第2章
 循環型社会の形成に向けた国の取組

 第1節 循環型社会の形成に向けた法制度の施行状況

1. 循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)

 大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会の在り方や国民のライフスタイルを見直し、社会における物質循環を確保することにより、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷の低減が図られた「循環型社会」を形成するため、平成12年6月に「循環型社会形成推進基本法」(循環型社会基本法)が公布され、平成13年1月に施行されました。
 同法では、対象物を有価・無価を問わず「廃棄物等」として一体的にとらえ、製品等が廃棄物等となることの抑制を図るべきこと、発生した廃棄物等についてはその有用性に着目して「循環資源」としてとらえ直し、その適正な循環的利用(再使用再生利用熱回収)を図るべきこと、循環的な利用が行われないものは適正に処分することを規定し、これにより「天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会」である「循環型社会」を実現することとしています。
 循環型社会基本法では施策の基本理念として排出者責任と拡大生産者責任という2つの考え方を定めています。また、循環型社会基本法に基づき平成15年3月に循環型社会形成推進基本計画(循環型社会基本計画)を閣議決定・国会報告しました。

循環型社会の姿

(1)排出者責任
 廃棄物の処理に伴う環境への負荷の低減に関しては、その一義的な責任を排出者が負わなければなりません。排出者責任とは、廃棄物を排出する者が、その適正処理に関する責任を負うべきであるとの考え方であり、廃棄物・リサイクル対策の基本的な原則の一つです。具体的には、廃棄物を排出する際に分別すること、事業者がその廃棄物の処理を自ら行うこと等が挙げられます。
 廃棄物の処理に伴う環境への負荷の原因者はその廃棄物の排出者であることから、排出者が廃棄物の処理に伴う環境負荷低減の責任を負うという考え方は合理的であると考えられます。この考え方の根本は、いわゆる汚染者負担の原則にあります。
 この排出者責任の考え方については、今後とも、その徹底を図らなければなりません。また、国民も排出者としての責務を免れるものではなく、その役割を積極的に果たしていく必要があります。

(2)拡大生産者責任
 拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)とは、生産者が、その生産した製品が使用され、廃棄された後においても、当該製品の適切なリユース・リサイクルや処分に一定の責任(物理的又は財政的責任)を負うという考え方です。そうすることで、生産者に対して、廃棄されにくい、またはリユースやリサイクルがしやすい製品を開発・生産するようにインセンティブを与えようというものです。廃棄物等の量が多く、しかも、それらのリユースやリサイクルが難しいことが問題になっている今日、拡大生産者責任はそれらを克服するために重要な考え方の一つとなっています。

OECD「拡大生産者責任ガイダンス・マニュアル」における拡大生産者責任

(3)循環型社会形成推進基本計画(循環型社会基本計画)
 循環型社会基本法では、政府において、循環型社会の形成に関する基本的な計画として、循環型社会基本計画を定めることとされています。循環型社会基本法の目的は、循環型社会の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進することであり、循環型社会基本計画は、循環型社会基本法で定められた基本的な考え方と各個別施策の橋渡しとしての役割を担い、循環型社会の形成に関する施策の総合的、計画的な推進のための中心的な仕組みであるといえます。

循環型社会の形成の推進のための施策体系

 循環型社会基本法では、循環型社会基本計画は1)循環型社会の形成に関する施策についての基本的な方針、2)循環型社会の形成に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策、3)その他循環型社会の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項を内容とすることされています。
 これを踏まえ、本計画は大きく6章で構成されています。
 まず、1)循環型社会の形成に関する施策についての基本的な方針として、第1章で現状と課題を分析し、第2章で我が国が目指す循環型社会のイメージを示しています。また、本計画で最も特徴的なこととして、第3章で循環型社会に向けた具体的な数値目標を設定しています。
 次に、2)循環型社会の形成に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策として、第4章及び第5章で、この目標を達成するための国及び各主体の取組を挙げています。
 最後に、3)その他循環型社会の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項として、第6章で本計画の点検・見直しなどの留意事項を示し、さらに具体的な取組に関する工程表を示しています。

2. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)

 平成13年5月に環境大臣は「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」(基本方針)を決定し公表しています。その中では、まず、できる限り廃棄物の排出を抑制し、次に、廃棄物となったものについては不適正処理の防止その他の環境への負荷の低減に配慮しつつ、再使用再生利用熱回収の順にできる限り循環的な利用を行い、こうした排出抑制及び適正な循環的利用を徹底した上で、なお適正な循環的利用が行われないものについては、適正な処分を確保することを基本とすること等を定めています。これにより一般廃棄物及び産業廃棄物の最終処分量を平成22年度までに平成9年度のおおむね半分に削減することとしており、平成15年度においてもその達成に向けた取組を着実に推進しました。
 平成9年に改正された廃棄物処理法に基づき、一定の廃棄物の再生利用について、その内容が生活環境の保全上支障がない等の一定の基準に適合していることを環境大臣が認定し、認定を受けた者については業及び施設設置の許可を不要とする制度が確立されました。これまでに自動車用廃タイヤのセメントの原材料利用、シールド工法に伴う建設汚泥の高規格堤防の築造材としての利用、廃プラスチック類の高炉還元剤としての利用、廃プラスチック類のコークス及び炭化水素油としての利用及び廃肉骨粉のセメントの原材料利用がこの再生利用認定制度の対象となり、平成15年度には、廃タイヤの再生利用8件、建設汚泥の再生利用1件、シリコン含有汚泥の再生利用1件及び廃肉骨粉の再生利用1件を認定しました。
 平成15年度には、廃棄物処理施設整備のための補助金として、1,581億円(うち浄化槽分として219億円)の補助を行っており、ダイオキシン対策が講じられたごみ焼却施設整備促進、リサイクル対策の推進を引き続き講じています。
 具体的には、リサイクルプラザ(ごみの資源化と併せて不用品の補修及び再生品の展示等を行う施設)等の中間処理施設を整備するとともに、焼却施設等の整備の促進を図りました。
 また、一般廃棄物処理施設に係る民間資金活用型社会資本整備事業(PFI事業)に対して補助を行いました。さらに、都道府県において、ダイオキシン類対策、余熱の有効利用、公共工事のコスト縮減等の観点から策定された、ごみ処理の広域化計画に基づいた廃棄物処理施設の整備を推進しました。
 廃棄物の排出抑制・再使用・再生利用に努めた後になお排出される可燃性の一般廃棄物については、焼却処理を行うとともに、溶融固化(焼却灰のスラグ化)施設の整備を推進しました。
 またソフト面の施策として、市町村が実施する分別収集等ごみの減量化・再生利用に資する施策への支援を実施しました。
 平成12年6月の廃棄物処理法の改正において、廃棄物処理センター制度の一層の活用を図ることを目的に、廃棄物処理センターの指定要件の緩和を行い、さらに民間を含め優良な処理施設の整備を支援するため、「産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律」に基づく特定施設の認定を行っています。
 また、平成12年度から新たに創設された産業廃棄物処理施設のモデル的整備事業に対する補助制度を拡充し、公共が関与して行う産業廃棄物処理施設の一層の整備促進を図りました。
 最終処分場の確保が特に困難となっている大都市圏のうち、近畿圏においては、大阪湾広域臨海環境整備センターが行う広域処理場整備の促進及び埋立ての円滑な実施を図りました。
 平成4年に改正された廃棄物処理法が平成5年12月から施行され、国内処理の原則の下、廃棄物の輸出の場合の環境大臣の確認、廃棄物の輸入の場合の環境大臣の許可等、廃棄物の輸出入についても必要な規制が行われています。平成15年4月から平成16年3月末までに廃棄物処理法に基づき行われた輸出確認は43件、輸入許可は4件でした。(有害廃棄物の越境移動については第1章第4節6を参照)。
 また、平成15年6月の廃棄物処理法の改正により、廃棄物の疑いのある者に対する地方公共団体の調査権限の拡充や不法投棄の未遂罪の創設など不法投棄対策の更なる強化、廃棄物処理業の許可や廃棄物処理施設の設置許可の特例制度の創設などリサイクル促進のための規制の合理化の措置が講じられました。さらにこの改正では、廃棄物処理施設整備計画の策定に関する条文が追加され、これに伴い廃棄物処理施設整備緊急措置法は廃止されました。なお、改正された廃棄物処理法に基づく新たな計画は、政府における社会資本整備の在り方の見直しの議論を踏まえ、計画の内容を「事業の量」から「達成される成果」に変更して、平成15年10月に閣議決定しました。
 その後も、RDF施設などにおける事故の発生や硫酸ピッチ等の悪質な不法投棄が依然として全国的な問題となっていることから、平成16年3月には、これらの課題に対処するため、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案」を第159回国会に提出しました。同法案の概要は以下のとおりです。
1)国の役割の強化による不適正処理事案の解決
 ○産業廃棄物の不適正処理事案が深刻化した場合など、緊急時における環境大臣の都道府県知事に対する指示規定の創設
2)廃棄物処理施設をめぐる問題の解決
 ○廃棄物の最終処分場の跡地等における土地の形質変更の届出の義務付け
 ○廃棄物の処理施設において事故が発生した場合の応急措置及び届出の義務付け
 ○構造上は適正な廃棄物処理施設において、管理者不在の場合における、当該施設の設置許可に関する手続の一部省略
3)罰則の強化などによる不法投棄の撲滅
 ○硫酸ピッチのような特に危険な廃棄物の基準に適合しない処理の禁止
 ○不法投棄の罪を犯す目的で廃棄物の運搬をした者の処罰

