第8節 社会経済のグリーン化の推進に向けた取組

1 経済的措置

(1)経済的助成

 事業者の公害防止施設整備等の一層の促進を図り、公害防止の実効性を確保するため、日本政策投資銀行、中小企業金融公庫等より融資を行います。

 また、都市における緑地の整備等各種の公害防止のための事業助成を引き続き推進するほか、中小企業が円滑に公害防止を実施できるよう、指導・相談、技術開発に係る助成等の充実を図ります。

 ア 環境保全事業のための助成

 (ア)日本政策投資銀行

 環境に配慮しながら経営を行う事業者に対する「環境格付」手法を用いた融資、「環境格付」を受け一定のCO2削減達成を誓約した事業者に対する利子補給、環境ファンド等への出融資を行います。

 また、大気汚染対策や汚水処理対策、廃棄物の発生抑制、再利用、再資源化の総合的な促進による廃棄物・リサイクル対策、低公害車等の普及促進等の公害防止対策に係る融資施策を引き続き講じます。

 (イ)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

 金属鉱業等鉱害対策特別措置法に基づく使用済特定施設に係る鉱害防止事業に必要な資金、鉱害防止事業基金への拠出金及び公害防止事業費事業者負担法による事業者負担金に対する融資を引き続き行います。

 (ウ)政府関係中小企業金融機関

 大気汚染対策や汚水処理対策、廃棄物の発生抑制、再利用、再資源化の総合的な促進による廃棄物・リサイクル対策等の公害防止対策に係る融資施策を引き続き講じます。

 また、中小規模の事業者による環境マネジメントシステムの導入を促すため、低利融資制度を新設し、事業者のエコアクション21認証取得及びそれに伴う環境対策投資の支援を行います。

 (エ)独立行政法人中小企業基盤整備機構

 騒音、ばい煙などの公害問題等により操業に支障を来している中小企業者が集団で工場適地に移転し、施設を整備事業に対して、引き続き融資を行います。また、アスベスト対策を伴うもの、廃棄物・リサイクル対策、低公害車等の普及促進、公害発生物質の適切な排出削減等の公害防止対策に中小企業者が共同で取り組む施設を整備する事業に対して、引き続き融資を行います。さらに、中小企業が、環境・安全管理に関する各種法規制への対応やISOなどの認証の取得を進めていく上で有益なアドバイスを行います。

 イ 税制上の措置等

 平成20年度税制改正において、[1]バイオエタノール混合ガソリン(エタノール3%混合ガソリン(E3)及びETBE7%混合ガソリン)に係る揮発油税及び地方道路税のうちバイオエタノール分について非課税とする措置の創設、[2]既存住宅について一定の省エネ改修を行った場合の住宅ローン減税の特例及び固定資産税の減額措置を創設、[3]自動車税のグリーン化及び低燃費車等の取得に係る自動車取得税の特例措置について軽減対象を重点化した上で延長、[4]平成21年排出ガス規制に適合したディーゼル乗用車に係る自動車取得税の軽減措置を創設、[5]公害防止用設備の特別償却制度について対象設備の見直し・延長等を行います。


(2)経済的インセンティブ

 環境への負荷に経済的負担を課すことを通じ、環境負荷低減へのインセンティブを与える手法については、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出抑制、都市・生活公害対策、廃棄物の抑制などの分野に応じ、その適切な活用について検討します。

 地球温暖化防止のための環境税については、国民に広く負担を求めることになるため、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付け、その効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組の現状などを踏まえて、国民、事業者などの理解と協力を得るように努めながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題です。

2 環境配慮型製品の普及等

(1)グリーン購入の推進

 グリーン購入法に基づく基本方針において、国等の機関が特に重点的に調達を推進すべき物品等として定めている特定調達品目及びその判断の基準については、環境物品等の開発・普及の状況や科学的知見の充実等に応じて適宜追加・見直しを行うこととしています。このため、学識経験者による検討会を設けているほか、平成20年度は、19年度に引き続き、重点的に検討する品目に分科会を設け、品目の更なる拡充及び基準の強化を図ります。

