第3章
 循環型社会の形成に向けた各主体の取組

 第1節 国民、民間団体等の取組事例

 現在、様々な取組が進められていますが、ここでは、NGO等民間団体レベルにおける取組の例を見てみましょう。
 民間団体の元気なごみ仲間の会は、平成13年度から「市民が創る環境のまち『元気大賞』」を創設し、全国各地域で先進な取組を行っているNGO等民間活動団体を表彰しています。
 平成15年度に表彰された先進的な取組の例は以下のとおりです。
 1)商店街事務所に生ごみ処理機を設置し、処理した生ごみを東京農業大学の肥料化装置で有機肥料に変え、「桜新町みどりくん」として区民へ還元する取組などをしている「特定非営利活動法人えこひろば」
 2)サッカーのJ2リーグチーム「ベガルタ仙台」の仙台スタジアムでの主催試合において、スタジアムから出るごみの内容・量の調査、分別・回収方法の改善、リユースカップの導入などによりごみの減量を図る「(財)みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)」
 3)区内の小・中学校64校で学校給食残飯等により作られたコンポストを集め、月に1回群馬県の甘楽町有機農業研究会へ運ぶとともに、甘楽町でできた有機野菜を区内の小・中学校や病院等の給食に使って食材利用の促進等を図る「特定非営利活動法人北区リサイクラー活動機構」
 4)毎月、世界65か所以上の専門家等に日本の環境情報に関する英文ニュースレターをインターネットで配信するとともに、海外からのメッセージを受け取り、そのメッセージを国内等へ還元する活動を行っている「ジャパン・フォー・サスティナビリティ(JFS)」

コラム 17  循環型社会の実現に向けて私たちに出来ること

 本文で紹介した「市民が創る環境のまち『元気大賞』」の第1回(平成13年度)の大賞は、「循環型社会の実現に向けて私たちに出来ること」プロジェクトでした。
 このプロジェクトを行っている団体は、平成11年に、群馬県の伊勢崎商工会議所青年部や同部OBなど、40代の経営者が中心となって発足した「特定非営利活動法人環境ネット21」です。同団体は「美しい地球をこどもたちに」をスローガンに、環境保全活動、子供の健全育成、まちづくり・まちおこしの3つの柱を理念とした活動を展開しています。
 環境保全活動としては、市とも連携しつつ、メンバーの会社の敷地内に生ごみ処理のプラントを作り、生ごみを回収・たい肥化し、このたい肥を使って有機農法で栽培した玉ねぎと人参を原材料にドレッシングを製造・販売しました。また、市内のブルワリーからビールの絞り粕を仕入れ、おから、生ごみと混合し、鶏の飼料とする活動を行っています。
 さらに県の自動車整備振興会と連携した廃棄自動車のフロン回収事業、子供のための遊び場を運営する子供と自然のふれあい事業、イベントでのごみのゼロエミッション化など様々な取組を行っており、表彰後2年経った現在も「元気」に活動しています。


 第2節 産業界の取組事例

 我が国の産業界は、日本経団連の呼びかけによって、リサイクルの推進や廃棄物の排出抑制に取り組んでいます。平成9年に環境自主行動計画を策定しており、その際に、併せて廃棄物対策に関する自主行動計画を作成しています。自主行動計画の廃棄物対策分野には41業種が参加し、それぞれの業界ごとにリサイクル率、最終処分量などの数値目標並びにその達成のための対策を明らかにしています。さらに、業界ごとの取組の推進状況を毎年定期的にフォローアップすることで、継続的かつより一層積極的に廃棄物対策に取り組んでいることが大きな特徴です。
 平成11年に入り、最終処分場のひっ迫やダイオキシン問題等を契機とする国民の廃棄物問題への意識が高まる中、産業界としても循環型社会の推進に向けた取組を一層強化することとし、同年12月には産業界として平成22年度における産業廃棄物最終処分量の目標量を1,500万t(平成2年度比25%)に、また平成17年度の中間目標を2,100万t(平成2年度比35%)とする削減目標を公表しました。平成16年3月に、32業種が参加した平成14年度の産業廃棄物最終処分量削減目標の達成状況フォローアップ結果が発表されましたが、これによると、平成14年度の産業廃棄物最終処分量実績は1,190万tとなり、平成12年度実績の約40%減となりました。また、この結果、平成2年度実績(平成2年度、基準年)実績の6,098万tと比較して約80%減少と、今回初めて平成22年度目標を達成したことが明らかになり、産業界の産業廃棄物最終処分量削減に向けた自主的取組の成果が着実に達成されていることが確認されました(3-2-1表3-2-1図)。
産業界全体(32業種)からの産業廃棄物最終処分量

