平成16年の日本において、真夏日日数の記録更新、台風の上陸個数の記録の更新、相次ぐ集中豪雨による甚大な被害が発生し、地球全体の気候が変わりつつあるのではないかという国民からの不安の声があがりました。最新の調査研究において、地球温暖化が進行することにより、暑い日や強い降水現象が増加する可能性が高いなど、極端な現象の頻度が増加すると考えられています。地球温暖化は、人類の生存に必要な社会基盤をゆるがすものであり、すべての主体のあらゆる活動から温室効果ガスが排出されることから、誰も傍観することが許されない問題です。
平成17年2月16日に「京都議定書」が発効したことにより、わが国には、国際社会において削減約束を守る義務が発生しました。京都議定書の削減約束を日本が達成することは簡単ではありませんが、脱温暖化社会に向けた第一歩として、国民、企業、市民団体、行政が一丸となって、必要な対策を実施して、京都議定書の削減約束を達成しなければなりません。しかも京都議定書の約束期間が終了した後も、現在進みつつある地球温暖化を止めるためには、さらに長期的、継続的に温室効果ガスの削減を行う必要があります。そのため、人類の英知を結集して、技術革新や国民一人ひとりの意識改革などを進め、あらゆる場面で温室効果ガスを削減していくための社会経済の転換を図らなければならないのです。
現在、政府全体の環境保全に関する総合的で長期的な計画である環境基本計画の見直し作業を始めています。この計画は、脱温暖化社会や循環型社会の構築も含めた持続可能な社会の実現へ向けた総合的な環境政策のマスタープランです。新環境基本計画の策定を通じて、あらゆる主体が、あらゆる場面で温室効果ガスなどの環境負荷を自発的に削減する「人づくり」とともに、社会経済システムを環境に配慮したものへ転換させる「しくみづくり」を目指します。さらに、家庭、学校、企業、市民団体、行政等の各主体が適切に役割分担しつつ、相互に協力して環境パートナーシップを構築することによって、社会全体へ環境の国づくりが広がります。また、環境の国づくりに当たっては、環境問題への積極的な取組が、新たな投資や技術革新を生み出し、さらには企業や国の競争力を高め、経済の活性化が環境を改善させる環境と経済の好循環を実現することが重要です。特に経済発展を目指す開発途上国に対して、日本が、環境と経済の好循環による発展のモデルとしての姿を示すことにより、環境の国として世界をリードしていくことにつながります。環境の国づくりは、私たちの環境を保全したいという意識と行動から始まるのです。