3. 資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)

(1)施行状況
 平成13年4月に施行された資源有効利用促進法では、1)副産物の発生抑制を行うべき業種(特定省資源業種:鉄鋼業、紙・パルプ製造業等)、2)再生資源・再生部品を原材料として利用すべき業種(特定再利用業種:紙製造業、複写機製造業等)、3)材料の合理化を行うべき製品(指定省資源化製品:自動車、家電等)、4)材料・構造の工夫を行うべき製品(指定再利用促進製品:自動車、家電等)、5)分別回収を容易にするための表示を行うべき製品(指定表示製品:プラスチック製容器包装、紙製容器包装等)、6)自主回収・再資源化を行うべき製品(指定再資源化製品:パソコン、小形二次電池)、7)再生資源として利用できるよう工夫すべき副産物(指定副産物:石炭灰等)を指定し、それぞれに係る事業者に一定の義務付けを行い、事業者の自主的な取組の促進を図りました。

(2)指定再資源化製品(パーソナルコンピュータ及び小形二次電池)の整備状況
 現在、パーソナルコンピュータ(パソコン)及び小形二次電池を対象製品(指定再資源化製品)に指定し、製造等事業者による回収及び再資源化の取組を求めています。
 事業系パソコンについては、製造等事業者が自ら指定した「指定回収場所」において自主回収し、再資源化を行い、リサイクル費用は排出者が排出時に負担する仕組みです。
 事業系パソコンは、従来から産業廃棄物としてリサイクル等の処理がなされてきており、法に基づく自主回収等が更に進むことによってリサイクルの推進が図られることが期待されます。
 家庭系パソコンについては、廃棄時の費用負担が定着していた事業系パソコンとは事情が異なるため、平成13年7月以降、経済産業省と合同でリサイクルの在り方について検討を行い、平成15年10月から製造等事業者による自主回収及び再資源化が開始されました。
 本制度においては、新規に販売されるパソコンについては、販売時に製品価格に含めてリサイクル費用を徴収し、当該製品が廃棄される際には当該製造等事業者が無償で引き取ることとしています。
 小形二次電池については、製造等事業者が小形二次電池使用機器の製造等事業者の協力を得つつ、小形二次電池の使用事業者からの回収及び販売店の店頭等への回収箱の設置による回収を無償で行い、再資源化を行っています。
 従来から、小形二次電池は無償で回収されてきた経緯もあり、法に基づく自主回収等が更に進むことによってリサイクルの推進が図られることが期待されるところです。

コラム 10  パソコン1台を作るために必要なもの

 情報技術(IT)の進展に伴い、事業所はもちろん家庭でもパソコンの需要は著しく上昇していることから、我が国では資源有効利用促進法により、パソコンの回収・再資源化を製造等事業者に義務付けています。他方、EUは平成15年2月にWEEE(廃電気電子機器)指令を公布し、これに基づいて、加盟国は平成16年8月までに廃電気電子機器(パソコンを含む)の引取り・リサイクルをメーカーに義務付ける制度を策定し、平成17年8月までに引取りを開始することになっています。
 国際連合大学のプロジェクトは報告書「コンピューターと環境」の中で、デスクトップパソコン1台を製造するには、240kgの化石燃料(パソコン本体の約10倍の重量)、22kgの化学物質、1,500kgの水など全体で1.8tの原材料・エネルギーが必要という調査結果を示しています。
 このような結果を踏まえ、私たちは環境負荷の低い商品を購入したり、できる限り長く使用するように努めなければなりません。パソコンの性能は向上し続けていることから、アップグレード等の機能(サービス)の購入や、使用済パソコンの再販制度の活用などによって、パソコン本体のライフサイクルを延ばすことが求められます。また、メーカー等においては、製品が環境に及ぼす影響についての情報・科学データの開示や、本体の長寿命化のための技術・サービスの開発や普及が望まれます。
 なお、我が国の物質フロー会計では、水は総物質投入量には含まれません。また、国内で製品を製造する際に投入された化石燃料や化学物質は総物質投入量に含まれますが、海外から製品として輸入された場合は、製品だけが計上されます。



(1)施行状況
ア 分別収集の状況
 平成14年度における施行状況をみると、分別収集を実施した市町村数は前年度に比べ、全品目にわたり着実に増加しています。また、分別収集量、再商品化量についても生産量が減少しているガラスびん、スチール缶を除くすべての対象品目において増加しており、制度の浸透、定着が図られています。
 ペットボトルについては、分別収集量は前年度比で約1.2倍であり、回収率は45.6%(事業系回収量を含めると53.4%)と年々着実な伸びを見せています。平成11年には収集量に対する再商品化の能力が不足する事態が発生しましたが、現在では再商品化能力は大幅に向上しており、分別収集量の増加にも十分に対応できる状況となっています。
 また、ペットボトルをペットボトルの原料に戻す、いわゆる「ボトルtoボトル」の再商品化施設も昨年秋に操業が開始され、リサイクルの一層の進展が期待されます。
 平成12年4月から新たに対象品目に追加されたペットボトル以外のプラスチック製容器包装及び紙製容器包装については、制度施行4年目を迎えましたが、分別収集量は順調に伸びており、実施市町村数についてもプラスチック製容器包装の場合、平成15年度では50%を超える見込みです。しかしながら、他の品目と比べるとまだ低く、今後更に分別収集計画の実施市町村数の増加を図ることが課題となっています。
ペットボトルの廃棄量(生産量と分別収集量の差)の推移

イ 総務省の政策評価書
 総務省の実施する政策評価制度に基づく、容器包装リサイクルの促進に関する政策評価書が平成15年1月に取りまとめられ、その結果が閣議報告されました。評価としては、容器包装廃棄物の排出量及び再生資源としての利用量について、法の施行前後で比較した結果、その排出量及び排出率はいずれも減少又は低下した一方、その利用量及びリサイクル率はいずれも増加又は上昇していること、さらに、容器包装廃棄物とそれ以外の一般廃棄物について、同一期間における排出量の変化を比較すると、容器包装廃棄物の排出量に係る減量度合いが高いことから、法の施行に伴う関係行政機関による総合的な取組の推進が一定の効果をあげているとされました。
 なお、リターナブル容器の使用についての方策の検討、市町村におけるより踏み込んだ容器包装廃棄物の分別収集の実施に向けた取組、再商品化により得られた物の用途拡大の検討、市町村の容器包装廃棄物に係る分別収集費用の把握や容器包装廃棄物の排出量等のデータを体系的・継続的に把握することが望まれています。その後、7月には、参議院本会議において政策評価に関する決議が行われ、今後の取り組む姿勢が示されました。