 国等の各機関では、基本方針に即して毎年度各機関の業務の実情に応じて、[1]特定調達品目ごとの具体的な調達目標、[2]各機関が独自に調達する環境物品等の種類及び調達目標、[3]各機関における調達推進体制及び調達方針の対象範囲、などを定めた調達方針を作成・公表し、これに基づいて環境物品等の優先的調達を推進するほか、年度終了後にはその調達実績の概要を公表します。


(2)環境配慮契約(グリーン契約)

 国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号。以下「環境配慮契約法」という)に基づいて平成19年12月7日に閣議決定された基本方針では、電力、自動車、ESCO(省エネルギー改修)、建築の4分野における契約について、具体的な環境配慮の仕方や手続について定めていますが、適宜追加・見直しを行っていきます。国及び独立行政法人等は、この基本方針に従って環境配慮契約に取り組む義務があり、機関ごとに契約の締結実績を公表することになります。


(3)環境ラベリング

 購入者が、製品やサービスに関連する適切な環境情報を入手できるよう、環境ラベリングその他の手法による情報提供を進めるため、国際的な動向を踏まえながら、環境ラベル制度の相互認証確立に向けた調査及び検討を行います。また、グリーン購入の取組を促進する民間団体による情報提供の取組を促進します。さらに、タイプII環境ラベルや民間団体が行う情報提供の状況を引き続き整理・分析して提供するとともに、適切な情報提供体制の在り方について検討します。また、タイプIII環境ラベルであるエコリーフ環境ラベルについて一層の普及促進を図ります。


(4)ライフサイクルアセスメント(LCA)

 資源採取から使用、廃棄に至るライフサイクル全体の環境負荷について、製品相互間の比較評価をするため開発したライフサイクルアセスメント(LCA)手法について、その手法の適用に関する課題の整理を進めながら、製品やサービスに起因する環境負荷をライフサイクル的視点から定量化し、その結果を分かりやすく消費者に提供する「商品環境情報提供システム」を運用します。また、消費者を対象に、LCA手法について配慮された商品の普及・啓発を推進します。

 LCA手法を活用して、企業における環境配慮設計の導入を支援し、環境配慮型製品(エコプロダクツ)の開発・市場拡大を促進します。


(5)標準化の推進

 日本工業標準調査会(JISC)は、環境配慮製品の市場の創出・拡大を図るため、3R・環境配慮設計・地球温暖化対策・有害物質対策・環境汚染対策に資する規格の制定・改正に取り組むほか、環境関連法令や契約等の中で環境JISがどのように活用されているかについて調査・検討を継続して行い、環境JIS制定・改正・活用の促進に役立てます。


(6)環境適合設計

 製品の設計段階において、製造から廃棄に至るまでを見通して環境負荷の低減を図るとともに、長寿命化なども視野に置いた対応を図ろうとする環境適合設計について、ISO/TR 14062を参考に日本企業のこれまでの経験を生かしながら、ISO及び電気分野の標準規格を策定する国際的な団体であるIECにおける検討に参加し、貢献するとともに、その幅広い普及を図っていきます。

3 事業活動への環境配慮の組込みの推進

(1)環境マネジメントシステム

 環境マネジメントシステムの導入を幅広い事業者に広げていくため、更なる普及促進に努めます。ISO14001の認証制度の信頼性を維持・向上するため、認定機関、認証機関等が従うべきガイドラインを作成するなどの新たな取組を講じ、ISO14001の一層の普及に努めます。また、中小規模の事業者向けに策定された環境マネジメントシステムである「エコアクション21」の更なる内容の充実に向けた検討を行います。


