序章
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循環型社会構築の障害とその克服に向けて -不法投棄の現状と対策について- |
はじめに |
第1節 不法投棄の現状 |
1. 日常生活に伴う不法投棄 |
ごみ集積所以外でも、コンビニやスーパー、駅、公園のごみ箱の周りや、河川、道路等に、投棄の形態(レジ袋に入った生ごみや電気ストーブ1個と掃除機1台など)から見て明らかに個人によるものと思われる不法投棄が常時発生し、家庭ごみや数多くの粗大ごみなどが捨てられています。高速道路のパーキングエリアやサービスエリアでは夜間にごみ箱周辺のほか駐車場や園地の植え込みの間にごみが捨てられたり、河川では専用道路の際や川原、人目につかない橋の下にごみが捨てられています。 また、公害等調整委員会の調査によると、廃棄物の不法投棄に関する苦情件数は年々増加しており、平成14年度の苦情件数は約1万4千件に上っています。このうち一般廃棄物に係るものが全体の約74%を占めており、苦情件数では産業廃棄物を大きく上回っていました。一般廃棄物には飲食店から排出される生ごみなど事業系の廃棄物も含まれていますが、その多くは家庭から排出されるものであり、個人による不法投棄の数の多さを示しています(序-1-2図)。 |
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2. 家電リサイクル法指定4品目の不法投棄 |
(1)不法投棄台数 環境省の調査によると、平成14年度に新たに確認できた家電リサイクル法指定4品目の不法投棄台数は、エアコン約1万8千台、テレビ約8万3千台、冷蔵庫等約3万6千台、洗濯機約2万9千台の合計約16万6千台でした(序-1-3図)。 また、平成13年度と14年度両方のデータを有している2,743地方公共団体(総人口の約90%)で比較すると、平成14年度の不法投棄台数は約15万3千台で、前年度(12万7千台)に比べ約20%増加していました。 (2)不法投棄の場所 平成15年の環境省調査によると、市区町村が回収した不法投棄場所(複数回答)は、山林、田畑等(民有地を除く。)が約59%、道路上、道路高架下等の公道が約58%、ごみステーション等ごみの収集場所が約55%、河川敷等の河川用地内が約44%、公園、港湾等の道路、河川以外の公共用地が約32%、小売店以外の民有地が約26%、小売店の敷地が約5%、その他が約10%でした。 (3)事業者による不法投棄の事例 札幌市内の家電小売店から廃家電の処理委託を受けた古物商が、平成14年7月下旬から10月上旬にかけて、テレビ、冷蔵庫など家電リサイクル法指定4品目約160台を厚田村の山中に不法投棄する事案が発生しました。なお、同事案では廃家電とあわせて木くずなどの一般廃棄物約500kgも不法投棄されていました。 |
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3. 使用済自動車の不法投棄 |
(2)不法投棄等又は違法保管状態にある使用済自動車の台数 環境省の調査によると、平成15年3月時点において確認された不法投棄等又は違法な保管状態にある使用済自動車の台数は約16万9千台でした。その内訳は、野積み等の保管基準違反によるものが約12万3千台、山林等への不法投棄や路上放置が約4万6千台でした。 また、使用済自動車の不法投棄の特徴として、離島(本土、沖縄本島及びこれらと橋で結ばれている島以外の島)の占める割合が著しく高いことがあげられます。離島の占める割合は全国の約12.2%(保管基準違反が約7千台。不法投棄等が約1万3千台)と全体の約8分の1にも上っています(序-1-5図)。 (3)支障除去等の措置の状況 ア 路上放棄車処理協力会の寄付制度による支障除去等の措置 路上放置車に係る生活環境保全上の支障除去等の措置に対する支援制度としては、路上放棄車処理協力会(構成員:(社)日本自動車工業会、(社)日本自動車販売協会連合会、(社)全国軽自動車協会連合会及び日本自動車輸入組合)の寄付制度があります。同制度は市町村が行う路上放置車の処理に対し、当該市町村の協力要請に基づき路上放棄車処理協力会が当該処理に要する費用(離島等の場合は別途協議)を寄付する制度です。同制度は平成3年から実施されており、平成14年は約1万7千台、制度開始からの累計で約16万台を処理しています。 イ 沖縄県の放置自動車撤去事業による支障除去等の措置 沖縄県では、放置自動車の発生防止条例を制定する市町村に対して、沖縄特別振興対象事業を活用した放置自動車撤去事業を平成13~14年度にかけて実施しました。同事業により市町村が撤去した放置自動車は、平成13年度で約1万1千台(平良市、石垣市など23市町村)、平成14年度で約5千8百台(国頭村など38市町村)に上ります。 |