指定法人による分別基準適合物の引取り実績(平成14年度)
特定事業者が指定法人に支払う再商品化委託費の推移

ウ 容器包装リサイクル法に係る調査事業等
 容器包装リサイクル法の施行に伴う効果を検証するため平成13年度からの3か年事業として、市町村の分別収集に伴う廃棄物処理コスト等を把握する実態調査を行ってきました。
 また、平成14年度からの3か年事業として、ライフ・サイクル・アセスメント(LCA)の手法を活用し、容器の種類毎の環境負荷等について調査研究を開始しています。
 初年度においては、新たなデータ収集とライフ・サイクル・インベントリ(LCI)のデータの整備が進展しましたが、異なる種類の容器のデータや各工程のデータ間で対象範囲等に差異があり、整合性に関して課題のあることを確認しました。
 さらに、リサイクル代替の考え方の導入と問題点を把握したこと、リサイクルを促進すると環境負荷が低減する傾向があることをデータで確認できたこと、各容器の環境負荷低減への課題と改善策の検討を実施し、その方向性を確認したことなどが成果として挙げられます。

エ その他
 容器包装が排出される際に分別を容易にし、市町村の分別収集を容易にすることを目的に表示の制度が資源有効利用促進法によって定められています。
 プラスチック製容器包装と紙製容器包装の表示は、平成13年4月から義務化され、平成15年4月からは罰則の適用が始まりました。既に浸透している飲料用のスチール缶、アルミ缶及び飲料用・しょうゆ用ペットボトルの表示と併せ、分別収集の促進が期待されます。

5. 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)

(1)施行状況
 家電リサイクル法は、平成13年4月に本格施行されました。廃家電4品目の引取台数等は第1章第1節3(4)のとおりです。
 不法投棄対策としては、関係者に対する必要な情報の提供、家電リサイクルプラントにおける見学受入れ、教育・広報活動を通じて国民の理解を増進するとともに、警察との連携による未然防止や取締りの強化等により、特定家庭用機器廃棄物の排出や収集、運搬時における不法投棄の防止に努めました。さらに、全国の警察においては、法施行前、廃家電の不法投棄が懸念されたことを受けて、積極的な取締りを行いました。
 平成15年4-9月期の家電4品目の引取等台数(指定引取場所に引き取られた台数に不法投棄台数を加えた台数)に対する不法投棄台数の割合は1.48%(前年度同期1.35%)でした。
 引取等台数に対する不法投棄台数の割合は、昨年度と同様1~2%の間で推移していますが、昨年度と比較すると増加しており、引き続き実態を注視していく必要があると考えています。
 製造業者等においては、リサイクルが容易な製品設計や材料の選択等の取組を開始しています。

(2)家電(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)再商品化施設の整備状況
 排出される家電4品目をすべて再商品化することが可能なリサイクルプラントが、現在、全国41か所で稼働しています(2-1-5図)。このリサイクルプラントにおいて、家庭用エアコン及び冷蔵庫に使用されている冷媒フロンを発散しないよう回収した上、鉄、アルミニウム、銅、ガラス、プリント配電盤の貴金属等を回収し、定められたリサイクル率を達成しています。

主な家電リサイクルプラントの整備状況

6. 使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)

(1)施行準備状況
 平成14年7月に公布された自動車リサイクル法は、平成17年1月からの円滑な施行に向けて、関係団体とともに実務体制の検討・整備を進めています。具体的には、平成15年6月にリサイクル料金の安全確実な管理運用等の機能を果たす指定法人を指定しました。また、8月には、中央環境審議会と産業構造審議会の合同審議会の審議内容を踏まえ、解体業者等の許可基準や再資源化基準を含む政省令の大部分について策定しました。

7. 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)

(1)施行状況
 平成12年5月に公布された建設リサイクル法は、平成14年5月に完全施行されました。建設リサイクル法の施行に当たっては、事業者等に対する説明会の開催、施行後1年を経過した5月やリサイクル推進月間である10月に全国一斉パトロールを実施するなど、法の普及啓発や実効性の確保などに努めました。また、建設リサイクル法の円滑な施行を図るため、再資源化施設に関する情報やリサイクル材の需要動向に関する情報等を提供する「建設副産物情報交換システム」を構築し、平成14年春から運用しています。さらに、建設リサイクルの推進に向けた基本的考え方、目標、具体的施策を定めた「建設リサイクル推進計画2002」や、建設工事の副産物である建設発生土と建設廃棄物の適正な処理に係る総合的な対策を発注者及び施工者が適切に実施するために必要な基準を定めた「建設副産物適正処理推進要綱」などにより建設リサイクルを推進しました。

(2)建設廃棄物(コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材)再資源化施設の整備状況
 コンクリート塊及びアスファルト・コンクリート塊に関しては、平成3年12月より運用の「公共建設工事における再生資源活用の当面の運用について」(平成14年5月改訂 国土交通省)において、国土交通省が行う公共工事の現場から一定の範囲内に再資源化施設がある場合には再生資材をその工事に使用すると定めたことにより、その再資源化施設の整備が進み、排出量に対する処理能力及び施設分布に大きな問題はありません。しかし、建設発生木材については、再資源化施設がコンクリート塊やアスファルト・コンクリート塊に比べて少なく、地域的に偏在しています。このため、建設発生木材の再資源化施設の設置に対して税制上の優遇措置や政府系金融機関の融資等を活用して再資源化施設整備の促進を図りました。

8. 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)

(1)施行状況
 平成13年5月に定められた、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」(基本方針)においては、食品循環資源の再生利用等の促進の基本的方向のほか、食品関連事業者の食品循環資源の再生利用等の実施率の目標として、平成18年度までに20%に向上させること等が定められています。
 基本方針により、全国の食品関連事業者等により食品廃棄物等の再生利用への様々な取組が始められているところです。また、食品リサイクル法に基づく再生利用事業の登録制度及び再生利用事業計画の認定制度を通して、再生利用事業の進展が今後見込まれています。

(2)食品廃棄物再資源化施設の整備状況
 食品循環資源の再生利用等を促進するためには、食品関連事業者の委託を受けて再生利用事業を行う事業者の育成等が不可欠であることから、食品リサイクル法に定める要件に合致するものについて主務大臣(農林水産大臣、環境大臣及び当該特定肥飼料等の製造の事業を所管する大臣)による登録を行うこととしており、この制度を通じ今後、これらによるリサイクル施設の整備等が行われるものと考えられます。
 また平成15年度は、食品廃棄物の再資源化を推進するため、飼料化施設、加工残さ施設、水産物残さ高度処理機能施設等の整備費補助により食品廃棄物再資源化施設の整備を図りました。さらに、先進的、モデル的な食品リサイクル施設の整備等を実施しました。
 なお、登録再生利用事業者については、廃棄物処理法上の一般廃棄物収集・運搬業の許可の特例、肥飼料を製造する場合について、肥料取締法及び飼料安全法上の製造、販売等に係る届出の特例が設けられています。

9. 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)

(1)施行状況
 「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」(基本方針)に基づき、国等の各機関は、平成15年度の調達方針の公表等を行い、これに従って調達を実施しました。
 基本方針に定められる特定調達品目等については、物品等の開発・普及の状況、科学的知見の充実等に応じて適宜見直しをすることとしており、平成16年3月に23品目の追加等の基本方針の変更を閣議決定しました。この中には、植物由来プラスチックを使用した品目の拡大、省エネルギー性に配慮した給湯器等の追加、ノンフロン冷蔵庫の追加、リサイクル部品を使用した自動車整備の追加等が含まれています(2-1-3表)。

各特定調達品目及びその判断の基準等(全199品目)