(2)環境会計

 総合的な環境会計ガイドライン等を通じて、環境会計手法の一層の普及促進を図るとともに、発展途上にある環境会計の手法確立に向けて、国内外の研究成果や先進的な実務動向を踏まえた調査を進めます。環境管理会計の一手法であるマテリアルフローコスト会計を普及・促進するために、事業者団体等におけるセミナー、シンポジウム、研修会の開催、導入実証事業と普及指導を担う人材育成のためにインターンシップ事業を支援します。また、マテリアルフローコスト会計の国際標準化については、規格化の作業を行うWGが設置され、3年後を目途に国際規格発行に向けた作業に着手します。


(3)環境報告書

 環境報告の在り方を示すために改訂した環境報告ガイドラインの普及に努めます。

 さらに、様々な事業者による環境報告書の作成・公表を促進するため、表彰制度やデータベースの提供などを通じた取組支援を引き続き行っていきます。

 また、環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(平成16年法律第77号)に基づいて、環境報告書の作成・公表の普及促進と事業者・国民による環境報告書の利用促進のための施策を推進します。さらに、環境報告書の普及促進や質の向上を図るため、環境報告書の自己評価や第三者審査などの自主的な取組の推進を図ります。


(4)公害防止体制の促進

 平成19年3月に示した「公害防止ガイドライン」を踏まえ、多くの事業者が公害防止に関する自主的な取組を更に推進するよう、中小企業も対象にして引き続き同ガイドラインの普及啓発を行うとともに、ガイドラインに沿った産業界の取組状況をフォローアップしていきます。また、平成20年4月に取りまとめられた「効果的な公害防止取組促進方策検討会報告」を踏まえ、公害防止を促進するための方策等を検討、実施します。


(5)温室効果ガスの排出量等の定量化等に関する標準化

 事業活動における温室効果ガスの排出量・除去量の定量化等の適正化のため、温室効果ガスの排出量・除去量の定量化等に関する国際規格(ISO14064-1~3)を基にしたJISを制定します。


(6)環境負荷低減国民運動支援ビジネスの推進

 「1人1日1kg」の温室効果ガス削減をモットーとした地域ぐるみの国民運動を促進するため、企業・個人に向けて温室効果ガスの排出削減につながる取組への助言や排出削減の普及啓発などを行うビジネスに対して支援します。

4 環境に配慮した投融資の促進

 個人金融資産の有効な活用という視点も踏まえ、環境に配慮した事業活動を評価する投融資の普及促進を図ります。そのため、企業等による金融の手法を活用した環境保全の推進に関する調査研究や、以下に掲げる市場への環境配慮の織り込みを促進するための事業を実施するほか、金融機関も含めた事業者への情報提供や普及啓発を行っていきます。


(1)市場への環境配慮の織り込み

 国民の個人資産を地域の環境保全事業等に活用するコミュニティ・ファンドの取組を促進するため、コミュニティ・ファンドが投融資する事業に対して、事業関係者を含めて環境面等からの評価を実施し、その結果を事業の見直しに反映させる取組を支援します。

 日本政策投資銀行による全国的な取組に加え、温室効果ガス排出抑制のための投資に対する、地域における低利融資の取組について支援します。

 さらに、民間主体による環境投資を促進していくため、環境報告書や環境ラベル等の普及促進による環境に配慮した事業活動や商品等の情報提供の拡大などにより、環境情報の利用を促進し、市場の中で環境配慮の取組が適切に考慮されるように努めます。


(2)環境投資の促進のための環境整備

 環境投資の促進のための環境整備を図るため、企業における環境に配慮した事業活動の促進、環境ビジネスの振興など環境投資の促進と関連する社会資本の整備、グリーン購入など需要面からの環境投資の促進、環境配慮型融資や社会的責任投資(SRI)等の普及促進など、環境投資のための資金調達の円滑化が図られるための枠組みづくりに引き続き取り組みます。

