第4節 循環型社会の形成に向けた各主体の取組


1 国民、民間団体等の取組事例

現在、様々な取組が進められていますが、ここでは、NPO持続可能な社会を作る元気ネット(元気なごみ仲間の会)が主催する「市民が創る環境のまち『元気大賞』」、並びに、3R推進協議会が主催する「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」において表彰された、民間団体レベルにおける先進的な取組の例をご紹介します。

コラム 割り箸リサイクル

国産材の割り箸の多くは、丸太から柱や板をとった残りの端材を使って作られており、木材の特性を適切に活かしつつ無駄なく利用され、割り箸によって、1本の木は余すところなく利用されています。
その割り箸をさらに再利用しようという動きが、全国各地で広がってきました。王子製紙グループでは、平成4年度より使用済み割り箸の回収を始め、平成17年度には約487トンもの割り箸が紙の原料として再利用されています。
また、「全国割り箸サミット」などの割り箸リサイクル運動も広がっています。これらの活動によって、月間で40~50トンもの割り箸がリサイクルされ、活動に携わる商店、旅館、飲食店、学校、宗教団体、町内会、NPO、個人などの総数は、全国で数千になると推定されます。

コラム写真:割り箸リサイクル



(1)市民が創る環境のまち「元気大賞」
元気なごみ仲間の会は、平成13年度から「市民が創る環境のまち『元気大賞』」を創設し、全国各地域で先進な取組を行っている団体を表彰しています。
平成18年度に表彰された先進的な取組の例は以下のとおりです。
1)「与論町地域女性団体連絡協議会」の『楽しみながらエコライフ』
「花いっぱい運動」、靴洗いブラシを添えて、町内全ての新一年生へ石鹸をプレゼントしている「使用済み天ぷら油で石鹸づくり」、「家庭排水による水質汚染防止」、町内のスーパーや商店に「マイバッグ運動推進協力店」の明示と啓発活動を行っている「マイバッグ運動」の4つを大きな柱として毎日の生活の中で、それぞれの暮らしにあったやり方でエコライフを実践している。
2)「エコロジー・エネルギー研究会」の『陽の当たる坂のまち小諸』
直径80cmのパラボラ型反射鏡ソーラークッカーでホットケーキを焼き、その間太陽光パネルでバイオリンの演奏、風力発電機の設置や燃料電池を積み込んだ自転車エコタクシーが走るなど、子どもの五感に訴える出前事業「自然エネルギー教室(エコエネ教室)」を市内の小学校で開催。
また、自然エネルギー・フォーラム「エコ水車のまちづくり」を開催し、自然特性、地域特性を活かしたエコタウン提案の結果、市内にある小中学校すべての屋根に10Kwの太陽光発電パネルが設置された。
3)「あだたら環境農業研究会」の『あだたら野菜クルプロジェクト』
「地産地消」とその土地でとれた物をその土地にあった方法で料理する「土産土法」を合い言葉に、岳温泉15軒の旅館から出る食品残さを原料として、3か月以上をかけ熟成有機肥料を製造。それを旅館組合が買い上げ、地元の有機農業研究会のメンバーに提供し、生産された野菜が再び岳温泉の旅館に納入され、「一旬一品」料理として出され、地域内循環が実施されている。
その他、地元小学校への堆肥の寄付、生産現場研修会、講演活動など、循環型農業形成のための様々な活動を行っている。
4)「京都市ごみ減量推進会議」の『市民、事業者、行政のパートナーシップによるごみ減量への取組み』
市内の学校給食用牛乳パックを学校現場で回収し、それを原料としたトイレットペーパーを再び学校現場で使用する再生紙利活用の推進、醸造メーカーとの協働による独自のリユースびん流通システム(京都モデル)の事業化や使用済みの天ぷら油の回収を行い、回収された油をディーゼル燃料に精製し、市の全ごみ回収車(220台)や市バス(97台)に使用して化石燃料の使用量削減につなげている。

