 「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)が平成14年5月に完全施行されたことから、対象建設工事の分別解体等及び再資源化等が確実に実施されるよう、引き続きPR活動や工事現場のパトロールの充実等を図ります。また、建設廃棄物等のリサイクル推進のため、平成14年5月に策定された「建設リサイクル推進計画2002」や「建設リサイクルガイドライン」の周知・徹底を図るとともに、公共工事発注者をはじめとして建設工事関係者間の連携を図るため建設副産物対策連絡協議会等の場を活用するなど関係機関間の情報交換体制の強化、研究・技術開発の推進を図っていきます。
 また、リサイクルを推進するためには、リサイクル材の利用を促進することが不可欠です。そのため、公共事業においては、グリーン購入法の基本方針の内容も踏まえ、建設リサイクル法において再資源化等が義務付けられているコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊及び建設発生木材について、リサイクル材の積極的な利用の促進に努めていきます。特に、リサイクル用途が限定されていることや木材チップの需要が低迷していること等の理由から、再資源化率が約60%(平成14年度)と低迷している木材については、そのリサイクル用途を拡大し、その再資源化を強力に推進していく必要があるため、建築資材やコンクリート型枠材、マルチング材等について、木材を再生利用したリサイクル材の利用促進を図るよう、モデル工事等を通じた施工性、経済性等の適用性の検討を進めるとともに、木材チップの品質基準の策定等を行っていきます。
 また、建設廃棄物の最終処分量をゼロにすることを目標として、東京圏において建設工事における完全再資源化及び完全再利用のフィージビリティースタディーを実施し、ゼロ・エミッションのための具体化構想の策定に向けた検討を実施しています。
 さらに、住宅・建築物の分野において、廃棄物の発生が少ない木造建築物の設計・施工技術の開発を行うとともに、中小規模の建築物について廃棄物の発生を抑制するためのリサイクル資材の導入方策及び金物を減らした在来木造住宅の整備などリサイクルしやすい住宅整備方策の検討を行います。

8. 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)

 「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)は、平成13年5月から施行されており、同法に基づく食品関連事業者の再生利用等の実施を確保するとともに、これらの円滑な取組を確保するため、登録再生利用事業者制度、再生利用事業計画認定制度を活用した優良なリサイクル業者の育成等を推進します。
 また、生産・流通・消費の各段階を通じた食品循環資源の再生利用等の推進を図るため、同法の普及啓発を実施するとともに、食品循環資源の再生利用等に必要な施設の整備、リサイクル計画の作成及び実践等を実施します。

9. 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)

 国等の各機関では、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)に基づく基本方針に即して毎年度環境物品等の調達方針を作成・公表し、これに基づいて環境物品等の調達の推進を図ります。また、基本方針に定める国等が重点的に調達の推進を図る環境物品等については、その開発・普及の状況、科学的知見の充実等に応じて、適宜追加・見直しを行います。
 さらに、幅広い主体による環境物品等の購入を推進するため、購入者が製品やサービスに関連する適切な環境情報を入手できるよう、環境ラベリングその他の手法による情報提供を進めていきます。
 廃棄物を大幅に低減するため、廃棄物の発生の少ない製品やリサイクル可能な製品など、環境への負荷の少ない製品の積極的な購入を進めるため、グリーン購入に率先して取り組む企業、行政、消費者団体等各主体が連携した組織として発足したグリーン購入ネットワークの活動を積極的に支援します。また、全国各地において開催するグリーン購入フォーラムを通じて、グリーン購入の周知を図っていきます。


 国が策定したPCB廃棄物処理基本計画に即した、都道府県及び政令市によるPCB廃棄物処理計画の策定を推進します。また、日本環境安全事業株式会社(平成16年4月に環境事業団より移管)によるPCB廃棄物の拠点的な広域処理施設の整備については、北九州事業、豊田事業、東京事業、大阪事業及び北海道事業の進捗を図ることにより、全国のPCB廃棄物を法律に定める処理期限である平成28年7月までに、一掃できるよう努力することとしています。
 さらに、国は処理費用負担能力の小さい中小企業者が保管しているPCBを使用した高圧トランス・高圧コンデンサの処理に係る負担を軽減するために設置しているPCB廃棄物処理基金を造成するための予算措置を平成15年度に引き続いて行います。