5 その他環境に配慮した事業活動の促進

 地域発での環境と経済の好循環の創出を図るモデル事業や、新たな温暖化対策ビジネスの起業支援等による環境ビジネスの育成・振興、環境に配慮した事業活動に積極的に取り組む企業が社会や市場から高く評価されるような条件整備、環境技術実証モデル事業等による環境技術の普及及び商業化の促進並びに環境技術開発の促進などの取組を進めます。

 また、企業がこれまで製品としていたものをサービス化して提供する「グリーン・サービサイジング事業」の実証事業を実施し、その展開を支援します。

 また、社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)の対象に都市開発分野の取組を加え、民間事業者による緑の保全・創出活動を支援します。

6 社会経済の主要な分野での取組

(1)物の生産・販売・消費・廃棄

 ア 全般的な取組

 事業活動への環境配慮の織り込みを深めるため、環境報告ガイドラインの普及や、環境マネジメントシステムや環境会計の導入、環境パフォーマンス評価、LCAの実施について検討を行うなど、引き続き調査研究、情報提供を行います。

 環境保全型製品の普及促進については、製品のライフサイクルの観点を盛り込んだエコマーク制度について、製品の環境情報を消費者に提供することも含め、引き続き推進します。

 また、ISOにおける標準化等国際的動向を踏まえつつ、企業の社会的責任(CSR)などについて調査研究を行い、環境配慮の取組を推進する企業が高く評価される社会システムの検討を行います。

 廃棄物・リサイクル対策については、廃棄物の最終処分量減少や循環利用量増加など着実に対策は進んでいますが、引き続き廃棄物の発生抑制、適正なリサイクル及び適正処理を進めます。

 イ 農林水産業における取組

 環境と調和のとれた農業生産活動を推進するため、農業者が環境保全に向けて最低限取り組むべき農業環境規範の普及・定着を引き続き推進します。さらに、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)に基づき、土づくりと化学肥料・化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む農業者(エコファーマー)の認定促進や、共同利用機械・施設等の整備に関する支援を引き続き行います。また、地域でまとまって化学肥料・化学合成農薬の使用を大幅に低減する等の先進的な営農活動への支援に取り組むとともに、有機農業の推進に関する基本的な方針に即し、技術の研究開発、成果の普及や消費者に対する普及啓発、有機農業の推進体制の整備等を進めます。

 畜産業において発生する家畜排せつ物からの環境負荷を低減するため、たい肥化施設等の施設整備を推進し、家畜排せつ物法に基づく適正な管理を確保するとともに、たい肥化による農業利用やエネルギー利用等の一層の推進を図ります。

 森林・林業においては、育成複層林施業等の森林整備を促進するとともに、計画的な保安林の指定の推進及び治山事業等による機能が低下した保安林の保全対策、多様な森林づくりのための適正な維持管理に努めるほか、関係省庁の連携の下、木材利用の促進を図ります。

 水産業においては、持続的な養殖生産等を図るため、適地での種苗放流による効率的な増殖の取組を支援するとともに、漁業管理制度の的確な運用に加え、漁業者による水産資源の自主的な管理や資源回復計画に基づく取組を支援します。さらに、沿岸域の藻場干潟の造成等生育環境の改善を実施します。また、持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号)に基づく漁協等による養殖漁場の漁場改善計画の作成を推進するとともに、循環型養殖漁場利用の技術開発等を支援します。

 ウ 製造業等における取組

 食品産業に対しては、環境に係る情報の提供、自主行動計画の策定及び円滑な実施を促すための普及啓発を行います。また、容器包装リサイクル対策を行うとともに、改正食品リサイクル法制度の普及啓発、食品廃棄物を含むバイオマスの利活用推進を図ろうとする地域に対する食品リサイクルシステムの構築及び食品リサイクル施設の導入の促進を図ります。

 建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)について、地球温暖化対策として、ライフサイクルCO2に関する評価の充実等、評価ツールの一層の充実を検討するとともに、まちづくり、戸建住宅等の評価ツールの普及をさらに推進します。