(2)リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰
3R推進協議会では、毎年10月にリデュース・リユース・リサイクル(3R)推進月間に、関係府省連携の下、3R推進功労者等表彰式を開催し、3Rの推進に貢献している個人、グループ、学校、事業所等を表彰しています。ここでは、平成18年度大臣賞を受賞した民間団体等の取組事例を紹介します。
1)栃木県立宇都宮工業高等学校
<平成18年度内閣総理大臣賞受賞>
積極的に環境教育を実践し「グリーンエンジニア」(人に優しく環境課題に対する識見と行動力を備えた工業技術者)となる生徒を育成する学校づくりに取り組む。
全国の公立学校で初めて「ISO14001」の認証を取得し、学校全体の可燃ごみの減量化を実践。アルミ缶等の地道な回収活動を実施し、所定の量を貯めて車いす等に交換し病院や福祉施設に寄贈するなど福祉活動を展開。また、間伐材を自作の炭窯で木炭に加工し、河川浄化作業や山林の土壌改良材として利用するなど環境保全活動を実施。これらの活動を通じて、3Rを始めとする様々な環境課題解決に向けて活躍していける生徒を育成している。
2)京都市ごみ減量推進会議
<平成18年度国務大臣内閣府特命担当大臣賞受賞>
市民・事業者・行政の三者がお互いの協力と連携により、様々な取組を実施。市内の学校給食用牛乳パックを学校現場で回収し、それを原料としたトイレットペーパーを再び学校現場で使用する再生紙利活用の推進、醸造メーカーとの協働による独自のリユースびん流通システム(京都モデル)の事業化や使用済みの天ぷら油の回収を行い、回収された油をディーゼル燃料に精製し、市の全ごみ回収車(220台)や市バス(97台)に使用して化石燃料の使用量削減につなげている。
3)川崎・ごみを考える市民連絡会
<平成18年度国務大臣内閣府特命担当大臣賞受賞>
川崎市内のごみに関わる市民団体、生活協同組合など20団体及び個人から構成され、市民自らが動くことを重視したごみ減量に向けた市民プランを策定し、全国のごみ減量・リサイクル市民団体の活動活性化に貢献(「川崎発ごみを出さない燃やさない市民プラン」(1999年)、「生ごみ・落ち葉堆肥化のすすめ」(2000年)、「地域が元気になる!生ごみリサイクル市民プラン」(2005年))。
また、家庭から出る生ごみを農家の畑で堆肥化し、それを用いて栽培された野菜を購入する仕組みを構築し現在もルートを広げながら継続している。
4)4万人のごみゼロプロジェクト
<平成18年度環境大臣賞受賞>
サッカーJ1アルビレックスホームゲームでのごみの減量を目指し、使い捨て紙コップの使用から洗って使う「リユースカップ」への切り替えを進めるとともに、分別回収の徹底、ごみの持ち帰りの呼びかけなどの取組を実施。これらの活動を新潟県内各地で行われる祭り等にも広げ、環境に優しいイベントづくりを展開。新潟スタジアムの4万人から新潟県民全体250万人のごみゼロプロジェクトを目指して活動を継続している。

コラム 地域での先進的な取組3) ~北海道滝川市 滝川消費者協会~

滝川市では、平成15年からごみ処理システムを大きく変更しました。ごみの処理手数料を「定額制」から「従量制」に改めるとともに、分別種類を従来の3種類から7種類に変更しました。さらに、広域によるリサイクル施設を整備し、生ごみはバイオガス化して電気や熱として利用し、さらに残さ物は肥料として利用するなど、可能な限りごみを資源として活用することに努め、これらの取組の結果、新制度移行後、一般廃棄物の排出量は約4割、埋立処分量も約7割削減され、現在も、リバウンドも無く、円滑に推移しています。
滝川消費者協会は約10年前から環境問題に取り組み、その取組の一つとして、不要となった傘の生地をリフォームしたマイバッグやリュックサック、エプロンなどの制作を行っています。傘から丁寧に外された生地は、縫い合わせをほどき単体の生地にした後、廃油石鹸で汚れを落とし、他の傘の生地との色合わせを行うことにより、様々なバリエーションが生まれ、世界でたった一つだけの作品が完成します。特に、冬場には各家庭でそれぞれが漬け物を漬ける家庭も多いことから、漬け物用の野菜を洗う際に、防水性の高いエプロンは大変重宝しているとのことです。

