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第3節 

6 社会経済の主要な分野での取組

(1)物の生産・販売・消費・廃棄
ア 全般的な取組
 事業活動への環境配慮の織り込みを深めるため、環境マネジメントシステムや環境会計の導入、環境パフォーマンス評価、LCAの実施についての検討を行うなど、引き続き調査研究と情報提供を行います。
 環境保全型製品の普及促進については、製品のライフサイクルの観点を盛り込んだエコマーク制度について、製品の環境情報を消費者に提供することも含め、引き続き推進します。
 また、ISOにおける標準化等国際的動向を踏まえつつ、製品の定量的な環境負荷に関する情報を提供する環境ラベルのあり方について、引き続き検討を行います。
 廃棄物・リサイクル対策については、廃棄物の発生抑制、適正なリサイクル及び適正処理を進めます。
イ 農林水産業に関する環境保全施策
 農業においては、「持続性の高い農業生産方式」の導入を推進し、導入を図ろうとする農業者に対し引き続き金融・税制上の支援を行います。また、面的なまとまりを持った先導的な環境保全対策実践地区の創出、実践的な環境保全に対する技術体系の確立や緑肥を導入した合理的な輪作体系による環境負荷の低減等の実証を支援するとともに、環境と調和した持続的な農業生産を維持・推進するために必要な共同利用機械・施設等の整備、ほ場レベルにおける炭素収支や脱窒の測定手法の確立を図ります。さらに、畜産業において発生する家畜排せつ物からの環境負荷を低減するため、家畜排せつ物の適正な処理・管理に必要となる施設整備を推進し野積み・素掘り等の解消を図るとともに、家畜排せつ物のたい肥化等により一層の資源循環とエネルギー利用を図ります。
 林業においては、育成複層林施業等の森林整備を促進するとともに、計画的な保安林の指定の推進及び治山事業等による機能が低下した保安林の保全対策、多様な森林づくりのための適正な維持管理に努めるほか、二酸化炭素の貯蔵庫となるなどの特徴を有する木材の利用を促進します。このため、木材利用推進関係省庁連絡会議の場等を通じて、木材の利用の可能なところは例えば擬木に代えて木材を積極的に利用するなど、関係省庁の連携を強化し、木材利用の促進を図ります。
 水産業においては、「持続的養殖生産確保法」に基づく漁協等による漁場改善計画策定のための取組を促進します。また、つくり育てる漁業を推進するため、沿岸域の藻場・干潟の造成、底質改善等を実施、養殖漁場の環境指標の設定と簡便な測定手法の開発を実施するとともに養殖業由来の環境負荷を低減するための実用的技術の開発を行います。一方、漁協等による「資源管理型漁業」を一層推進することにより、各地域の多種多様な漁業実態に即した水産資源の適切な保存・管理と持続的な利用を図るための事業を実施します。
ウ 製造業・流通等に関する環境保全施策
 製造業・流通等においては、適切な環境対策指導を行うほか、省資源・再資源化推進のための環境整備事業を行います。中小企業の公害対策について、実態を把握するとともに、中小企業自身の研究開発を支援します。
 食品産業においては、生産段階では、環境に係る情報の提供、環境自主行動計画の策定及び円滑な実施を促すための普及啓発を行います。流通段階では、飲食店等の食品廃棄物から製造される肥飼料等の特性と効果的利用法を把握するための検討を行います。また、容器包装廃棄物リサイクル対策を行うとともに、食品廃棄物の分別や運搬を回収技術、高度再生・変換利用技術など食品の資源循環システム構築に必要な技術の開発を実施します。さらに、食品リサイクル法やすぐれた取組事例等に関する普及啓発、民間の技術開発の支援、すぐれた食品リサイクルシステムの構築及び食品リサイクル施設の導入を図ります。

(2)エネルギーの供給と消費
 環境への負荷の少ないエネルギー供給構造の形成、エネルギー消費効率向上に向けた取組を進めるとともに、大気汚染防止法等に基づいた汚染物質排出等に係る規制的措置を適切に実施します。
 環境への負荷の少ない新エネルギーの導入拡大を図るとともに、2010年度における新エネルギーの導入目標(原油換算で1,910万kl)を達成するため、バイオマス、太陽光発電等新エネルギーの技術開発・導入促進及び環境整備を積極的に推進します。特に燃料電池及び水素エネルギー利用に関しては、実用化に向けた規制の再点検の最終年度に当たるため安全性の確保を前提とした点検を着実に行います。さらに、電気事業者に一定割合以上の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務づけたRPS法の着実な実施等を通じて、電力分野における新エネルギーの導入拡大に努めます。また、安全性の確保を大前提として、原子力発電を推進することをエネルギー政策の観点のみならず、地球温暖化対策の観点からも重要な課題と位置付け、安全対策・防災対策の充実に努めるとともに、原子力発電施設及び核燃料サイクル関連施設の立地を促進するため実効性の高い地域振興策を講じ、核燃料サイクル及びバックエンド対策に係る技術の開発等を進めます。中でも、バックエンド事業については、平成16年末までに、経済的措置等の具体的な制度及び措置のあり方について検討を行い、必要な措置を講じます。
 今後も引き続き地球温暖化対策推進大綱に基づき、省エネルギー対策を推進していきます。具体的には、現行の対策に加え、高効率空調機の導入補助事業の実施、国の庁舎へのモデル的導入などESCO事業の普及促進、複数の主体間の連携によるエネルギーの有効活用の推進等を行っていきます。
 さらなる二酸化炭素排出量削減のための対策が必要であることを踏まえ、電力等の燃料転換等を促進するため、老朽石炭火力発電所の高効率LNGコンバインド−サイクル発電への転換、石炭等を燃料とする産業用ボイラー等における天然ガスへの燃料転換等を支援する施策を実施します。
 また、燃料自体のさらなるクリーン化を図るため規制に先駆けて硫黄分10ppm以下のガソリン・軽油の早期供給を実施するための支援措置を実施します。