日本経団連環境自主行動計画〔廃棄物対策編〕-2003年度フォローアップ調査結果-         〈個別業種版〉【要約版】 

(1)鉄鋼業
 鉄鋼業では、日本経団連の環境自主行動計画の追加的取組として、「高炉等への廃プラスチックの活用」を織り込んでいます。
 鉄鋼連盟の取組は、これまで利用してきた産業廃棄物系の廃プラスチックに加えて、容器包装リサイクル法の平成12年度の完全施行に伴い、一般廃棄物系廃プラスチック(容器包装廃プラスチック)についても高炉等での利用を進めています。また、収集側である市町村、使用側である鉄鋼企業、輸送に詳しい鉄道会社や、国を始めとする制度運営関係者等の参画のもと、鉄鋼製造プロセスによる広域的・全国的な廃プラスチックのリサイクル体制の構築に向けて取り組んでいます。
 これまで、鉄鋼業界では、年間3~4万tの産業廃棄物系の廃プラスチックのみを受け入れてましたが、一般廃棄物系の廃プラスチックと合わせた量として平成15年度には42万tまでの受入れが可能になる見込みです。なお、平成14年度の集荷実績は、前年度から約25%増の24万tで処理能力の40万tを大幅に下回っています。鉄鋼業では、集荷システム等の条件整備を前提として、平成22年には廃プラスチックを100万t受け入れる目標を設定しています(3-2-2図)。
鉄鋼業の廃プラスチック利用実績及び処理能力

(2)セメント製造業
 セメント産業では、セメントの製造工程の特色を活かしつつ、鉄鋼業界(各種スラグ類)、電力業界(石炭灰、排脱石こう)、タイヤ業界(廃タイヤ)、鋳造業界(鋳物砂)、地方公共団体(下水汚泥、焼却灰)などから各種の廃棄物・副産物を受け入れており、平成14年度には、約2,724万tの廃棄物・副産物の受入れを実施しました(3-2-3図)。

セメント産業での産業廃棄物・副産物の活用状況

 さらに、平成13年4月から都市ごみの焼却灰をセメントの主原料とするエコセメント工場が本格生産を開始しました。これまでは焼却灰に含まれる塩素と重金属の問題がありセメントの原料にできませんでしたが、それらを除去する技術が開発された結果、実用化に至ったものです。セメント産業は、焼却灰のほかにも一般廃棄物として処理されることとなった肉骨粉の受入先としても重要な役割を果たしています。
 また、セメント業界では、平成13年7月に取りまとめられた「循環型社会の構築に向けたセメント産業の役割を検討する会」報告書の提言を受けて、廃棄物等の利用拡大のための技術開発の促進等の循環型社会構築に一層貢献するための方策に取り組むこととしており、平成14年度から、廃棄物の受入量の増大や種類の多様化の阻害要因となっている廃棄物中の重金属類、塩素等の回収・利用に係るシステム開発を実施しています。

(3)建設業
 建設業界では、産業廃棄物の排出量や最終処分量に占める建設廃棄物の割合の高さ、不法投棄に占める建設廃棄物の割合の高さから、建設業界としての取組を積極的に実施してきています。
 建設業界では、不法投棄に占める建設廃棄物の割合が高い原因の一つが廃棄物処理法の委託契約が履行されていないことにあると考えられること、また建設工事は、工事現場が一時的であったり、発生品目や発生量が工事現場ごとに異なるなど、一般の産業とは異なる特性を有していることから、こうした建設業の特徴に合った共通契約書やマニフェストを建設九団体副産物対策協議会が独自に作成し、利用しています。共通契約書に参加する団体は、不法投棄対策を狙いとした平成12年度の廃棄物処理法改正後はさらに増えて、現在では業界全体に及んでいます。こうした活動は、不適正処理の排除、適正処理の徹底、分別・リサイクルの推進等に大きく貢献するものと期待されます。

 また、請負産業である建設業の特徴から、建設業におけるリサイクル材の利用の推進のためには、発注者の協力が必要不可欠であり、業界のみの取組では限界があります。建設業界では、公共工事を発注している国土交通省と共同で取組を進めており、平成10年4月に策定した「建設業界における建設リサイクル行動計画」(平成15年2月改訂)に基づいて、分別された廃棄物の品目ごとの再資源化を種類、量ともに増やすとともに、民間工事におけるグリーン購入法の特定調達品目の調達を推進するなどの取組を進めています。
 こうした業界全体の取組もあって、建設廃棄物の再資源化等の割合は着実に向上しています。