11. 特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法)

 特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法)に基づき、平成9年の改正廃棄物処理法の施行前(平成10年6月17日前)に、廃棄物処理法に定める処理基準に違反して不適正に処分された産業廃棄物に起因する生活環境保全上の支障の除去等の計画的かつ着実な推進を都道府県等に対して呼び掛けるとともに、実施計画を策定して支障除去等事業を自ら行う都道府県等に対し、引き続き財政支援を行っていきます。

 第2節 循環型社会を形成する基盤整備

1. 財政措置等

 循環型社会基本法では、政府は、循環型社会の形成に関する施策を実施するために必要な財政上の措置等を講じることとしています。国の各府省の予算のうち、「循環型社会」の形成を推進するための経費は、平成16年度予算額で約4,245億1,600万円(下水道事業費補助等、内数で計上している経費は除く。)となっています(2-2-1表)。

主な循環型社会形成推進基本法関係予算

 金融措置として、日本政策投資銀行において、廃棄物の発生抑制再使用再生利用、再資源化の総合的な促進による廃棄物・リサイクル対策、ダイオキシン類の適切な排出削減、PCB廃棄物処理の促進等の公害防止対策に係る融資施策を引き続き講じます。
 さらに、平成15年6月に改正された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、広域的なリサイクル等を推進するため、広域処理に係る環境大臣の認定を受けた者が専ら廃棄物の処理の事業の用に供する施設に係る事業所税のうち資産割の課税標準の特例措置を新設します。

2. 循環型社会ビジネスの振興

 事業者が、再生資源の利用率目標の達成及び再生資源の新規用途の開発などの、個別品目の状況に応じた再生利用能力の向上を図ることを促進するとともに、再生資源やリサイクル製品は、初めて使用される資源やこれによる製品に比べて割高になりがちであることも踏まえつつ、国、地方公共団体、事業者、国民すべての主体がリサイクル製品を積極的に利用することなどにより、リサイクル製品の利用・市場の育成等を推進します。
 また、循環型社会ビジネスの振興のために廃棄物の収集・運搬・処分等の各種手続の合理化や法規制の徹底を図るとともに、中小企業を含めた事業者における環境報告書や環境会計の作成・公表、地域コミュニティビジネスの育成等を図ります。

3. 経済的手法の活用

 多くの人の日常的な活動によって引き起こされている廃棄物問題については、大規模な発生源や行為の規制を中心とする従来の規制的手法による対応では限界がある面もあります。このため、その対策に当たっては、規制的手法、経済的手法、自主的取組などの多様な政策手段を組み合わせ、適切な活用を図っていくことが必要です。
 このため、引き続き、ごみ(一般廃棄物)処理手数料の徴収等の状況、デポジット制度(預託払戻制度)等の経済的負担措置等の導入実態や課題についての検討を実施します

4. 教育及び学習の振興、広報活動の充実、民間活動の支援及び人材の育成

 平成16年10月に、「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」が完全施行されます。これに向けて、政府は基本方針を策定するとともに、環境省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省が連携して民間による人材認定等事業の登録制度を構築し、円滑な運営を図ります。
 環境省では、この法律に基づき、事業者等団体向けの環境教育プログラムを新たに整備し、小中学生の環境活動を支援する「こどもエコクラブ事業」等を引き続き実施します。
 文部科学省では、新たに学校における環境教育推進のための教材開発に取り組むとともに、引き続き全国環境学習フェアや環境教育担当教員講習会の開催、環境教育実践モデル地域、環境のための地球観測プログラム(GLOBE)モデル校の指定などを行います。
 また、環境省と文部科学省の連携・協力の下、環境教育リーダー研究基礎講座の実施や情報提供体制の整備などを引き続き行います。
 また、この法律の規定を受けて環境省では、情報提供等を行う拠点として、地方環境対策調査官事務所ごとに地方環境パートナーシッププラザの地方版を整備していく他、環境保全についての助言等を行う環境カウンセラーの活用推進を図ります。さらに、独立行政法人環境再生保全機構(平成16年4月に環境事業団よりに移管)に設けられた「地球環境基金」では、引き続き国内外の民間団体が行う環境保全活動に対する助成を行います。特に循環型社会形成推進のための活動には引き続き積極的な支援を行います。
 さらに、NGO・NPO等の民間団体、事業者及び地方公共団体等の各主体が連携して行うリデュース(排出抑制)、リユース(再使用)を中心とする循環型社会に向けた取組であって、先駆的・独創的かつ他の地域に適用可能な一般性を有する事業について、アイディアを公募して、実証事業として実施します。

