第3節 閉鎖性水域における水環境の保全

1 湖沼

 湖沼については、富栄養化対策として、水質汚濁防止法に基づき、窒素及びりんに係る排水規制を実施しており、窒素規制対象湖沼は277、りん規制対象湖沼は1,329です。また、湖沼の窒素及びりんに係る環境基準については、琵琶湖等合計109水域(105湖沼)について類型指定が行われています。

 また、水質汚濁防止法の規制のみでは水質保全が十分でない湖沼については、湖沼水質保全特別措置法(昭和59年法律第61号)によって、環境基準の確保の緊要な湖沼を指定(平成19年12月、八郎湖を新たに指定)して、湖沼水質保全計画を策定し(図3-3-1、図3-3-2)、下水道整備、河川浄化等の水質の保全に資する事業、各種汚濁源に対する規制等の措置等を推進しています。また、流出水対策を推進するための流出水対策推進計画の策定手法や水質浄化の観点からの湖辺植生の適正な維持管理手法の検討等を実施しました。さらに、琵琶湖等湖沼の汚濁機構解明のための調査を実施しました。


図3-3-1 湖沼水質保全特別措置法に基づく11指定湖沼位置図


図3-3-2 湖沼水質保全計画策定状況一覧(平成20年3月現在)

2 閉鎖性海域

(1)富栄養化対策

 閉鎖性が高く富栄養化のおそれのある海域に適用される窒素及びりんに係る排水基準については、現在、88の海域とこれに流入する公共用水域に排水する特定事業場に適用されています。また、海域における全窒素及び全りんの環境基準については、上記の閉鎖性海域を対象に環境基準類型を当てはめる作業が国・都道府県で行われており、54海域が指定されています。

 また、平成17年の下水道法(昭和33年法律第79号)一部改正を受け、閉鎖性水域に係る流域別下水道整備総合計画に下水道終末処理場からの放流水に含まれる窒素・りんの削減目標量及び削減方法を定める見直しを進めるとともに、これらに基づく下水道の整備を推進しました。


(2)水質総量規制制度

 広域的な閉鎖性海域のうち、人口、産業等が集中し排水の濃度規制のみでは環境基準を達成維持することが困難な地域(指定水域)である東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海を対象に、COD、窒素含有量及びりん含有量を削減対象の指定項目として、水質総量規制を実施しています。

 具体的には、地域の実情に応じ、下水道、浄化槽、農業集落排水施設、コミュニティ・プラントなどの整備等による生活排水対策、工場等の総量規制基準の遵守指導による産業排水対策、合流式下水道の改善等によるその他の汚濁発生源に対する諸対策を引き続き推進しました。

 その結果、指定水域の水質は改善傾向にありますが、COD、全窒素・全りんの環境基準達成率は十分な状況になく(ただし、瀬戸内海における全窒素・全りんの環境基準はおおむね達成)、富栄養化に伴う問題が依然として発生しています。(図3-3-3)。


図3-3-3 三海域の環境基準達成率の推移(全窒素・全りん)

 そこで、閉鎖性水域における水環境の一層の改善を推進するために、平成18年11月、21年度を目標年度とした第6次総量削減基本方針を国において策定し、平成19年6月には、当該基本方針に基づき関係都府県により総量削減計画が策定されました。現在は当該計画に基づき、汚濁負荷削減目標量を達成すべく各種施策が推進されています。

 また、今後の閉鎖性海域が目指すべき水環境の目標とその達成に向けたロードマップを明らかにする閉鎖性海域中長期ビジョンの策定に向けた検討を開始しました。


(3)瀬戸内海の環境保全

 瀬戸内海においては、瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和48年法律第110号)及び瀬戸内海環境保全基本計画等により、総合的な施策が進められてきています。瀬戸内海沿岸の関係11府県は、自然海浜を保全するため、自然海浜保全地区条例等を制定しており、平成19年12月末までに91地区の自然海浜保全地区を指定しています。また、瀬戸内海における埋立て等については、海域環境、自然環境及び水産資源保全上の見地等から特別な配慮がされることとしており、同法施行以降19年11月1日までの間に埋立ての免許又は承認がなされた公有水面は、約4,810件、約12,950ha(うち18年11月2日以降の1年間に21件、37.8ha)になります。


(4)有明海及び八代海の環境の保全及び改善

 有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律(平成14年法律第120号)に基づき環境省に設置された「有明海・八代海総合調査評価委員会」からの提言(平成18年12月)を受けて、貧酸素水塊や魚貝類の環境影響評価に関する調査等を充実させるとともに、調査機関間の連携・協力の促進に係る取組を新たに実施しました。

3 閉鎖性水域の浄化対策

 水質悪化が著しい湖沼においては、底泥からの栄養塩類の溶出等を抑制するため、底泥しゅんせつを実施するとともに、湖沼に流入する汚濁負荷の削減を図るため、流入河川において直接浄化施設、農業用用排水路等において水質浄化施設の整備を実施しました。

 また、漁港内外の静穏水域の浄化対策として、風力等自然エネルギーを活用した水域環境改善手法の検討を行いました。

 閉鎖性が強くヘドロの堆積した海域の環境改善を目的として、海域環境創造・自然再生事業(覆砂干潟藻場等の整備)等を瀬戸内海等の3海域及び堺泉北港等12港において実施しました。また、水産基盤整備事業により、三重県英虞湾(あごわん)の漁場環境の改善を図るためしゅんせつを行いました。

4 大都市圏の「海の再生」

 都市再生プロジェクト(第3次決定)「海の再生」の現実に向けて、東京湾、大阪湾及び伊勢湾においてそれぞれの再生行動計画に基づき、関係機関と連携のもと、陸域からの汚濁負荷の削減、海域における環境改善、環境モニタリング等の各種施策を関係機関と連携して推進しました。さらに、広島湾においても「全国海の再生プロジェクト」として、三大湾と同様に行動計画に基づき、各種施策を推進しました。



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