循環型社会白書の刊行に当たって
環境大臣 小池百合子


 我が国の環境を保全するため、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会活動様式から、循環型社会へ移行させる動きは、もはや待ったなしの段階に入っています。ここに循環型社会形成推進基本法に基づき、平成16年版循環型社会白書を公表し、今後の環境施策についてお伝えいたします。
 循環型社会白書では、同時に公表しました「環境白書」からさらに焦点を絞り込み、社会的な関心がきわめて高い廃棄物・リサイクル問題を中心に、循環型社会の形成に向けた様々な取組について記述しています。

 かつて高度経済成長時代を支えてきた経済社会活動様式は、国民生活を物質的に豊かにする一方で、廃棄物の排出量の高水準での推移、最終処分場のひっ迫、不法投棄の増加、廃棄物処理施設に対する住民の不安感・不信感の増大など深刻な社会問題を引き起こしてきました。
 これらの問題を解決し、我が国の社会経済が健全に発展するためにも、循環型社会の形成は喫緊の課題です。我が国では平成12年に、循環型社会形成推進基本法を始めとする関係法令の大幅な整備を行いました。その後も、平成14年に自動車リサイクル法の制定、昨年3月には法律の期限を半年以上前倒しして循環型社会形成推進基本計画を策定するなど、廃棄物の排出抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)を推進するとともに、循環利用の出口である廃棄物の適正処分の確保に努めてまいりました。

 特に、廃棄物の適正処分の確保を妨げる不法投棄の問題については、小泉総理が新年早々に厳しいスケジュールの中、香川県豊島を訪問されたことからも見てとれるように、政府としても最重要課題の一つとして考えています。これまでも廃棄物処理法を逐次改正し、不法投棄行為者や排出者責任等に対する規制の強化を図るなど、政府としても不法投棄対策に力を入れてまいりました。
 しかし、本年3月に、岐阜市椿洞において、52万m3以上にも及ぶと見積もられる大規模不法投棄事案が発覚するなど、不法投棄撲滅への道のりは依然として厳しい状況にあると言わざるを得ません。
 本年の循環型社会白書では、廃棄物・リサイクルをめぐる全般的な状況の記述に加え、循環型社会構築の障害となっている不法投棄をテーマに、その現状や影響、行政、企業、国民の取組を図表や写真を用いてできるだけ分かりやすく紹介することにいたしました。
 廃棄物・リサイクルをめぐる問題はたんに政府のみで回答の出せる問題ではありません。国、地方公共団体、事業者そして国民それぞれが、まずはこれらの問題についての関心を高め、全体として連携しながら、それぞれの立場で実行、取り組むことが必要です。
 この白書が、我が国の廃棄物・リサイクルをめぐる状況を理解し、特に循環型社会形成の障害となっている不法投棄の現状や背景を理解する上でいささかでも手助けとなれば、これに勝る喜びはありません。

平成16年5月