5. 調査の実施・科学技術の振興

 廃棄物に係る諸問題の解決とともに循環型社会の構築を推進するため、平成16年度においても、総合科学技術会議の「ゴミゼロ型・資源循環型技術研究イニシャティブ」に基づき、競争的資金を活用し広く課題を募集し、研究事業及び技術開発事業を実施します。
 また、「廃棄物処理に伴う有害化学物質対策研究」、「廃棄物適正処理研究」、「循環型社会構築技術研究」の分野において社会的必要性が高く独創的な研究を、技術開発については、「廃棄物適正処理技術」、「廃棄物リサイクル技術」、「循環型設計・生産技術」の分野において、実用性、経済性が見込まれる次世代を担う廃棄物処理等技術の開発を図ります。
 廃棄物処理等科学研究費においては、循環型社会の形成や廃棄物の安全かつ適正な処理に資するため、社会的な必要性が高く先駆的・独創的な科学研究の振興並びに実用的で汎用性、経済性に優れた次世代を担う技術開発の推進を図ります。
 科学研究の振興では、循環型社会形成の評価や費用負担の在り方に関する研究、廃棄物処理に伴う有害化学物質の排出削減や無害化処理に関する研究、不法投棄対策や原状回復に関する研究等を実施します。
 また、技術開発の推進では、ばいじん等の適正処理技術、最終処分場の再生や修復技術、生ごみ・廃家電・廃自動車・建設系廃棄物等のリサイクル技術、循環利用設計や建設・生産技術等の開発を実施します。
 地球環境保全等試験研究費のうち公害防止等試験研究費においては、前年度に引き続き「循環型社会形成に資する研究」を重点的強化を図る必要がある事項の一つに掲げ、「埋立廃棄物の品質並びに埋立構造改善による高規格最終処分システムに関する研究」など5課題の試験研究を実施します。
 科学技術振興調整費を活用して、「都市ゴミの高付加価値資源化による生活排水・廃棄物処理システムの構築」により、生ごみの再利用・リサイクルを目的に生ごみを原料として生分解性プラスチック(ポリ乳酸)を製造する技術システムの開発を行っているほか、「乳酸生成糸状菌による農産加工副産物利用技術の開発」、「エネルギー半減・環境負荷ミニマムを目指した高炉の革新的精錬反応に関する研究」、「材料の低環境負荷ライフサイクルデザイン実現のためのバリアフリープロセシング技術に関する研究」といった研究を実施しています。
 また、建設廃棄物、特に混合廃棄物を構成する各種資材を主対象として、建築物の解体工事等に伴う廃棄物の発生抑制から収集・集積、加工・処理、流通及び再生資材の活用までの各段階が連携し、効果的に資源循環を推進するための技術体系並びにその普及基盤の開発を行います。
 また、民間事業者の有する効率的な3Rリデュースリユースリサイクル)技術の実用化の促進を図るため、民間企業から公募により選定されたすぐれた循環システムの実用化に向けた技術開発に対して補助をしていきます。また、このほかにも資源循環型住宅技術開発の推進、建築廃材等リサイクル技術開発などの事業を推進していきます。
 さらに、異業種間の交流・協力等を進めつつリサイクル技術の開発・普及を促進し、リサイクル推進のための啓発や国民運動を進め、リサイクルの実施状況、効果等に係る情報の整備・提供を推進します。