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4. 廃船の不法投棄 |
(4)支障除去等の措置の状況 平成14年に撤去できなかったものを含め、平成15年に確認された不法投棄廃船1,582隻のうち、15年中に撤去されたものは全体の約55%(867隻)に過ぎず、一方、撤去に至らなかったものが約45%(715隻)を占めていました(序-1-10図)。 支障除去等の措置の実施者の内訳を見ると、海上保安庁の廃船指導票等による撤去指導に基づき原因者が撤去したものが、処理隻数(867隻)の約68%(588隻)を占め、それ以外は地方公共団体等により撤去されました。 |
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5. 産業廃棄物の不法投棄 |
(8)検挙数 近年、廃棄物処理法違反によって検挙される産業廃棄物の不法投棄事犯が増加しています。平成15年に廃棄物処理法違反で警察が検挙した産業廃棄物不法投棄事犯は900件、880名でした(序-1-21図)。 (9)不法投棄の背景 産業廃棄物処理の世界も、通常の製品の生産・流通・販売の世界と同様に市場原理が働いています。通常の製品は製造工場から卸売業者、小売業者、消費者へと品物が渡らないことには商売が成り立ち得ませんが、廃棄物の場合は送り先である廃棄物処理施設に廃棄物が届かなくても排出事業者の生産活動に直接的なダメージはありません。加えて廃棄物は排出者にとって不要なものであることから、その処理のために適正なコストを負担しようという動機付けが働きにくく、市場原理の下、処理業者間の価格競争により、他社より安く請け負う業者に顧客(排出事業者)が流れる傾向にあります。このため、安かろう悪かろうの処理が行われがちとなり、その結果、不法投棄が多発しています。 さらに、近年の廃棄物処理施設立地の困難化等を背景とした廃棄物処理の適正費用の高騰、バブル崩壊以降の景気低迷とが相まって、この傾向が助長されています。 |
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コラム 1 | 豊島不法投棄事案 |
平成2年11月、兵庫県警は、香川県豊島の産業廃棄物処理業者を廃棄物処理法違反の疑いで強制捜査しました。 同社は、昭和50年代後半から平成2年にかけて、シュレッダーダストや廃油、汚泥等の産業廃棄物を有価物と称して同社が管理する処分地に大量に持込み、野焼きや埋立てを繰り返し、約47万m3の産業廃棄物を不法投棄しました。不法投棄された廃棄物の最深部は地表より約18mにも達しており、鉛、総クロム、カドミウム等の重金属に加えPCBやダイオキシン類等の有害物質が含まれていたほか、組成的にもシュレッダーダスト、燃え殻、鉱さいに加え、布きれ、ウレタンシート、木片等雑多なものが混入していました。 その後、香川県により、産業廃棄物処理業の許可の取消し、産業廃棄物の撤去等の措置命令、措置命令履行に係る行政指導などが再三繰り返し行われましたが、廃棄物の撤去はほとんど進みませんでした。 平成5年11月には、豊島住民により、香川県、産業廃棄物処理業者、排出事業者等を相手とした公害調停が申請されました。その後、公害等調整委員会調停委員会による調停が進められ、平成9年7月に中間合意が、また、平成12年6月に最終調停が成立しました。なお、同社はこの間の平成9年3月に破産しています。 調停条項に基づき、排出事業者19社が合計約3億7,800万円の解決金を支払う(住民が1/2、香川県が1/2を受領)とともに、香川県は廃棄物等の処理、汚染された地下水や浸出水等の漏出防止措置等を実施することとなりした。計画では平成24年度までに約447億円の巨費を投じて汚染土壌を含む廃棄物等約56万m3を豊島から隣接する直島へ海上輸送、溶融処理し、発生する溶融スラグや飛灰などの副成物を香川県の公共事業で有効利用することとしています。 |
