第2節 環境影響評価等


1 戦略的環境アセスメントの導入

環境保全上の支障を未然に防止するため、環境基本法(平成5年法律第91号)第19条は、国は環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定・実施に当たっては、環境保全について配慮しなければならないものと規定しています。このため、個別の事業の計画・実施に枠組みを与えることとなる計画(上位計画)や政策における環境配慮の具体的なあり方について検討を進めました。
個別の事業の計画・実施に枠組みを与える計画(上位計画)及び施策の策定・実施に環境配慮を組み込むための戦略的環境アセスメントについては、EUによる計画案の環境評価に関する指令に基づき、多くのEU加盟国で制度化されるなど、諸外国においては戦略的環境アセスメントの制度化が進展しています。
第3次環境基本計画に基づき、学識経験者による戦略的環境アセスメント総合研究会において、上位計画のうち位置・規模等の検討段階のものについて、事業に先立つ早い段階で、著しい環境影響を把握し、複数案の環境的側面の比較評価及び環境配慮事項の整理を行い、計画の検討に反映させることにより、事業の実施による重大な環境影響の回避又は低減を図るための共通的な手続・評価方法等を示す戦略的環境アセスメント導入ガイドラインを取りまとめました。
道路、河川、空港、港湾等の公共事業についても、その計画プロセスにおける情報公開や市民参加のガイドライン等が提示されるなど、関連する取組が進展しています。

2 環境影響評価の実施


(1)環境影響評価法に基づく環境影響評価
環境影響評価法(平成9年法律第81号)は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています(図7-2-1)。同法に基づき、平成19年3月末までに計169件の事業について手続が実施されており、そのうち、18年度においては、新たに8件の手続が開始され、また、13件の手続きが完了し環境配慮の徹底が図られました(表7-2-1)。

図7-2-1環境影響評価法の手続の流れ


表7-2-1環境影響評価法に基づき実施された環境影響評価の施行状況


(2)環境影響評価の適切な運用への取組
環境影響評価に係る技術手法の向上、改善のための検討を行うとともに、環境影響評価における住民等の意見の収集を効果的かつ効率的に行う手法の検討を行いました。また、平成18年に改正された事業の種類ごとの主務省令について、事業者及び自治体への周知を図るなど、確実な運用の実施に努めました。
さらに、国・地方公共団体等の環境影響評価事例や制度及び技術の基礎的知識の提供による環境影響評価の質及び信頼性の確保を目的として、これらの情報等を集積し、インターネット等を活用した国民や地方公共団体等への情報支援体制の整備を進めました。

(3)地方公共団体における取組
平成18年度末現在、ほぼすべての都道府県及び政令指定都市において環境影響評価条例が公布・施行され、さらに知事意見を述べる際の審査会等第三者機関への諮問や事業者への事後調査の義務付けを導入しています。
対象事業については環境影響評価法対象の規模要件を下回るものに加え、廃棄物処理施設やスポーツ・レクリエーション施設、畜産施設、土石の採取、複合事業なども対象としており、さらに環境基本法に規定されている「環境」よりも広い範囲の「環境」の保全を目的とし、埋蔵文化財、地域コミュニティの維持、安全などについても評価対象にするなど、地域の独自性が発揮されています。
また、東京都、埼玉県、広島市、京都市では戦略的環境アセスメントが複数の事例に適用されています。

(4)個別法等に基づく環境保全上の配慮
港湾法(昭和25年法律第218号)、公有水面埋立法(大正10年法律第57号)、都市計画法(昭和43年法律第100号)、総合保養地域整備法(昭和62年法律第71号)等に基づいて行われる事業の認可、計画等の策定等に際し、環境保全の見地から検討を行いました。


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