(2)環境物品等の購入の推進
 グリーン購入に率先して取り組む企業、行政、消費者団体等各主体が連携した組織として発足したグリーン購入ネットワークの活動を積極的に支援するとともに、全国17か所で開催したグリーン購入フォーラムなどを通して、廃棄物の発生の少ない製品やリサイクル可能な製品など、環境への負荷の少ない製品の優先的な購入の普及啓発を行いました。

グリーン購入の対象となる文具類の例

10. ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)

 PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を総合的かつ計画的に推進するため、平成15年4月にPCB特措法に定める「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」の策定を行いました。
 環境事業団を活用したPCB廃棄物の拠点的な広域処理施設の整備については、平成13年度の北九州市におけるPCB廃棄物処理事業に次いで、平成14年度に愛知県豊田市、東京都、大阪市及び北海道室蘭市におけるPCB廃棄物処理事業について環境大臣が事業実施計画の認可を行い、事業の具体化が進められています。
 また、PCB廃棄物の収集運搬時の安全性を確保するための「PCB廃棄物収集運搬ガイドライン」の策定を行いました。

11. 特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法)

 我が国においては、過去に不法投棄等の不適正な処分が行われた産業廃棄物により、生活環境保全上の支障が生じるとともに、これらの産業廃棄物が長期間放置されることにより、産業廃棄物処理に対する国民の不信感が生じ、循環型社会の形成の阻害要因ともなっている状況にかんがみ、これらの産業廃棄物に起因する支障の除去又は発生の防止を計画的かつ着実に推進することが喫緊の課題となっています。こうした課題を踏まえ、平成9年の改正廃棄物処理法の施行(平成10年6月17日)前に、同法に定める処理基準に違反して不適正に処分された産業廃棄物(特定産業廃棄物)に起因する生活環境の保全上の支障の除去又は発生の防止(支障の除去等)を自ら行う都道府県等に対し、国が財政支援を行うため、平成24年度までの時限法として、平成15年6月に産廃特措法が制定され、施行されました。
 同法では、1)環境大臣は、「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等を平成24年度までの間に計画的かつ着実に推進するための基本的な方針」(基本方針)を定める、2)都道府県等は、基本方針に即して、その区域内における特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の実施に関する計画(実施計画)を定めることができる、3)国は、産業廃棄物適正処理推進センターが、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等を行う都道府県等に対し資金の出えんを行う場合には、予算の範囲内において、その業務に係る基金に充てる資金を補助することができる、4)特定産業廃棄物に起因する支障の除去等を行うに当たり都道府県等が必要とする経費について、地方債をもってその財源とすることができることを定めています。
 平成15年10月には環境大臣が基本方針を定め、平成15年度においては、香川県、岩手県及び青森県が環境大臣の同意を得て実施計画を策定し、同計画に基づき特定産業廃棄物の支障の除去等に着手しました。これらの県に対し、国は適正処理推進センターを通じて資金を出えんする等の財政支援を行っています。

 第2節 循環型社会を形成する基盤整備

1. 財政措置等

 循環型社会基本法では、政府は、循環型社会の形成に関する施策を実施するために必要な財政上の措置等を講じることとしています。国の各府省の予算のうち、循環型社会の形成を推進するための経費は、平成15年度当初予算額で4,452億3,300万円(下水道事業費補助等、内数で計上している経費は除く。)となっています。
 また、日本政策投資銀行等の財政投融資対象機関においてリデュースリユースリサイクル事業、廃棄物処理施設の整備等に関する政策融資を実施するとともに、廃棄物・リサイクル対策及び廃棄物の適正処理に関して税制上の優遇措置を講じました。
 さらに、自動車リサイクルの推進を図るため、再商品化設備等の特別償却制度について、自動車破砕残さ再資源化施設を対象設備に加えるとともに、PFI選定事業者が設置する一般廃棄物処理施設の用に供する家屋及び償却資産に係る固定資産税並びに家屋に係る都市計画税及び不動産取得税の課税標準の特例措置を新設しました。

2. 循環型社会ビジネスの振興

(1)循環型社会ビジネスの市場規模
 循環型社会の形成が進み成長が見込まれる環境ビジネスのうち廃棄物・リサイクル分野(循環型社会ビジネス)の市場・雇用規模は、平成15年に環境省が行った調査では、平成12年で約21兆円、約57万人と推計されました。平成12年における市場規模や雇用規模の主な内訳としては機械・家具等修理、住宅リフォーム・修繕などいわゆるリペア(修理)産業に関する分野が約9兆円、雇用規模で約15万人、次いでプラスチック・鉄・古紙などの再生素材に関する分野が約8兆円、雇用規模で約20万人、廃棄物処理、資源回収、リサイクル、リース・レンタルなどのサービスの提供に関する分野が市場規模で約3兆円、雇用規模で約20万人と推計されます。循環型社会基本計画では、こうした循環ビジネスの市場規模及び雇用規模を平成22年度までに平成9年度比でそれぞれ2倍にすることを目標として掲げています。

日本の循環型社会ビジネス市場規模の現状について

(2)循環型社会ビジネスの振興へ向けた取組
 事業者が、再生資源の利用率目標の達成及び再生資源の新規用途の開発などの個別品目の状況に応じた再生利用能力の向上を図ることを促進するとともに、再生資源やリサイクル製品が初めて使用される資源やこれによる製品に比べて割高になりがちであることも踏まえつつ、国、地方公共団体、事業者、国民すべての主体がリサイクル製品を積極的に利用することなどにより、リサイクル製品の利用・市場の育成等を推進しました。平成14年度における国等の機関の特定調達品目(国等の機関が重点的に調達を推進すべき環境物品等の種類)の調達実績については、平成14年度に新たに追加された品目を含め、大半の品目において判断の基準を満たす物品等が95%以上の高い割合で調達されました。
 また、循環型社会ビジネスの振興のため廃棄物の収集・運搬・処分等の各種手続の合理化・法規制の徹底を図るため、廃棄物処理法を改正し、広域的なリサイクルを推進するための大臣認定制度を実施するとともに、特に循環型社会の形成の礎となる廃棄物処理業については、産業廃棄物処理業の優良化へ向けた検討を始めました。
 その他、いわゆる地域コミュニティ・ビジネスの成育を図るための事業の実施等を行いました。

コラム 11  多様化するリサイクル

 リサイクルは、役目を終えたもの(廃棄物等)を、埋立てなどの最終処分をせずに何らかの形で再利用することを言いますが、一口に再利用と言ってもその手法にはいろいろなものがあります。
 リサイクルを大きく2つに分類すると、マテリアルリサイクルサーマルリサイクルとに分けることができます。
 マテリアルリサイクルとは、廃棄物等を溶かすなどしてもう一度原材料の形に戻してから再利用するリサイクルのことです。通常は不純物の影響でリサイクルの回数が増えるごとに原材料としての品質が低下していくことが普通でしたが、最近では、ほとんど品質が低下しないリサイクル技術(ケミカルリサイクル)が開発されています。この技術を使った代表的な例として、ペットボトルをペットボトルに再生する技術があげられます。
 サーマルリサイクルとは、廃棄物等を燃料として活用し、熱エネルギーを回収するリサイクルのことです。代表的な例として、ごみ発電やRDF、焼却施設周辺における冷暖房等への廃熱利用などがありますが、サーマルリサイクルをすると残るのは焼却灰のみとなってしまうため、その後は路盤材などに活用される一部を除き、これ以上のリサイクルはされずに最終処分場に埋め立てられています。
 リサイクルには上記の分類とは違った分類の仕方もあり、ケミカルリサイクルのように品質の低下をほとんど伴わずにまた同じ製品に再生できるものは、一般的には完全リサイクル、クローズドループリサイクル等と呼ばれています。これに対し、品質の低下を伴うリサイクルはカスケードリサイクルとも呼ばれています。
 このようにリサイクルにもいろいろな分類の仕方がありますが、一般的には、サーマルリサイクルよりはマテリアルリサイクル、カスケードリサイクルよりはクローズドループリサイクルの方が環境負荷が小さくなります。