(3)運輸・交通
 地方公共団体や民間事業者が低公害車を導入する際の補助や公健法の基金等による助成、新長期規制適合車に対する自動車取得税の軽減措置や自動車税のグリーン化の延長・拡充等の税制上の特例措置を通じて、低公害車のさらなる普及促進を図ります。さらに、地方運輸局単位に官民で構成したエコ・トラック推進協議会による民間活力を通じた低公害トラックの導入促進等を図ります。
 アイドリングストップ機能付き自動車を導入する者に対し、通常車両との差額の一部を補助する制度を導入します。さらに、全国各地での講習会・試乗会の実施、モニターの募集、レンタカーへの導入等、アイドリングストップに対する国民各層への総合的な普及啓発を図っていきます。
 また、次世代低公害車の本命と目されている燃料電池自動車について、日本において世界に先駆けた早期実用化を図るため、燃料供給から自動車走行まで一貫した大規模な公道走行実証試験を首都圏で実施、燃料電池自動車を大量生産するために必要となる型式指定が取得可能となるよう安全・環境に関する技術基準を整備するために必要な試験を実施するほか、高効率燃料電池システムの実用化技術開発や、標準基準の整備に向けた研究開発を行います。
 加えて、産官学の適切な連携により、現行の大型車に代替するジメチルエーテル自動車や次世代ハイブリッド自動車、高効率天然ガス自動車等の技術開発を促進するほか、燃料の種類によらず、排出ガス性能基準により低公害性を評価する低排出ガス車の認定制度を実施し、低公害車のさらなる普及促進を図ります。
 自動車交通需要を低減・平準化する交通需要マネジメント施策を推進します。
 信号機の設置・改良、交通管制システムの高度化等を推進し、交通の円滑化を図り、3メディア対応型VICS対応車載機の導入・普及等を積極的に推進します。
 さらに、高度道路交通システム(ITS)の推進や交通安全施設の整備等による交通流対策及び公共車両優先システム(PTPS)等の整備による公共交通機関の利用促進により、交通渋滞の緩和を図り、自動車からの人工排熱の低減を目指したヒートアイランド対策を引き続き、推進します。
 環境負荷が小さく効率的な物流体系を構築するため、平成16年度においても、荷主・物流事業者等の関係者が協力して環境負荷軽減策に取り組む場合に一定の効果が認められる実証実験について、支援していく予定です。
 都市鉄道新線の建設、在来幹線鉄道の高速化等の整備、駅のバリアフリー化、バス利用の促進策、バス・鉄道相互の共通ICカードシステムの整備、交通事業者が行う先進的な利便性向上策に係る「広域的な公共交通利用転換に関する実証実験」等に対する支援等を通じて環境負荷の小さい公共交通機関の利用促進を図ります。

(4)情報通信の活用
 情報通信の活用は、交通との代替や交通流の円滑化、生産・流通活動の効率化を通じて環境への負荷の低減や循環型の経済社会システムの構築に資することが期待されています。
 そこで、情報通信を活用した新しい働き方であるテレワークSOHOの導入を推進するため、普及を促進する情報通信システムの開発や調査研究、先進的な団体等の表彰やシンポジウム、サテライトセミナーの開催による周知啓発の支援等を実施します。
 また、国土交通省では地方公共団体と連携して、個々の地域におけるケーススタディ等を通じ、テレワークを推進する上での課題把握、必要な支援方策の検討、推進方策の取りまとめ等を行うとともに、テレワークによる客観的な効果を把握・検証し、セミナー等による普及啓発活動を実施します。

(5)戦略的環境アセスメント
 環境基本計画に規定されているように、個々の事業計画・実施のみならず、上位計画や政策についても環境の保全に配慮することが必要です。
 上位計画や政策における環境配慮のあり方について、ガイドラインの作成に向けて、現状での課題を整理した上で、内容、手法等の具体的な検討を行うとともに、国や地方公共団体における取組の実例を積み重ねます。
 上位計画や政策に対する環境配慮として、内容や制度に差異はありますが、諸外国で「戦略的環境アセスメント」と呼ばれる仕組みや、日本の一部地方公共団体において条例や要綱等により、上位計画等における環境配慮の取組が開始されており、これらも参考にして検討を行います。

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