6. 施設整備

 循環型社会を目指し、21世紀初頭を目途に、廃棄物のほとんど全てを、単に燃やして埋める処理から、極力リサイクルを推進し、焼却処理の際には熱エネルギーを回収するものへの転換を推進します。
 リサイクル関連施設については、容器包装廃棄物や廃家電製品の再商品化、特定建設資材廃棄物の再資源化、焼却灰の溶融固化、し尿・浄化槽汚泥・生ごみの資源化等、また、熱利用施設については余熱利用、廃棄物発電等の施設整備等を推進します。また、家畜排せつ物等について、地域における有効利用を促進し、効率的かつ環境保全上適切に循環するシステムを形成するための施設整備、さらに「民間事業者の能力の活用による特定施設の促進に関する臨時措置法」に基づく古紙の他用途リサイクルのための施設整備等を推進します。
 再資源化施設に関しては、建設廃棄物等の再資源化を促進するため、再資源化施設の稼働状況等に関する情報交換システムの運用を推し進めていくとともに、再資源化施設の立地について、その適正な立地誘導等が図られるよう必要な施策について検討を進めていきます。
 ゴミゼロ型の地域社会づくりに向けて、関係各省が連携して、ゼロ・エミッション構想推進のため「エコタウン事業」を実施しており、持続可能な循環ビジネスとして先導性の高いリサイクル関連施設整備事業等に対するハード面の支援及び環境まちづくり計画の策定、3Rの推進等に対するソフト面の支援を引き続き実施します。
 水産加工団地から排出される加工残さ等を有効利用し、排出物をゼロにするゼロ・エミッション型水産加工団地を整備するために必要な残滓処理施設等の整備を実施します。
 近畿圏において、事業費約100億円(うち国費約26億円)で広域処理場の整備を行います。
 最終処分場の確保が特に困難となっている大都市圏のうち、近畿圏においては、大阪湾広域臨海環境整備センターが行う広域処理場整備の促進及び埋立ての円滑な実施を図ります。また、首都圏をはじめその他の地域においては、広域処理場の確保が必要となれば、関係地方公共団体間に働きかけを行います。
 また、港湾における廃棄物埋立護岸について、本事業約475億円(うち国費約123億円)で全国29港及び大阪湾において整備するとともに、廃棄物海面処分場の延命化対策を積極的に実施するとともに、ひっ迫する産業廃棄物処理問題に的確に対応するため、産業廃棄物の港湾空間での受入れを推進します。
 さらに、首都圏の建設発生土の有効利用を図るため、スーパーフェニックス事業を石巻港、広島港等において実施します。

7. 環境の保全の支障の防止、除去等

 産業廃棄物の不法投棄の防止と支障の除去等を図るため、引き続き、全国9ブロックの地方環境対策調査官事務所の立入検査等の体制を強化するとともに、都道府県等の監視の強化に対する補助を行います。さらに、硫酸ピッチの不適正処分の防止については、廃棄物処理法を改正し、不適正保管に対する規制を強化するとともに、引き続き関係機関との連携等を図ります。
 また、産業界の自主的な拠出による基金で都道府県が行う不法投棄の原状回復費用を支援する「産業廃棄物適正処理推進センター制度」の活用のため、国もその基金の造成に補助を行っていきます。適正処理推進センター制度の対象とならない平成10年6月以前の不法投棄についても、産廃特措法に基づき、都道府県等が自ら行う支障の除去等に要する経費について財政支援を行っていきます。
 さらに、携帯情報端末を活用した不法投棄情報を伝達するシステムにより、不法投棄への早期対応・情報収集を図るほか、現場調査や関係法令等に精通した専門家チームを派遣し、都道府県等の不法投棄対策を支援します。また、循環型社会の形成を根幹から阻害するおそれのある不法投棄等の不法行為の取締りを引き続き強化するとともに、その取締体制の整備等を行います。