(2)エネルギーの供給と消費

 環境への負荷の少ない新エネルギーの導入拡大を図るとともに、2010年度における新エネルギーの導入目標(原油換算で1,910万kl)を達成するため、太陽光や風力、バイオマス等新エネルギーの技術開発・導入促進及び環境整備を積極的に推進します。特にバイオマスエネルギーの導入加速化の観点から、大都市圏や沖縄県宮古島における輸送用バイオ燃料に係る大規模な実証等を通し、実用化に向けた取組を行います。また、燃料電池及び水素エネルギー利用に関しては、将来の水素社会の実現に向け、研究開発体制の強化、異分野先端企業間の連携促進、世界初の定置用燃料電池市場立ち上げに向けた大規模実証等を行っていきます。さらに、電気事業者に新エネルギー等から発電される電気を一定量以上利用することを義務付ける電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(平成14年法律第62号)の着実な運用等を通じて、電力分野における新エネルギーの導入拡大に努めます。

 また、エネルギー供給安定性に優れ、発電過程で二酸化炭素を排出しない原子力発電を基幹電源に位置付けて、ウラン資源の有効利用を図る核燃料サイクルを含め、安全の確保を大前提に、国民の理解を得つつ、着実に推進します。引き続き安全対策・防災対策の充実に努めるとともに、「原子力立国計画」の実現を図るため、次世代軽水炉の技術開発を推進するとともに、高速増殖炉サイクルの実証・実用化に向けた研究開発及び核燃料サイクルに係る技術開発を着実に推進します。また、海外ウラン探鉱、大学・大学院等における原子力人材の育成、現場技能者の育成・技能継承を支援します。国際面では、原子力の安全で平和的な利用拡大を推進するため、アジアを始めとする原子力発電導入を検討している国への基盤整備支援や、世界の多様なニーズに対応した原子力技術の国際協力の下での技術開発等の取組を推進します。さらに、原子力施設と立地地域との共生を図る地域振興に向けた継続的な支援を行うとともに、原子力発電及び核燃料サイクルの推進に伴って発生する放射性廃棄物への対策を着実に進めます。

 省エネルギー対策については引き続き積極的に推進します。現在、我が国のエネルギー効率は世界最高水準にありますが、一方で業務・家庭部門におけるエネルギー消費が石油ショック以降大きな伸びを示しています。そこで、これらの分野を中心として、省エネルギー対策を抜本的に強化します。トップランナー方式による家電等の省エネルギー性能向上等の推進とともに、経済産業省と環境省の協力の下、家電メーカー、小売事業者及び消費者団体など関係者が連携しながら国民運動として、省エネ家電普及促進フォーラムによる省エネ家電の普及促進、エネルギー消費の伸びが著しい民生部門の省エネルギー対策を確実に進める上で大きな役割を果たし得る高効率給湯器の導入等の省エネルギー関連機器・システム等の導入普及支援及び技術開発の促進等の施策を総合的に推進します。

 また、更なる二酸化炭素排出量削減のための対策が必要であることを踏まえ、電力等の燃料転換等を促進するため、老朽石炭火力発電所の高効率天然ガスコンバインド―サイクル発電への転換を実施します。さらに、環境負荷が小さく安定供給に優れた天然ガス利用の促進に向けて、分散型エネルギーシステムの普及を促進、石炭等を燃料とする産業用ボイラー等における天然ガスへの燃料転換等を支援する施策を実施します。また、未利用エネルギー及び排熱等を活用した効率的なエネルギー面的の利用を促進します。


(3)運輸・交通

 地方公共団体や民間事業者等が低公害車を導入する際の補助制度、自動車取得税の軽減措置や自動車税のグリーン化の税制上の特例措置、政府系金融機関を通じた融資制度等を通じて低公害車のさらなる普及促進を図ります。また、地方運輸局単位に官民で構成したエコ・トラック推進協議会による民間活力を通じた低公害トラックの導入促進等を図ります。