3. 経済的手法の活用

 多くの人の日常的な活動によって引き起こされている廃棄物問題については、大規模な発生源やある行為の規制を中心とする従来の規制的手法による対応では限界がある面もあります。このため、その対策に当たっては、規制的手法、経済的手法、自主的取組などの多様な政策手段を組み合わせ、適切な活用を図っていくことが必要です。

(1)ごみ処理手数料の徴収
 廃棄物処理法においては、一般廃棄物(ごみ)の処理(収集、運搬及び処分)は、市町村が処理責任に基づき行う事務として定められており、地域の生活環境及び公衆衛生の確保の観点から行われる公共サービスとして、その費用は、租税により負担されています。一方、廃棄物の排出量の増加に伴い、その処理について、一定の経済的負担をさせることが受益者負担の観点から公平であること、ごみ処理の有料化によってその減量化に一定の効果が見込まれること、などの理由から、市町村が一般廃棄物の処理に関し手数料を徴収する動きが見られています。
 ごみの発生抑制の観点からは、従量制による処理の手数料の徴収などの経済的手法の検討、活用が効果的であると考えられています。
 ごみ処理手数料の徴収の状況は2-2-1図のとおりです(平成13年度)。何らかの形で手数料を徴収している市町村の割合は、家庭系ごみ(粗大ごみを除く。)で約73.2%、事業系ごみ(粗大ごみを除く。)で約87.4%となっています。

平成13年度におけるごみ処理手数料の状況

 平成13年度における廃棄物処理事業経費に係る歳入の総額(2兆4,036億円)に占める使用料・手数料(1,586億円)の割合は、全国平均で6.6%程度です。

(2)デポジット制度
 離島や公園内、観光地などの一定のまとまりのある区域内においてデポジット制度が導入されている事例が見受けられます。
 環境省では「リユースカップの実施利用に関する検討調査」を実施しました。本調査は、スポーツ競技場のような閉鎖空間で大量に発生している使い捨て飲料容器ごみの発生を抑制し、デポジット制度によるリユースカップ(再使用カップ)が日本のサッカー場、野球場、コンサート会場などに導入されるための課題を整理・検討するものです。
 大分スポーツ公園総合競技場で年間17試合、デポジット制度(カップ預り金100円)によるリユースカップの利用を行った結果、1試合あたり約4,650個のカップが使用され、回収率は83.5%でした。なお、ごみとして出されたり、放置されたリユースカップはほとんど無かったことから、回収されなかったものは持ち帰られたものと推測されます。

リユースカップの流れ(大分のサッカースタジアムの場合)

 この調査の結果、デポジット制度はごみの減量化に一定の効果がある一方、カップの管理(回収・洗浄・保管等)に関する負担が大きいこと、外部からペットボトル等の飲料を持ち込む人が増え、かえってごみが増える場合があることなどの課題も判明しました。

(3)廃棄物に関する税制等
 平成12年4月施行の地方分権一括法によって、課税自主権を尊重する観点から法定外目的税の制度が創設されたことなどを受け、税の導入を検討する動きが各地で見られます。
 環境省の調査によると、平成16年1月現在、47都道府県中11県(三重、鳥取、岡山、広島、青森、岩手、秋田、滋賀、新潟、奈良、山口)及び保健所設置市57市中1市(北九州)において、産業廃棄物に係る法定外目的税の条例が制定されています。また、3府県(宮城、京都、長崎)で条例案を作成中、10県(福島、山梨、愛知、島根、香川、福岡、佐賀、大分、宮崎、鹿児島)で検討会等での検討を実施しています。
 このように、地方公共団体において、廃棄物・リサイクル対策の分野で、経済的手法の活用やその検討に着手する例が増えてきており、今後、循環型社会を形成していく上での実効ある制度の構築が期待されます。

コラム 12  ドイツのデポジット制度について

 平成15年10月1日よりドイツで包装廃棄物の発生抑止とリサイクルに関する命令に基づく強制デポジット制度が完全施行されました。
 これは、平成3年の全飲料のリターナブル容器の使用率(72%)を基準として、これを下回った場合、さらに12ヶ月間の調査を行い、その結果も72%を下回ったときに、調査結果の公示6か月後に平成3年のリターナブル容器の使用率を下回った飲料に対して強制デポジットを発動するというものです。
 ドイツ連邦環境庁の調査では、平成9年、10年の調査で全飲料のリターナブル容器の使用率が72%を下回ったことから、それぞれについて再調査が行われました。再調査の結果も72%を下回っていたため、平成14年7月に調査結果が公示され、平成3年のリターナブル容器の使用率を下回ったビール、ミネラルウォーター、炭酸清涼飲料に対して平成15年1月1日より強制デポジットが発動されました。
 こうした政府の動きに対して小売事業者や飲料メーカー等の業界団体が激しく抵抗したため、全国的な容器の回収システムは現在でも実質的に整備されていません。
 現在の制度は、ビール、ミネラルウォーター、炭酸入り清涼飲料水の使い捨て飲料容器に対し、1.5L未満の容器には25セント/本、1.5L以上の大型容器には50セント/本のデポジットが課されています。しかし、これだと炭酸を含まないソフトドリンク類、ワインや牛乳などにはデポジットが課されず、飲料間の不公平が生じているため、連邦政府は改正案を議会に提出しています。
 また、ドイツのデポジット制度をめぐる国内の混乱は、欧州委員会でも問題になっており、ドイツ国内外の業界団体は欧州司法裁判所への提訴や、同委員会へのロビー活動を行うなど、欧州委員会も巻き込んだ混乱へと発展しています。
 一方消費者は、デポジット制度そのものには賛成する人が多いものの、購入店まで容器を返しに行かなくてはならない現在の回収システムには不満を持っている人が多く、大半の使い捨て容器は回収されずに廃棄されているようです。
 また、制度の導入以来の半年間でリターナブル容器の使用率が9ポイント向上し、59%になったと連邦環境大臣が述べており、制度の導入よる一定の効果は確認されています。しかし、制度の効果に疑問を投げかける業界団体もあり、今後公表される公式な調査結果が注目されます。


4. 教育及び学習の振興、広報活動の充実、民間活動の支援及び人材の育成

 平成13年に内閣府が実施した「循環型社会の形成に関する世論調査」では、国民の間に製品の長期間使用や再生品の使用、ごみの排出抑制、分別回収への協力、事業者への引渡しなどを定着させるためには、国等が「子どもの頃からごみ問題について環境教育を行い、国民の意識を高める」ことを行うべきとの回答が最も多数(約7割)を占めました。
 このような環境教育の推進の重要性にかんがみ、国民各界各層の環境保全について理解を深め、環境保全活動に取り組む意欲を高めていくため、環境教育の推進、体験機会の提供等の措置を盛り込んだ「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」が平成15年7月に成立し(同年10月1日に一部施行)、この法律に基づく基本方針の作成及び円滑な運用に向け、関係省連絡会議が設置されました。
 環境省では、環境教育の一層の推進を図るため、小中学生の環境活動を支援する「こどもエコクラブ事業」、環境保全についての助言・指導を行う人材を確保する「環境カウンセラー事業」等を実施しました。また、NGO等による環境保全活動を活性化するために、地球環境パートナーシッププラザにおいて情報提供等様々な支援を行っています。さらに、環境事業団に設けられた「地球環境基金」では、国内外の民間団体が行う環境保全活動に対する助成を行いました。
 国民生活における省資源・省エネルギー政策を総合的・計画的に推進するため、各都道府県における省資源・省エネルギー国民運動地方推進会議の開催等による国民運動の効果的展開を図るとともに、持続可能な循環型経済社会の形成等を目指した環境調和型ライフスタイル形成のための調査を実施しました。
 また、環境に配慮した消費活動の促進のために、日常的な行動である「買い物」に着目し、10月に39都道府県と連携して「環境やさしい買い物キャンペーン」を実施しました。
 文部科学省では、社会教育における取組として、環境保全などの現代的課題について、地域社会全体で課題解決に取り組むことができるよう、行政とNPOをはじめとする民間団体との連携による地域学習活動の活性化を支援しました。
 文部科学省では、学校における環境教育の推進を図るため、全国環境学習フェアの開催や環境教育担当教員講習会の開催、環境教育実践モデル地域の指定、環境のための地球学習観測プログラム(GLOBE)モデル校の指定などを行っています。また、平成15年度から、新たに環境省と連携・協力し、情報提供体制の整備を進めるとともに、環境教育リーダー研修基礎講座を行っています。
 環境保全計画の策定や環境測定など地方公共団体や企業の環境保全活動に関して、文部科学省においては、有能な技術者を「技術士(環境部門)」と認定し、活用を促進しています。