8. その他の政府の取組

 木材の循環利用を促進するためには、建設廃棄木材等の未利用木質資源の再利用・再資源化が必要であり、これらの未利用木質資源の有効活用を図るため、木質複合材料等の開発を行います。また、接着剤により接着された木質系材料は木質部と接着剤の分離が困難であることから、廃棄段階において簡易に分離・剥離する接着・分離技術を開発することにより再使用再生利用・再資源化を促進します。
 家畜排せつ物等有機性資源のたい肥化・飼料化や再生可能エネルギーとしての利活用などによる循環的利用の促進、緑肥の導入などによる効率的な土作り等を推進します。
 農業集落排水事業においては、発生する汚泥の有機肥料等へのリサイクルを引き続き推進します。
 木質資源循環利用技術開発事業においては、木質資源の有効活用に配慮し、木材成分を活用して、リサイクルが可能であり、石油化学製品を代替する木質新素材等の開発を実施します。
 品目別及び業種別廃棄物処理・リサイクルガイドラインのフォローアップ、対象の改定についての検討のほか、「産業廃棄物排出事業者適正処理ガイドライン」、鉱工業等に係る産業廃棄物の減量化・リサイクルに関する数値目標、「使用済み自動車リサイクルイニシアティブ」、「古紙リサイクル促進のための行動計画」などに係る取組の実施、関係者への周知徹底、フォローアップなどを引き続き推進します。
 下水道事業において発生する汚泥(発生汚泥等)は、産業廃棄物の総発生量の約19%を占め、下水道の普及に伴いその発生量は年々増加している一方、下水汚泥を受け入れている最終処分場は、その半数が数年以内には受入れができなくなると見込まれており、今後さらなる汚泥の減量化、再生利用が必要となっています。このような状況を踏まえ、下水汚泥処理施設や資源化施設整備の支援、下水汚泥処理総合計画の策定の推進、技術開発の促進、下水汚泥再生利用の普及啓発などに取り組んでいきます。
 また、自動車のリサイクルの促進、不法投棄又は野積みされている使用済自動車の適正な処理等について、関係自治体等と協力しつつ、その推進に向けて必要な検討を実施していきます。
 使用済みFRP(繊維強化プラスチック)船の処理については、埋設、焼却処分しているのが現状であり、埋設処分場確保の限界や、焼却によるダイオキシン発生問題等を勘案すると、早期にリサイクルシステムを構築する必要があります。
 このため、「FRP廃船高度リサイクルシステム構築プロジェクト」のもとで、経済的なリサイクルシステムの事業化に向けた検討を継続実施し、この分野におけるリサイクル基盤の整備を図ります。
 また、将来的な使用済みFRP船発生量を抑制するため、劣化・損傷箇所のみを取り替え可能とするリユース技術を用いたFRP船(通称「エコ・ボート」)の普及に取り組んでいきます。
 日本工業標準調査会(JISC)は環境配慮製品の普及のため、平成14年4月に策定した「環境JISの策定促進のアクションプログラム」に基づく環境JIS策定を推進するとともに、同プログラムに示されている「環境JIS策定中期計画」の毎年度の見直しを実施します。
 また、平成15年3月に策定した分野別環境配慮規格整備方針に基づき、規格(JIS)への環境側面の導入を推進します。
 平成14年4月の首都圏ゴミゼロ型都市推進協議会及び平成15年3月の京阪神圏ゴミゼロ型都市推進協議会の取りまとめを踏まえ、それらの進捗状況について点検を行い、新たな課題について検討を行うなど、フォローアップを行います。
 地球温暖化の防止、循環型社会の形成、競争力のある新たな戦略的産業の育成、農林漁業、農山漁村の活性化の観点から、バイオマスをエネルギーや製品として総合的に最大限利活用し、持続的に発展可能な社会「バイオマス・ニッポン」を早期に実現するため、平成14年12月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」に基づき、この戦略に位置づけられた各種の施策を強力に推進します。
 具体的には、全般的事項に関する戦略として、バイオマス関連の情報拠点の創設やシンポジウム等の開催を通じた国民的理解の醸成を図るほか、バイオマスの効率的な利活用が可能となる社会システム設計に関する研究開発、地域における取組支援等を行うとともに、関係府省の連携のためのバイオマス・ニッポン総合戦略推進会議の開催、環境NPOの活動支援、モデル地域等における総合的なバイオマス利活用対策等を実施します。
 海上輸送による効率的な静脈物流ネットワーク構築し、循環資源の全国規模での広域的な流動を促進するとともに、臨海部においてリサイクル産業の拠点化を進め、総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)の形成を推進します。また、国内の静脈物流システムとも連携を図りながら、循環資源の輸出ターミナルの拠点化・大型化、品質管理の強化等による効率的な国際静脈物流システムの構築に向けた取組を推進していきます。
 さらに、汚染土壌の処理需要の増加が見込まれていることから、汚染土壌の積み出しや処理を行う拠点の形成及びこの拠点を環境負荷の小さい海上輸送で結ぶネットワークの形成を図ることにより、土壌汚染対策を推進するための検討を行います。
 地方公共団体は、循環型社会の形成に関する様々な施策を策定・実施する主体です。その施策は当該区域の自然的社会的条件を踏まえて実施されるものであることから、国は、地方公共団体が実施する施策の適切さを確保するために、法制定等により地方公共団体の役割やその実施すべき施策を明確化すること、通知等により法解釈を具体的に明らかにすること、地方公共団体が施策を実施する際によって立つべき基準を設定すること、地方公共団体が施策を実施する際の参考となる指針を設定すること等、地方公共団体の実施する施策を支援する措置を講じていきます。
 また、地方公共団体が循環型社会の形成に関する施策を講ずるために必要な費用について、国庫補助金、地方公共団体への融資等、必要な地方財政措置を講じることとしています。

