第I部 総説


総説1 人口減少と環境


はじめに


1 人口減少時代の到来


(わが国の人口動向とその影響)
人口動態統計の年間推計等によれば、統計の得られていない昭和19年〜21年を除き、平成17年に初めて死亡数が出生数を上回る自然減となり、また、国勢調査の結果によれば、わが国の人口は減少局面に入りつつあることが明らかになりました。
子どもを生み育てやすい環境づくりを目指して、教育、労働、社会保障の面において取組が進められているところですが、わが国は、平成18年から本格的な人口減少の局面に入ると見られ、今後2030年(平成42年)までに約1,000万人の人口が減少すると見込まれています。また、総人口に占める高齢者の比率は急速に高まり、同時に年少人口(0歳から14歳までの人口)の比率は緩やかに低下していくものと考えられます(図0-1-1)。

図0-1-1	日本の年齢(3区分)別人口の推移

人口減少時代の到来は、経済成長の鈍化、社会保障費の負担増、財政に対する制約など経済社会や国民生活に大きな影響を及ぼす可能性があるものと考えられ、こうした変化に伴い、環境に対してもさまざまな影響が生じると考えられます。また、その一方で、ゆとりある環境と生活を実現する好機となることも予想されます。
このため、本総説では、人口減少に伴う環境への影響について、正と負の両面から考えていきます。

(わが国の人口減少の特徴)
こうした人口減少は、いくつかの国で生じ始めています。今後、先進諸国においては、アメリカ等の一部の国を除き、ほとんどの国で人口は横ばい又は減少する見通しですが、その中でも日本の人口減少は最も早く、また、減少の幅が大きいといえます(図0-1-2)。わが国は、各国に先立って急激な人口減少の局面に入ると予測されることから、日本の対応が世界のモデルケースとなるものと考えられます。

図0-1-2	各国の人口増加率の推移


(人口減少の都市部と地方部での違い)
人口減少は、日本全国同じように起こるのではなく、地方部ではすでに始まっており、今後急速に減少が進むことが予想されます(図0-1-3)。また、高齢化率については、現在は地方部において高くなっており、すべての都道府県で上昇すると予想されますが、特に都市部においては今後急速に高齢化が進展することが予想されます(図0-1-4)。

図0-1-3	2000年=100とした人口推移の指数


図0-1-4	65歳以上人口比率と65歳以上人口増加率(都道府県)


2 世界の人口の動向とわが国への影響

これから人口が減少するわが国とは対照的に、世界的には人口爆発が見込まれています。1950年におよそ25億人だった世界の人口は、2000年にはおよそ61億人と、この50年の間に2.4倍に増加しました。今後2050年までに、世界人口は、国連の中位推計で93億人に達するものと予想されています。特にアジアの人口は世界の約6割を占めており、世界の人口の動向に大きな影響を及ぼしています(図0-2-1)。

図0-2-1	世界の人口推計

こうした人口爆発により、地球規模で資源・エネルギー、食料・水の需要の増加が見込まれ、環境負荷も増大することが予想されます。わが国は、食料の約6割を、資源・エネルギーの大部分を輸入に依存しており、世界、特にアジアにおける人口爆発は、わが国の経済社会、さらに環境にも大きな影響を及ぼすことが懸念されます。


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