 また、次世代低公害車の本命と目されている燃料電池自動車について、世界に先駆けた早期実用化を図るため、燃料供給から自動車走行まで一貫した大規模な公道走行実証試験を首都圏等で実施します。

 さらに、ディーゼルエンジンの高い熱効率を維持したまま排出ガスの低減を図ることを目的とした予混合圧縮燃焼エンジン技術、革新的後処理システム技術の開発を引き続き進めるとともに、現行の大型ディーゼル車に代替する次世代低公害車について、産学官の適切な連携により、開発・試作したジメチルエーテル自動車や次世代ハイブリッド自動車等の公道走行試験等を実施します。また、燃料の種類によらず、排出ガス性能基準により低公害性を評価する低排出ガス車の認定制度を活用し、低公害車の更なる普及促進を図ります。

 また、交通流対策としては、高度道路交通システムITS)の推進、信号機や交通管制システムの高度化等の交通安全施設等の整備、3メディア対応型VICS車載機の普及促進、公共車両優先システムPTPS)等の整備による公共交通機関の利用促進等により、交通渋滞の緩和を図り、環境負荷の低減に努めます。

 「総合物流施策大綱(2005-2009)」の基本的方向性の一つに「グリーン物流」など効率的で環境にやさしい物流の実現が示されており、引き続き、荷主企業と輸配送を請け負う物流事業者の連携を強化し、地球温暖化対策に係る取組を拡大することで、物流体系全体のグリーン化を引き続き推進します。

 このため、「グリーン物流パートナーシップ会議」を通じ、モーダルシフトやトラック輸送の効率化等を荷主と物流事業者が連携して行う事業の支援、優良事業等の普及促進を図るとともに、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律を活用して、物流拠点の集約化や共同輸配送等による合理化に対して支援を行い、効率的で環境負荷の小さい物流の実現を引き続き推進します。

 鉄道においては、北九州・福岡間の輸送力増強等に対する支援を引き続き実施します。また、鉄道貨物輸送による環境負荷低減に積極的に取り組んでいる企業や商品を認定する「エコレールマーク」制度の普及・拡大を進めます。

 都市鉄道新線の建設、在来幹線鉄道の高速化等の整備、次世代型路面電車システム(LRT)の整備、駅のバリアフリー化、オムニバスタウン整備、ノンステップバスの導入、鉄道・バス相互の共通ICカードシステムの整備等に対する支援等を通じて環境負荷の小さい公共交通機関の利用促進を図ります。

 また、「公共交通利用推進等マネジメント協議会」を通じた、企業等における低公害バス等を活用した通勤交通の公共交通への利用転換やカーシェアリングの推進など、交通サービスの需要サイドによる取組を促進していきます。

 さらに、公共交通機関の利用を促進し、自家用自動車に過度に依存しないなど、環境的に持続可能な交通(EST)について、モデル事業の成果を踏まえ、関係省庁及び地方公共団体等と連携しながら全国規模での普及展開を推進していきます。


(4)情報通信の活用

 2010年までにテレワーカーを就業者人口の2割とする目標の実現に向けて、平成19年5月にテレワーク人口倍増アクションプランを策定し、政府一体となってテレワークの普及を推進しており、平成19年度に引き続きテレワークの普及推進のための実証実験やテレワーク環境整備税制、セミナー等の普及啓発を実施し、アクションプランの着実・迅速な実施に取り組みます。

 また、地球温暖化に与える影響をプラス面、マイナス面の双方から具体化するとともに、国際的なレベルでの地球温暖化問題への対応に資するICT政策について検討する「地球温暖化問題への対応に向けたICT政策に関する研究会」を引き続き開催し、平成20年4月を目途に本調査研究会の検討結果を取りまとめ、ICTと地球温暖化問題に関する国際的な連携への貢献を推進します。



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