コラム写真左:エプロン


コラム写真右:リュックサック



2 産業界の取組事例

我が国の産業界は、日本経団連の呼びかけによって、リサイクルの推進や廃棄物の排出抑制に取り組んでいます。平成9年に環境自主行動計画を策定しており、その際に、併せて廃棄物対策に関する自主行動計画を作成しています。当初、自主行動計画の廃棄物対策分野には35業種が参加し、それぞれの業界ごとにリサイクル率、最終処分量などの数値目標並びにその達成のための対策を明らかにしています。さらに、業界ごとの取組の推進状況を毎年定期的にフォローアップすることで、継続的かつより一層積極的に廃棄物対策に取り組んでいることが大きな特徴です。
平成11年に入り、最終処分場のひっ迫やダイオキシン問題等を契機とする国民の廃棄物問題への意識が高まる中、産業界としても循環型社会の推進に向けた取組を一層強化することとし、同年12月には産業界として平成22年度における産業廃棄物最終処分量の目標量を1,500万トン(平成2年度比25%)に、また平成17年度の中間目標を2,100万トン(平成2年度比35%)とする削減目標を公表しました。平成19年3月に、31業種が参加した平成17年度の産業廃棄物最終処分量削減目標の達成状況フォローアップ結果が発表されましたが、これによると、平成17年度の産業廃棄物最終処分量実績は896万トンとなり、平成16年度実績の約5.5%減となりました。また、この結果、平成2年度実績(平成2年度、基準年)の5,865万トンと比較して約84.7%減少と、平成22年度目標を4年連続で達成したことが明らかになり、産業界の産業廃棄物最終処分量削減に向けた自主的取組の成果が着実に達成されていることが確認されました(表4-4-1、図4-4-1)。

表4-4-1日本経団連環境自主行動計画〔循環型社会形成編〕-2006年度フォローアップ調査結果-〈個別業種版〉【要約版】

表4-4-1日本経団連環境自主行動計画〔循環型社会形成編〕-2006年度フォローアップ調査結果-〈個別業種版〉【要約版】

表4-4-1日本経団連環境自主行動計画〔循環型社会形成編〕-2006年度フォローアップ調査結果-〈個別業種版〉【要約版】

表4-4-1日本経団連環境自主行動計画〔循環型社会形成編〕-2006年度フォローアップ調査結果-〈個別業種版〉【要約版】
図4-4-1産業界全体(31業種)からの産業廃棄物最終処分量


ア 鉄鋼業
鉄鋼業では、鉄鋼の生産に伴う副産物の約99%が再資源化され、セメント原料などに利用されています。更に、スチール缶のリサイクル率は約89%と世界トップレベルとなっています。
平成17年度の鉄鋼副産物の最終処分量は69万トンと前年度に対し10万トン(12.7%増)の減少となりました。最終処分量は平成13年度以降、3年連続で中間目安(平成17年度 75万トン程度)を下回る(71~72万トン)実績で推移し、平成16年度は79万トンと中間目安を上回りましたが、平成17年度に70万トンを下回るレベルに改善しました。
従来より、鉄鋼業では、循環型社会の構築に向け、副産物の一層の有効利用を図るため取組みを進めています。特に、副産物の大半を占めるスラグについては、グリーン購入法の特定調達品目の指定、JIS化の推進等の成果を挙げています。

イ セメント製造業
セメント産業では、セメントの製造工程の特色を活かしつつ、鉄鋼業界(各種スラグ類)、電力業界(石炭灰、排脱石こう)、タイヤ業界(廃タイヤ)、鋳造業界(鋳物砂)、地方公共団体(下水汚泥、焼却灰)などから各種の廃棄物・副産物を受け入れており、平成16年度には、約2,878万トンの廃棄物・副産物の受入れを実施しました(図4-4-2)。