コラム 2 | 青森・岩手県境不法投棄事案 |
平成11年11月、青森県警及び岩手県警は、青森県八戸市に本社を置く産業廃棄物処理業者を廃棄物処理法違反の疑いで強制捜査しました。 本事案は、同社が埼玉県の産業廃棄物処理業者と共謀し、青森県田子町及び岩手県二戸市にまたがる同社事業場敷地内に、ごみ固形化物(廃プラスチック類、紙くず等を圧縮したもの)、たい肥様物、鶏糞、燃え殻、セメント固形物、有機溶剤入りドラム缶、医療廃棄物など合計約88万m3(青森県側約67万m3、岩手県側約21万m3)を不法投棄したもので、それまで我が国最大と考えられていた香川県の豊島不法投棄事案の規模を上回るものでした。 マニフェストや帳簿類等の取引状況に関する資料の調査結果から、同社に持ち込まれた廃棄物の排出事業者は23都道府県に所在する約10,600社であることが判明しています(平成15年8月現在)。排出事業者の所在地の約9割が首都圏(1都7県)、2/3が東京圏(1都3県)であり、大都市圏で発生した産業廃棄物が地方圏に持ち込まれ不法投棄されたものでした。 青森県及び岩手県は、不法投棄の行為者等に対する責任追及と併せ、排出事業者に対しても委託基準違反や注意義務違反等の認められた者に対して責任追及を行っており、平成15年9月時点において7社に支障除去等の措置命令等を発し履行させています。なお、同社は平成13年6月に解散、埼玉県の産業廃棄物処理業者は12年10月に破産しています。 今後、青森、岩手両県は、産廃特措法の実施計画に基づき平成15~24年度の10年の月日と約655億円の巨費を投じて生活環境保全上の支障除去等の措置を講じていくこととしています。 |
コラム 3 | 岐阜市 椿 洞 の産業廃棄物不法投棄事案 |
平成16年3月10日、岐阜県警は、岐阜市椿洞の産業廃棄物処理業者を廃棄物処理法違反の疑いで強制捜査しました。 上記産業廃棄物処理業者は、同社所有の処理施設に隣接する谷地に、廃プラスチックや木くず等の建設廃材を大量に不法投棄しました。岐阜県警によるとその規模は52万m3、縦横130m×200m、深さ20mを超えるものと推定されています。 3月19日、岐阜市は記者会見を行い、対策本部の設置など今後の対応策のほか、岐阜市が平成元年以降、繰り返し立入検査や改善指導等を実施してきたものの行政処分は行っていない事実を発表しました。 環境省は、3月19日に職員を現地に派遣するとともに、26日には岐阜市を含む8県市(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、奈良県、名古屋市)を招集し、情報収集についての協力要請を行いました。また、4月2日には、岐阜市に対し、投棄量等調査、環境影響調査、不法投棄の行為者や排出事業者等に対する責任追及、事案の経過や市の対応状況、市が事案を防止・早期対応できなかった理由の検証など同事案に係る当面の対応について助言を行っています。同事案については、今もなお、今日に至る経過の検証等の作業が続けられています。 |
6. 硫酸ピッチの不法投棄 |
(1)不法投棄等の事例 石川県の石油精製業者らが暴力団幹部ブローカーらと共謀して、平成13年12月から、特別管理産業廃棄物である硫酸ピッチ等(ドラム缶561本、フレコンバック88袋)を石川県門前町及び志賀町の山中に埋立て不法投棄しました。加えて同ケースでは、暴力団ブローカーらが、大量の木くず等の産業廃棄物約9千7百m3を県内3か所の山林等に不法投棄しました。平成15年8月までに石油精製業者、暴力団幹部ブローカーら22名(うち15名を逮捕)が検挙されました。 (2)不法投棄等の件数及び量 環境省の調査によると、平成11~15年度上半期の間に確認された硫酸ピッチの不法投棄等は、投棄件数が114件、投棄量がドラム缶(200リットル容量)換算で約3万5千本でした。 これを年度別に見ると、投棄件数では、11年度と12年度を合わせた件数が14件、13年度が38件、14年度が35件、15年度上半期が27件でした。投棄量では、11年度と12年度を合わせた投棄量がドラム缶換算で約3千本、13年度が約5千5百本、14年度が約1万5千本、15年度上半期が約1万2千本と年々増加しています(序-1-22図)。 |