コラム 13  エコ・コミュニティ事業

 平成15年3月に策定された循環型社会基本計画では、国の取組として、地域におけるNGO・NPOなどの様々な主体による協働の取組で、先駆的な取組について国が支援していくこととされています。
 これを受けて環境省では、NGO・NPOや事業者が地方公共団体と連携して行う循環型社会の形成に向けた取組で、他の地域のモデルとなるような事業を公募してエコ・コミュニティ事業として行うことにより、地域からの取組の展開を促すこととしました。
 平成15年度は、全国から239件の応募があり、5件を採択しました。採択事業の概要は以下のとおりです。

○お祭り・イベントで利用するリターナブルカップシステムの開発事業
 京都市に拠点をおくNGOの京のアジェンダ21フォーラムは、お祭りやイベントの環境負荷をできる限り小さくすることを目指しています。このため、本事業を活用してお祭りやイベントで使用される紙コップなどの使い捨て容器をリユースカップに置き換え、実際のお祭りやイベントに導入して環境負荷を科学的に検証するなど、お祭りやイベントの環境負荷が最も小さくなるような仕組みづくりのための実証試験を行っています。
リユースカップの返却

○PETリサイクルシステム構築による循環型社会形成実証プロジェクト
 大手飲料メーカーC社と同社の環境マネジメントを担当する監査法人A社は、実用化段階に入ったペットボトルのボトルtoボトルのリサイクル技術を活用してペットボトルの完全リサイクルシステムを構築することとしています。このため、本事業を活用して九州北部地区において地元の自治体、NGO・NPOと協働してごみとして廃棄されているペットボトルの回収率を向上させる働きかけを住民に対して行い、クローズドループリサイクルの入り口であるペットボトルの回収について、効率的な回収の仕組みづくりのための実証試験を行っています。

事業系PETリサイクル事業概要図

○南九州における900ml茶びんの統一リユースシステムモデル事業
 社団法人環境生活文化機構は、九州地域で主に焼酎の販売に利用されている容量900mlの茶びんの規格を統一し、リユースする仕組みを構築することとしています。このため、本事業を活用して統一びんの規格づくり及び試作びんの作成、焼酎メーカーへの参加働きかけ、住民への協力呼びかけ、統一びんを用いた商品の試験販売など、リユースの仕組みづくりのための実証試験を行っています。
900mlリユースびん

○エコマネーを利用した有機性循環資源リサイクル事業
 神奈川県厚木市の厚木なかちょう大通り商店街振興組合は、生ごみの回収、たい肥化、有機野菜の栽培、商店街での有機野菜の販売といった地域循環システムの構築にエコマネーシステムを活用することにより、併せて商店街の活性化を図ることを目指しています。このため、本事業を活用してシステムを導入するための住民意識調査、たい肥の安全性調査、システムの試行など、地域循環システムを構築するための実証試験を行っています。
生ごみの回収

○会員向けビデオテープ回収リサイクルシステムの構築
 通信教育事業を行っているB社は、会員向けに配布している教材ビデオテープを回収してリサイクルする仕組みの構築を目指しています。このため、本事業を活用して自社のイベント開催時の回収、日本郵政公社及び地元自治体の協力により兵庫県姫路市内の郵便局及び市の公共施設を活用したビデオテープの回収・リサイクルを行うなど、ビデオテープ回収リサイクルシステムの構築のための実証試験を行っています。
会員向けビデオテープ回収


コラム 14  リ・スタイルで行こう!

 環境省では、平成14年版の循環型社会白書で、ごみを減らす暮らし方である「リ・スタイル」を提唱しました。このリ・スタイルを広く周知するため、Webマガジン「Re-Style」(http://www.re-style.jp)を発行し、著名人へのインタビューやイベント等のレポート、暮らしやビジネス等に関する情報を提供しています。
 また、アニメの人気キャラクター「パワーパフガールズ」を使用して、循環型社会の理解のための入門書として活用できる小中学生向けパンフレット「パワーパフガールズと挑戦しよう!ごみゼロ大作戦」を小中学校やこどもエコクラブ、環境省の主催イベント等で配布を行ったほか、実費での頒布(※)も行っています。
 さらに、パワーパフガールズには、リ・スタイルを広く知ってもらうためのポスターや宣伝用ポストカード、エコバッグでも活躍してもらっています。

webマガジン「Re-Style」、パンフレット

※問合せ先:(財)日本環境協会出版物担当
    TEL:03-5114-1251
    FAX:03-5114-1250
    E-mail:jea@japan.email.ne.jp


5. 調査の実施・科学技術の振興

 平成13年3月に閣議決定された第2期科学技術基本計画を踏まえて、平成13年9月に総合科学技術会議において決定された「分野別推進戦略」では、環境分野で今後5年間に重点的に取り組んで行くべき研究分野の一つとして、ゴミゼロ型・資源循環型技術研究が選定されました。また、中央環境審議会では、「環境研究・環境技術開発の推進を総合的・戦略的に行うための方策は、いかにあるべきか」について審議し、循環型社会の創造プログラム、循環型社会を支える技術の開発プログラム等の「重点化プログラム」を明らかにした専門委員会中間報告を平成13年6月に取りまとめました。
 ひっ迫する廃棄物最終処分場の問題、温室効果ガスの削減目標を踏まえた対応等の環境問題を解決しつつ、今後の循環型の経済システムを構築するため、新たなリサイクル等環境関連技術、及び地球温暖化防止に資する地球環境技術の研究開発を推進しています。
 循環型社会形成推進のための環境政策の実施効果を統合マクロ経済モデルを用いてシミュレーションし、循環型社会に向けての展望と政策効果に関する定量的分析を行う研究や、霞ヶ浦流域をモデルとして、環境低負荷型・資源循環型の水環境改善システムを構築するための研究を行っています。
 廃棄物処理等科学研究費においては、競争的資金を活用し広く課題を募集し、平成15年度は45件の研究事業及び18件の技術開発事業を実施しました。
 研究については、「廃棄物処理に伴う有害化学物質対策研究」、「廃棄物適正処理研究」、「循環型社会構築技術研究」を公募分野とし、廃棄物を取り巻く諸問題の解決とともに循環型社会の構築推進に資する研究を行いました。技術開発についても、「廃棄物適正処理技術」、「廃棄物リサイクル技術」、「循環型設計・生産技術」を公募分野とし、次世代を担う廃棄物処理技術の開発を図りました。
 また、地球環境保全等試験研究費のうち公害防止等試験研究費においては、前年度に引き続き「循環型社会形成に資する研究」を重点的強化を図る必要がある事項の一つに掲げ、廃棄物の処理・再利用技術の開発、生分解性プラスチックの適正使用のための研究等、7課題の試験研究を実施しました。
 戦略的創造研究推進事業において、地球温暖化等を抑制するための新しい技術的提案を目指した「資源循環・エネルギーミニマム型システム技術」における基礎研究の推進を図り、植物系循環型高機能材料を生産するシステムをより効率的なものにするための研究を進めています。
 環境、エネルギー等に関連する技術のうち、自然エネルギー活用システム、都市熱源ネットワーク等の都市に関連する技術を複合・総合化し、パイロット事業として現実の都市への適用を先導的に行うことにより新たな都市像・都市生活像を示しました。あわせて、都市廃棄物処理新システムを整備することにより、先導的な拠点市街地の形成を図っています。
 科学技術振興調整費を活用して、「都市ゴミの高付加価値資源化による生活排水・廃棄物処理システムの構築」により、生ごみの再利用・リサイクルを目的に生ごみを原料として生分解性プラスチック(ポリ乳酸)を製造する技術システムの開発を行っているほか、「乳酸生成糸状菌による農産加工副産物利用技術の開発」、「エネルギー半減・環境負荷ミニマムを目指した高炉の革新的精錬反応に関する研究」、「材料の低環境負荷ライフサイクルデザイン実現のためのバリアフリープロセシング技術に関する研究」、「廃棄物・新素材による土壌浸透システム開発」、「食品廃棄物処理システム中の微生物群の動態」といった研究開発を実施しました。
 地球環境の保全と人間社会の持続的発展を同時に実現するため、有効利用可能な資源分子を有用な物質・材料に変換する新しい科学技術及び窒素酸化物(NOx)・硫黄酸化物(SOx)等の大気汚染分子や、ダイオキシン類等を分解して、環境低負荷型分子に変換する革新的な環境修復技術の開発を推進しています。
 また、家畜排せつ物、木質系廃棄物等の有機性資源のバイオマス変換等革新的リサイクル技術(メタン化、メタノール化、有用成分抽出、炭化等)の開発を実規模実証研究により実施しています。