図4-4-2セメント産業での産業廃棄物・副産物の活用状況

さらに、平成13年4月から都市ごみの焼却灰をセメントの主原料とするエコセメント工場が本格生産を開始しました。これまでは焼却灰に含まれる塩素と重金属の問題がありセメントの原料にできませんでしたが、それらを除去する技術が開発された結果、実用化に至ったものです。セメント産業は、焼却灰のほかにも一般廃棄物として処理されることとなった肉骨粉の受入先としても重要な役割を果たしています。
また、セメント業界では、平成13年7月に取りまとめられた「循環型社会の構築に向けたセメント産業の役割を検討する会」報告書の提言を受けて、廃棄物等の利用拡大のための技術開発の促進等の循環型社会構築に一層貢献するための方策に取り組むこととしており、平成14年度から17年度まで、廃棄物の受入量の増大や種類の多様化の阻害要因となっている廃棄物中の重金属類、塩素等の回収・利用に係るシステム開発を実施しました。

ウ 建設業
建設業界では、産業廃棄物の排出量や最終処分量に占める建設廃棄物の割合の高さ、不法投棄に占める建設廃棄物の割合の高さから、建設業界としての取組を積極的に実施してきています。
建設業界では、不法投棄に占める建設廃棄物の割合が高い原因の一つが廃棄物処理法の委託契約が履行されていないことにあると考えられること、また建設工事は、工事現場が一時的であったり、発生品目や発生量が工事現場ごとに異なるなど、一般の産業とは異なる特性を有していることから、こうした建設業の特徴に合った共通契約書やマニフェストを建設九団体副産物対策協議会が独自に作成し、利用しています。共通契約書に参加する団体は、不法投棄対策を狙いとした平成12年度の廃棄物処理法改正後はさらに増えて、現在では業界全体に及んでいます。こうした活動は、不適正処理の排除、適正処理の徹底、分別・リサイクルの推進等に大きく貢献するものと期待されます。
また、請負産業である建設業の特徴から、建設業におけるリサイクル材の利用の推進のためには、発注者の協力が必要不可欠であり、業界のみの取組では限界があります。建設業界では、公共工事を発注している国土交通省と共同で取組を進めており、平成10年4月に策定した「建設業界における建設リサイクル行動計画」(平成15年2月改訂)に基づいて、分別された廃棄物の品目ごとの再資源化を種類、量ともに増やすとともに、民間工事におけるグリーン購入法の特定調達物品の調達を推進するなどの取組を進めています。
こうした業界全体の取組もあって、建設廃棄物の再資源化等の割合は着実に向上しています。

エ 電気事業
電気事業においては、環境問題への取組を経営の最重要課題として位置付け、平成8年11月に「電気事業における環境行動計画」を公表し、環境問題に対して自主的かつ積極的な取組を推進してきました。その結果、着実に廃棄物最終処分量の削減に成果を上げてきたことから、平成13年度の第4回フォローアップで平成22年度の廃棄物最終処分量の目標をそれまでの240万トンから200万トンへ、さらに平成15年度の第6回フォローアップで150万トンへと引き下げてきました。そして平成17年度の第8回フォローアップからは需要変動に大きく左右されない指標として再資源化率を目標に掲げ、『平成22年度における廃棄物再資源化率を平成2年度実績(52%)から90%以上とするよう努める(平成22年度における最終処分量見通しは、現状の再資源化状況を考慮すると70万トン程度)』を目標に取り組んでいくこととしました。
平成16年度の廃棄物発生量は952万トンで前年度比88万トン増加しましたが、これは電力需要増により廃棄物の発生量が増加したためです。一方、再資源化量は876万トンで前年度比137万トン増加させています。その結果、再資源化率は92%となり、前年度比で7%上昇しました。
電気事業から発生する廃棄物としては石炭灰が最も多く、その再資源化促進を重点課題と位置づけており、火力発電熱効率の維持・向上に努めて引き続き石炭灰等の廃棄物発生抑制を図るとともに、石炭灰を大量かつ安定的に利用できる分野の開拓や有効利用技術の調査研究に積極的に取り組んでいます。また、その他の廃棄物についても最終処分量の低減に取り組んでいます。
例えば、平成13年9月に公表した「電気事業における廃棄物等リサイクル事例集」では、石炭灰をセメント原料や路盤材、土壌改良材等として再資源化する取組など電気事業から排出される主だった10種類の廃棄物について、実用化済みの技術から研究中の技術まで幅広く網羅しています。


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