環境大臣 小池 百合子
今年の2月に京都議定書が発効しました。京都議定書は、地球温暖化を防止するための「国際社会との約束」です。同時に、すべての生き物、地球の生態系全体が存続するための「地球との約束」でもあり、そして、将来世代が住みよい地球で暮らすための「未来との約束」です。日本は、地球温暖化防止京都会議(COP3)の議長国として、わが国の国際約束である6%の削減を達成するだけでなく、技術の開発・普及などの中長期的な視点に立った施策を推進し、他国に先んじて脱温暖化社会づくりを進める必要があります。そのため、本年4月に京都議定書目標達成計画を閣議決定し、政府一体となって地球温暖化対策に取り組むこととしています。また、4月から一人ひとりがライフスタイル・ワークスタイルを変革する「チーム・マイナス6%」の国民運動がはじまったことにより、脱温暖化社会の構築を目指します。この夏からはオフィスで涼しく効率的に格好良く働くことができるビジネススタイルの愛称を「COOL BIZ クール・ビズ」と名付け、その普及を推進します。
平成17年2月の京都議定書発効記念行事の際には、平成16年にノーベル平和賞を受賞したケニア環境副大臣のワンガリ・マータイさんが来日し、日本の「もったいない」という精神に感銘を受け、世界に「もったいない」を広めていきたいと発言されました。
「もったいない」とは、単にモノを使い惜しむのではなく、そのモノの持つ本来の値打ちや役割に着目して、無駄にすることなく、それを生かしていくための言葉です。私たちは、その「もったいない」という言葉の精神に立って、これまでの事業活動やライフスタイルを見直し、持続可能な社会を構築することを、世界へ発信していきたいと考えています。
環境省の中央環境審議会では、この「もったいない」という精神が資源を生み出すことなど、2025年の理想の社会の姿と、そこへ至る道筋について「環境と経済の好循環ビジョン」を答申しました。私は、そこに示された「健やかで(Healthy)、美しく(Beautiful)、豊かな(Rich)環境先進国」という理念の頭文字と、「Ecology+Economy」を表すEを組み合わせて、「HERB構想」と名付けました。
また、人間と自然とが共生する未来への道を示すものとして、今年の3月25日から9月25日まで、21世紀最初の国際博覧会である「愛・地球博」が愛知県で開催され、「自然の叡智」をテーマに世界へ情報発信しています。ここでの日本政府のパビリオンでは、「竹のすだれ」や「打ち水」を利用した省エネ型の空調を実施し、さらに生ごみを使った燃料電池発電などのクリーン・エネルギーで電力のすべてを賄っています。
「環境の世紀」である21世紀において、私たちは、目先の利益を追うだけでなく、将来の地球のために何をすべきかを考え、ためらわずに取り組んでいく責任があります。そのためには、政府として、社会全体で環境保全を進めるための「しくみづくり」と、環境保全に自主的に取り組む「人づくり」を車の両輪として進めることが必要です。こうした「しくみづくり」や「人づくり」から、日本発の健やかで美しく豊かな社会を世界中で実現できることを強く信じています。
平成17年6月