(4)電気事業
 電気事業においては、環境問題への取組を経営の最重要課題として位置付け、平成8年11月に「電気事業における環境行動計画」を公表し、自主的かつ積極的な取組を推進していましたが、その成果が順調であることから、平成13年の第4回フォローアップで平成22年度の最終処分量の目標をそれまでの240万tから200万tへ、平成15年の第6回フォローアップで更に引き下げて150万tへと修正しました。
 また、平成13年9月に公表した「電気事業における廃棄物等リサイクル事例集」は、石炭灰をセメント原料や路盤材、土壌改良材等として再資源化する取組など電気事業から排出される主だった10種類の廃棄物について、実用化済みの技術から研究中の技術まで幅広く網羅しています。
 特に、電気事業で発生する廃棄物としては石炭灰が最も多く、その再資源化促進を重点課題と位置づけ、取組を進めています。
電気事業における石炭灰の再資源化量と最終処分量の推移

コラム 18  企業における環境報告書の公表と物質フロー目標の設定

 近年、環境問題に対する社会の関心が高まるにつれて、環境への取組を環境報告書として公表する企業が増加しつつあります。こうした流れを受け、循環型社会基本計画では、環境報告書の普及促進についての数値目標を掲げています。
 この目標の達成のため、平成16年3月に「環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律案」を閣議決定し、国会に提出しました。また環境省では、同月に環境報告書ガイドラインを改訂し、循環型社会基本計画の物質フロー指標である、資源生産性、循環利用率、最終処分量について環境報告書に盛り込むことを奨励しています。
 また、建材・住宅設備を製造するI社では、3つの物質フロー指標にCO2総排出量を加えた数値目標を発表しています。具体的には、国全体について政府が設定している目標年次よりも3年早い平成19年度末において、資源生産性を57万円/t、循環利用率を14%以上、最終処分量を2分の1以下、そして、海外を含めたCO2総排出量を平成2年比17%削減(地球温暖化対策推進大綱における政府目標は、温室効果ガスの6%削減)としています。同社では、既に全生産事業所で社外廃棄物ゼロを達成しており、今後は目標達成のために使用済商品の回収・再資源化を推進するとともに、営業などの部門における廃棄物の発生抑制等を進めることとしています。
 一方で、地方公共団体においても、物質フロー会計や数値目標を試算・策定する動きが見られており、各主体において循環型社会の構築に向けた取組が進展しています。


コラム 19  エコ・コンビナート

 鉄鋼業は、環境・エネルギー問題に対応できる技術(高温プロセス技術、還元・酸化反応技術、大量処理技術等)、広大な事業スペース、社外副産物の再資源化のノウハウ等、様々なポテンシャルを有しています。
 これらのポテンシャルを活かして環境問題を解決するため、現在、鉄鋼業界では「エコ・コンビナート構想」の検討を進めています。具体的には、自らが持つ高炉等の設備・敷地を中核にして、近接するセメント業や電気事業との連携を強化するもので、企業間の連携により資源循環のネットワーク化を図るとともに、クリーンエネルギー(水素等)の供給基地、CO2削減といった効果が期待されます。
 本構想を提唱した(社)日本鉄鋼協会によれば、国内の主たる製鉄所が「エコ・コンビナート」化を進めた場合、1年当たり2,300万tの廃棄物等(廃プラ、廃タイヤ、廃重金属、自動車シュレッダーダスト(ASR)、建設廃材等)の再生利用に加え、45億Nm3/年の水素供給、3,300万t/年のCO2排出量の削減などができると試算されています。

未来の産業間・社会連携システムイメージ


コラム 20  引っ越しごみゼロへの取組

 従来の引っ越しでは、段ボールやガムテープ、紙等の大量のごみが発生していました。N社は、段ボール箱やガムテープ等を一切使わず、独自に開発した反復利用可能なこん包資材を使用することで、引っ越しに伴って発生するごみをゼロに抑えるという、環境にやさしいごみゼロの引っ越しサービスを始めました。
 このサービスでは、例えば段ボールの代わりに、約50回反復利用が可能なプラスチックコンテナを使用、また食器類を1枚1枚紙で包まずに収納できる食器トランク・ボックスを使用しており、箱詰めから箱出し、収納までをN社のスタッフが行います。
 これにより使い捨てだった段ボールなどの資材コストが削減できる上、引っ越しに要する作業時間も短縮できるため、費用も従来の引っ越しと同程度に抑えられています。

標準的世帯の引越資材量(目安)