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第2節 不法投棄の影響 |
1. 環境への影響 |
コラム 4 | ラブ・キャナル事件 |
1970年代後半、アメリカ、ニューヨーク州ナイアガラ・フォールズ市のラブ・キャナルにおいて、過去に投棄された廃棄物による地下水や土壌の汚染により周辺住民に健康被害が相次ぐという事件が表面化しました。 この事件の発端は、地元の化学品メーカーが、建設途中で計画が中止された運河ラブ・キャナルを購入し、1942~1952年にかけて、その当時は適法な許可に基づき様々な化学物質(酸、塩化物、メルカプタン、フェノール類、トルエン、農薬、クロロベンゼン、硫化物など)を含む2万1千トンを超える廃棄物をラブ・キャナルに投棄したことにあります。その後、運河は埋め立てられ、市に1ドルで売却された後、跡地には小学校や住宅が建てられましたが、大雨が降るたびに、ラブ・キャナル周辺では悪臭が漂い、汚水が染み出すようになり、周辺住民の間で流産や奇形児、ガン患者が増加しました。1978年の調査では、82種類の有害化学物質が検出され、ニューヨーク州が土地の買い上げを発表するとともに、カーター大統領は買い上げに係る緊急財政支援を承認しました。1980年には、カーター大統領が非常事態宣言を発令しました。本事件により移転を余儀なくされた住民は約900家族に上りました。 1980年、この事件をきっかけに、アメリカでは有害物質により汚染された土地を浄化し、人の健康と環境を保護する目的でスーパーファンド法(包括的環境対処・補償・責任法)が制定されました。 |
2. 経済的損失 |
コラム 5 | 海外への廃棄物の不法輸出 |
平成11年12月、栃木県の産業廃棄物処理業者が、古紙と称してフィリピンに輸出した貨物の中から、廃プラスチック等に混じって注射針、点滴用のチューブ、使用済紙おむつ等が発見され、フィリピン政府がバーゼル条約に基づき我が国に対し30日以内の回収を要請するという事件が発生しました。日本政府は輸出を行った処理業者に対し回収等の措置命令を発出しましたが、期限までに履行されなかったため、国が行政代執行により2千tを超える廃棄物を速やかに日本に持ち帰り処理しました。 国が行政代執行に要した費用は、総額約2億8千万円(回収費用約6千万円、処理費用等約2億2千万円)に上りました。 この事件を契機に、廃棄物の不法輸出の再発を防止し、適正な処理を推進するため、廃棄物の不法輸出防止に係る関係省庁連絡会議が平成12年1月に設置されました。 同会議では、廃棄物の不法輸出の再発防止策をとりまとめるとともに、万が一不法輸出が行われた場合やその疑いがある事案に対し、的確かつ迅速に対処するため、情報交換を行っています。 |
3. 社会的影響 |
(2)廃棄物処理施設の設置の困難化 廃棄物処理に対する国民の不安感、不信感が増大する中、地域住民にとって自己の生活との直接の関連が薄い廃棄物処理施設は、他人にとって不要なものを自分の地域で処理することに対する忌避観念を背景として、立地に際し地域住民とのトラブルが生じ、訴訟が頻発するなど年々設置が困難な状況になっています。廃棄物処理施設の設置が進まなければ、適正な処理体制の確保が困難となり、あふれた廃棄物が不法投棄等に回るという悪循環を引き起こすおそれが生じています(序-2-1図)。 (3)訴訟の続発とコミュニティの破壊 廃棄物処理施設の立地に係るトラブルは、設置事業者と住民間だけの問題でなく、設置事業者や住民、市町村、都道府県それぞれの間にも生じます。住民が廃棄物処理施設の許可権者である都道府県等を相手取り訴訟を起こすケースや、市町村、都道府県の行政間の対立を引き起こすケースもあります。住民とのトラブルを事前に防ぐため設置者に住民同意を取得することを求める行政指導が昭和50年頃から行われるようになりましたが、施設設置の同意に際して金銭授受をめぐる問題も指摘されるようになり、廃棄物処理施設の立地に係るトラブルが地域のコミュニティを破壊する原因にもなっています。 |
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第3節 各主体の取組 |
1. 国の取組 |
コラム 6 | マニフェスト |