6. 施設整備

 地域における資源循環型経済社会構築の実現に向けて、関係各省が連携して、ゼロ・エミッション構想推進のため「エコタウン事業」を実施しています(2-2-3図)。

エコタウン事業の承認地域マップ

 関係各省の承認を受けたエコタウンプランに基づくリサイクル関連施設整備事業等に対するハード面の支援及び環境関連情報提供事業等に関するソフト面での支援を実施しました。
 家畜排せつ物、稲わら等の循環的な利用については、畜産農家と耕種農家との連携強化による流通・利用の促進を図るため、たい肥・稲わら等流通利用計画の作成等を行うとともに、たい肥利用促進のための実証ほ等の設置、たい肥化施設等の整備等幅広い取組を推進しました。
 また、家畜排せつ物等の有効利用を促進するため、たい肥化施設等の環境対策施設の整備を推進しました。
 さらに、下水道事業において発生する汚泥(発生汚泥等)の減量化のための施設整備の支援、新技術開発の促進等を行いました。

7. その他の政府の取組

(1)都市再生プロジェクトの推進
 平成13年6月の都市再生本部決定に基づいて、大都市圏におけるゴミゼロ型都市への再構築に向けた取組が開始されました。第1段階のプロジェクトとして、平成13年7月には、「首都圏ゴミゼロ型都市推進協議会」が設置され、平成14年4月には、7都県市による中長期計画の策定を行いました。この中長期計画では、国の基本方針より前倒しした廃棄物の減量化目標の設定、臨海部に立地する既存産業の集積や既存インフラの活用を踏まえた廃棄物・リサイクル施設の集中立地を行う拠点の形成、静脈物流システムの構築等を行うこととしています。また、平成15年7月には、中長期計画の進捗状況等を点検し、新たな課題の検討をするなど、フォローアップを行いました。
 さらに、平成14年7月には、首都圏に次ぐプロジェクトとして、「京阪神圏ゴミゼロ型都市推進協議会」が設置され、平成15年3月には、9府県市による中長期計画の策定を行いました。この中長期計画では、国の基本方針を上回る最終処分率の設定、大阪湾広域臨海環境整備センターを中核としたした廃棄物・リサイクル施設の整備及び静脈物流システムの構築、循環型社会形成に向けた環境産業の育成、不適正処理対策の実施等を行うこととしています。

(2)循環型社会実現のための静脈物流システムの構築
 廃棄物や再生資源・製品の輸送については、リサイクル対象品目の増加、再生利用率の向上などによって、輸送の大量化・中長距離化が進むことが予想されます。また、大都市圏における廃棄物・リサイクル施設の集中立地や拠点形成により、拠点間の相互連携によるリサイクル等の廃棄物処理に的確に対応した物流システムの整備が必要となってきます。
 平成13年7月に閣議決定された「新総合物流施策大綱」においても、環境問題の深刻化、循環型社会の構築等の社会的課題に対応した物流システムを構築する観点から、地方公共団体とも連携して、今後のリサイクル拠点の配置にも対応しつつ、循環型社会の実現に貢献する新たな物流システムを構築することとされました。そのため平成14年度に首都圏で実施した調査に引き続き、平成15年度は近畿圏において生産拠点の状況、リサイクル関連拠点の配置計画、当該拠点間における輸送等の実態把握に努めるとともに、鉄道・海運の活用を含めた効率的な静脈物流システムについての検討を行いました。
 さらに、港湾においては、広域的なリサイクル施設の立地に対応した静脈物流の拠点となる港湾を「総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)」(全国18港)に指定し、港湾における循環資源の円滑な取扱いの促進、官民連携の推進、港湾施設の整備など総合的な支援策を講じました。また、国内の静脈物流システムと連携を図りながら、循環資源の輸出ターミナル拠点化・大型化、品質管理の強化等による効率的な国際静脈物流システムの構築に向けた調査を実施しました。

(3)農業用使用済プラスチック等農業生産資材廃棄物の適正な処理
 農業用使用済プラスチック等農業生産資材廃棄物の適正な処理を推進するため、全国段階において、再生品の需要拡大を図るための普及啓発等を行うとともに、都道府県・市町村段階において、関係者の協力体制の確立、処理・減量化計画の策定、排出量を削減するための生分解性プラスチックフィルム等導入技術実証、普及啓発等を行いました。

(4)使用済FRP船の再資源化の推進
 FRP(繊維強化プラスチック)船については、数年後には廃船時期を迎えるものが1万隻を超えることが予想されており、早期の廃船処理システムの確立が求められています。
 このため、平成12年度に開始した「FRP廃船高度リサイクルシステム構築プロジェクト」を平成15年度も継続して実施し、経済性に優れ、かつ、環境にも配慮したリサイクル技術確立のための総合実証試験及びリサイクルシステム事業化のための検討等を行いました。

(5)標準化の推進
 我が国の標準化機関である日本工業標準調査会(JISC)は平成14年4月に策定した「環境JISの策定促進のアクションプログラム」を平成15年4月に改定し、環境JISの推進に取り組んでいます。
 平成15年度は、「鉛フリーはんだ試験方法」、「鉛・クロムフリーさび止めペイント」、「ポルトランドセメント」(塩化物イオンの規格値を0.02%から0.035%に緩和し、廃棄物受入れ増に寄与)等、32件のJIS制定・改正(平成14年度は54件)を実施しました。

(6)地方組織の強化
 改正廃棄物処理法が平成15年12月に施行されたことに伴い、緊急時における環境大臣が行う廃棄物処理施設等への立入検査、廃棄物及び特定有害廃棄物等の輸出入に際しての申請内容調査及び立入検査、廃棄物の広域処理認定又は再生利用認定の事前相談及び現地確認等に関する事務が、全国9ブロックの地方環境対策調査官事務所の事務に追加され、同事務所の体制が大幅に強化されました。