 第3節 循環型社会の形成と地球環境問題

1. 廃棄物と温暖化対策

 廃棄物の焼却や埋立てに伴う温室効果ガスの発生については、地球温暖化対策推進大綱の目標を踏まえ、その発生量の抑制を図ります。
 具体的には、廃棄物等の発生抑制再使用再生利用の推進によって廃棄物焼却量の抑制を図るとともに、発電、メタン等の回収・利用を極めて高い効率で行う施設へ補助するなど、燃やさざるを得ない廃棄物の排熱を有効に活用する廃棄物発電やバイオマスエネルギーの活用を推進することにより、化石系資源の使用量の抑制を図っていきます。
 平成15年度から実施している、廃棄物処理施設における温暖化対策事業については、16年度以降も引き続き、民間事業者が行う温暖化対策に資する高効率の廃棄物発電やバイオマス発電施設の整備を促進させるため、当該設備の整備に必要な追加費用に対して支援を行っていきます。

2. 国際的な取組

 有害廃棄物等の輸出入等の規制を適切に実施するため、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(バーゼル条約)の国内対応法である「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(バーゼル法)の的確かつ円滑な施行を推進します。また、廃棄物処理法の適切な施行及び運用により、廃棄物の輸出入の厳格な管理を行っていきます。
 さらに、東アジア地域の不法輸出入に係る情報交換を円滑に行う枠組の構築を目的として、廃棄物不法輸出入防止国際ネットワーク事業を平成15年度から3か年の予定で実施しています。
 開発途上国の自主的な取組を強化するため、開発途上国の要請に応じて、政府開発援助(ODA)による協力を行っていきます。
 熱帯諸国で放棄されている工場廃材等の木質バイオマスの有効利用を図るため、日本の技術の現地適用化調査、事業化可能性調査を行うとともに、調査成果の普及をはかります。また、チリ共和国における銅製錬所の環境問題を解決するため、銅製錬所から発生する煙灰の無害化・金属回収技術の研究協力を行います。
 循環型社会基本法では、国は、循環型社会の形成に関する国際的な相互協力を推進するために必要な措置を講ずるよう努めるものとしており、この趣旨を踏まえて、施策を更に推進していきます。