産業廃棄物管理票制度いわゆるマニフェスト制度とは、簡単に言うと宅配便に添付される宅配伝票システムの産業廃棄物版と考えてもらうとイメージが容易になるかもしれません。 排出事業者が産業廃棄物を収集運搬業者に委託する際や、収集運搬業者が処分業者に産業廃棄物を渡す際などに、産業廃棄物の種類や数量、排出事業者名、収集運搬業者名、処分業者名を記載した管理票に、収集運搬業者の受領印、運搬終了の確認、処分業者の受領印、処分終了の確認等を収集運搬業者や処分業者が各段階ごとにそれぞれ記載し、その管理票の写しを排出事業者等に回付するというシステムです。 回付された管理票により、いつ(○年○月○日)、誰が(◎◎運送)、誰に(××処理センター)、どのような廃棄物(△△ごみを□t)を渡したか等、産業廃棄物の処理状況を排出事業者が管理することができます。 マニフェスト制度は、排出事業者サイドのチェック体制を強化することにより、産業廃棄物の不法投棄等の不適正処理を未然に防止しようとするもので、平成3年の廃棄物処理法の改正により創設されました(序-3-1図)。 ![]() |
2. 地方公共団体の取組 |
3. その他の主体の取組 |
コラム 7 | ITを活用した廃棄物の不法投棄防止システムの構築~環境ガードシステム~ |
ITを活用した不法投棄防止システムについては、地方公共団体や排出事業者による取組が始められていますが、産業廃棄物処理業界が主導的にアクションを起こした事例として、O社が開発した「環境ガードシステム」があります。 環境ガードシステムは、ICタグやGPS(全地球測位システム)、携帯端末やインターネット等のITを活用して、産業廃棄物の排出事業者における積込みから、収集運搬、処分に至るまでの全行程において産業廃棄物情報を関係者にリアルタイムで配信することにより、産業廃棄物の流れをガラス張りにして、不法投棄が入り込む隙間を無くそうとするものです。 同システムでは、排出事業者からの産業廃棄物の積込み時において、排出事業者、収集運搬業者立ち会いの下、それぞれの登録認証カード、産業廃棄物の容器等に取り付けたICタグ情報を携帯端末に装着した専用装置により読み取り、排出事業者情報、収集運搬業者情報、産業廃棄物の種類、量、積み込み日時等の情報を携帯電話で送信し、システム管理主体である管理センターを介して瞬時に排出事業者、収集運搬業者、中間処理業者、最終処分業者に配信します。収集運搬業者→中間処理業者、中間処理業者→収集運搬業者、収集運搬業者→最終処分業者の間においても同様のことが行われ、産業廃棄物情報の徹底管理が行われます。 この産業廃棄物情報の関係者へのリアルタイムでの発信機能により、排出事業者による産業廃棄物の現状把握が容易となり、紙マニフェストでは困難な中間処理施設等での滞留日数の長期化など不法投棄が疑われる事態を容易に察知することが可能となるほか、中間処理業者や最終処分業者に事前に産業廃棄物情報が通知されることにより排出事業者契約業者と異なる処理業者への持込みや契約と異なる産業廃棄物の持込を防ぐことができます。また、情報の共有化による監視作用が働き抑止効果も見込まれます。なお、マニフェスト伝票の返却管理等も行っており、電子マニフェストとの将来的なリンクも視野に入れ研究を進めているとのことです。 さらに、産業廃棄物の容器等に取り付けられたICタグをGPSシステムで追跡することにより、産業廃棄物の積み込みから処理施設に至るまでの運搬状況をリアルタイムで確認でき、不法投棄を防止することができます。必要に応じて運行管理表の提供も行ってるとのことです。 同システムに加入する産業廃棄物処理業者は、その行動が管理システムにより管理されるとともに同システム加入時に登録認証審査が必要であることから、システム加入の有無が排出事業者が処理業者を選ぶ際の選択基準の一つとなり、産業廃棄物処理業界の優良化につながることも期待されます。 なお、同システムは中立的な立場から運営を行う必要があることから、その管理運営を産業廃棄物処理業界主導で行うのではなく、産業廃棄物処理業界、学識経験者や住民などで構成するNPO法人に委ねています。同システムは平成15年8月にスタートし、同年12月時点において排出事業者2,400社で試験導入を実施しています。福岡県は平成16年2月に「具体的な運用上の課題の検証と同システムの普及促進に向けて課題解決を図る普及促進検討会を設置する」旨発表しています(序-3-6図)。 ![]() |
4. 硫酸ピッチ対策 |
おわりに |