 第3節 循環型社会の形成と地球環境問題

1. 廃棄物と温暖化対策

(1)廃棄物と温暖化
 地球温暖化の原因となる温室効果ガスは、私たちの日常生活や様々な事業活動に伴って排出されます。製品の製造にかかわる産業部門、流通にかかわる運輸部門、製品を使用する業務その他・家庭部門、焼却等を行う廃棄物部門等において二酸化炭素等の温室効果ガスが排出されます。
 廃棄物分野においては、廃プラスチックや廃油といった化石系資源に由来する廃棄物の焼却に伴う二酸化炭素の排出が大きな割合を占めていますが、その他にも、厨芥類、紙類等のバイオマス系廃棄物を再生可能エネルギーとして利活用したり焼却処理することなく直接埋め立てた場合、二酸化炭素よりも地球温暖化係数の大きなメタンが発生します。また、燃焼温度の低い焼却炉からは一酸化二窒素が発生します。
 平成13年度の廃棄物分野における温室効果ガス排出量は3,360万t(CO2換算)で、日本の温室効果ガス総排出量(同13.0億t)の2.6%を占めています。

(2)廃棄物に起因する温室効果ガスの排出削減
 温室効果ガスの排出量を削減するためには、各部門間の関係を踏まえて、効果的な対策を立案していく必要があります。廃棄物の排出抑制や再使用、再生利用及び熱回収といった循環資源の利用を促進することは、一般に化石系資源の消費量の減少及び廃棄物の発生量の減少をもたらすものと言えます(2-3-1図)。

廃棄物の排出量削減と温室効果ガス排出量の関係

 最も効果が大きいのは、排出抑制です。廃棄物排出量の減少は、焼却・埋立てに伴う温室効果ガスの発生量を減少させることに寄与します。再使用は、製品として使用される期間が延長するので、やはり、大きな効果が期待できます。
 再生利用の推進は、焼却される廃棄物や直接埋め立てられる廃棄物の量を減らすとともに、化石系資源の新たな利用が再生資源に置き換えられることによって温暖化対策に貢献します。特に再生利用に伴って新たな化石系資源の節約が見込まれる場合や、廃アルミニウムの再精錬のようにエネルギー消費量が減少する場合に大きな効果が見込まれます。ほかには廃プラスチックをコークスの代替として製鉄用の高炉の還元剤として利用することも、一般的には効果があるものと考えられます。家畜排せつ物等のたい肥化や再生可能エネルギーとしての利活用は、焼却量や直接埋立量を削減することから、廃棄物部門の温暖化対策としても有効ですが、こうしたバイオマス系廃棄物をたい肥化して肥料として使用し、農地に有機物として蓄積する炭素量を増加させることによって、農地土壌から発生する二酸化炭素排出量を削減する効果も期待されています。
 焼却時に発電等を行う熱回収は、燃やさざるを得ない廃棄物の排熱を有効利用する限りにおいては、その推進により、発電等に必要な重油、石炭等の化石燃料の消費量の削減に寄与します。
 このように、資源が廃棄物となることを抑制し、廃棄物になったものは、再使用・再生利用により、余すことなく利用し、それでもなお、焼却処理や埋立処分をせざるを得ない可燃性の廃棄物については、その持っているエネルギーを有効に利用することが温暖化対策の面でも重要です。

(3)温暖化対策における廃棄物の取扱い
 平成14年3月に地球温暖化対策推進本部において決定された地球温暖化対策推進大綱では、廃棄物の排出抑制・再使用再生利用の推進等によって、廃棄物の焼却や直接埋立て等に起因する温室効果ガスを、単純に積み上げて平成22年には平成2年に比べて約600万t(CO2換算)削減することを目標としています。このほか、大綱では新エネルギー対策として、廃棄物発電は燃やさざるを得ない廃棄物の排熱を有効に活用するものであることから、循環型社会基本法の理念及び廃棄物処理法の廃棄物減量化目標との整合性を図りつつ、推進することとしています。
 具体的には、太陽光や風力などの新エネルギー発電設備は今後とも着実に整備していく必要がありますが、新エネルギーのうち廃棄物に係る発電設備の設置及び利用が行われる場合には、循環型社会基本法の基本原則である廃棄物等の発生抑制・再使用・再生利用の進展が阻害されないように行う必要があります。
 平成15年度からは、民間事業者が行う温暖化対策に資する高効率の廃棄物発電やバイオマス発電施設の整備を促進させるため、当該施設の整備に必要な追加費用に対して支援を行っています。

2. 国際的な取組

 有害廃棄物等の輸出入等の規制を適切に実施するため、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(バーゼル条約)の国内対応法である「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(バーゼル法)の的確かつ円滑な施行を推進しています。そのほか廃棄物処理法の適切な施行及び運用により、廃棄物の輸出入の適正な管理を行っています。
 また、開発途上国の持続可能な発展を支援するために、政府開発援助(ODA)により廃棄物管理に係るマスタープランの作成やごみの分別収集、最終処分場の安全閉鎖など、循環型社会の形成に資する様々な技術協力等を実施しています(コラム15参照)。
 このほか、物質フロー会計については、昨年11月に「物質フロー会計及び資源生産性に関する国際専門家会合」を開催し、これまでの取組や今後の課題及び共同研究の在り方についての議論を行いました(コラム16参照。)。
 さらに、OECD(経済協力開発機構)で行われている物質フローやEPR(拡大生産者責任)についての検討、廃棄物に関連する調査などに積極的に参画するなど、国際機関との連携も進めています。
 なお、OECDが取りまとめた各国の廃棄物の発生量は2-3-1表のとおりです。

各国の部門別廃棄物発生量(1993年以降の最新データ)

コラム 15  スリランカにおける開発調査

 インドの南に位置する島国、スリランカ民主社会主義共和国の地方都市では、廃棄物に起因する保健衛生面及び環境面での問題が深刻化しています。そこで、我が国は、持続可能な廃棄物管理を行うための地域計画を策定することが重要であるとの認識の下、スリランカ政府の要請を受け、スリランカ国地方都市環境衛生改善計画調査を実施しました。
 この調査の目的は、1)7つのモデル市それぞれに廃棄物管理計画を策定するとともに、全国地方市に適用可能なガイドラインを策定すること、2)実効的なパイロット・プロジェクト(試験事業)を実施すること、3)中央政府機関へ提言を行うこと、4)カウンターパート(相手機関の行政官)に技術移転を行うことです。
 具体的には、ごみ量、ごみ質、住民意識といった基礎調査や技術移転セミナーの実施、モデル条例の制定などを実施しました。また、パイロット・プロジェクトとして、ベル収集(収集車につけたベルの音楽を合図に住民にごみを持ってきてもらうシステム)による収集改善、学校を集団回収拠点とすることによる分別排出、再資源化といった環境教育の実践、環境教育を推進するための教材の作成や各種プログラムの実施、既存最終処分場の改善や衛生埋立ての実施を行いました。

キャンディ市におけるベル回収(左)と学校での資源ごみの集団回収の様子


コラム 16  物質フロー会計及び資源生産性に関する国際専門家会合の開催

 平成15年4月にパリで開催されたG8環境大臣会合において、我が国は物質フロー会計及び資源生産性に関する共通計測手法の確立を検討するための国際共同研究プロジェクトを開始することを提案しました。これを受けて、環境省は昨年11月に東京で国際専門家会合(東京会合)を開催し、10か国、3国際機関、国内外の研究機関等に加え、地方公共団体や企業からの参加がありました。
 我が国より物質フロー会計を政策に適用した循環型社会基本計画を紹介したのを始め、各国・機関における物質フロー会計に関する取組についての報告があり、続いて国際的な重点課題について議論されました。具体的には、物質フロー会計とは何を示すのか、どのような長所・短所があるのかなどについての認識が示されるとともに、国際的な循環や隠れたフローの把握手法といった我が国が抱えている課題も含め、需要(政策利用)及び供給(手法)の両面から意見が出されました。
 今後の国際共同研究では、OECDをはじめとする国際機関と連携し、各国における物質フロー会計の取組等に関する調査の実施や、各主体の理解を深めるための冊子及び技術的なガイダンスマニュアルの策定といった成果物の作成を目指すことが提案されました。
 なお、OECDにおいて、「物質フロー及び資源生産性に関する理事会勧告」が採択される見込みであり、我が国としては先導的な役割を果たすべく、これらの国際的な取組に積極的に参加していきます。