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第5節 有害廃棄物の越境移動の規制に関する国際的枠組みの下での取組と国際的枠組みづくり

 1970年代から80年代にかけて、先進諸国から輸出された有害廃棄物が開発途上国において不適切に処分されたり不法に投棄されることによって環境汚染が生じたほか、陸揚げを拒否され、有害廃棄物を積載した輸送船が行き先もなく海上を漂うなどの事件が多発しました。これらの事件の背景として、より規制が緩く処理費用もかからない開発途上国等へ有害廃棄物が輸出されがちなことが考えられ、こうして、有害廃棄物の越境移動問題は、先進国間だけでなく、開発途上国をも含んだ地球的規模での対応が必要な問題であるという認識が強まりました。
 こうした問題に対処するため、平成元年3月、UNEPを中心に、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(以下「バーゼル条約」という。)が採択され、平成4年に発効しました。日本では、「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(平成4年法律第108号。以下「バーゼル法」という。)が平成4年に制定され、平成5年にバーゼル条約に加盟しました。
 日本は、OECD加盟国間のリサイクルを目的とした廃棄物の国境を越える移動の手続を規定するものとして平成4年3月に採択されたOECDの「回収作業が行われる廃棄物の国境を越える移動の規制に関する理事会決定」にも参加しており、必要な規制が行われています。
 バーゼル条約の締約国は平成16年2月現在で158か国及びEUとなっており、おおむね2年ごとに開催される締約国会議において内容の充実、見直し等が進められています。
 平成7年の第3回バーゼル条約締約国会議において、OECD加盟国等から非OECD加盟国等への有害廃棄物の輸出を禁止すること等を内容とする条約改正案が採択されましたが、国際的な議論が継続して行われていることもあり、平成16年2月現在、発効には至っていません。
 平成10年の第4回締約国会議において、規制対象の範囲の明確化を図るため、同条約の規制対象及び規制対象外の廃棄物リストが新たな附属書として採択されました。これを受け日本においては、同年11月に、バーゼル法の規制対象物となる「特定有害廃棄物等」に規定するものを定めました(図4-5-1)。



 さらに、平成11年の第5回締約国会議においては、有害廃棄物の越境移動及びその処分に伴って生じた損害についての賠償責任と補償の枠組みを定めた議定書が採択されましたが、この議定書についても、平成16年2月現在、発効には至っていません。
 平成14年の第6回締約国会議においては、有害廃棄物の国境を越える移動についての環境上適正な管理を実効的に実施するための戦略計画(2000年〜2010年)が採択され、また条約上の義務の実施及び遵守を促進する制度の設立等について合意に至りました。
 このほか廃棄物処理法において廃棄物の輸出の場合の環境大臣の確認、廃棄物の輸入の場合の環境大臣の許可等廃棄物の輸出入についても必要な規制が行われています。
 バーゼル法に基づいて輸出が承認された有害廃棄物等の量は、毎年数百トンから1万数千トンとばらつきがあり、平成15年の1年間では10,502トンとなっています。相手国は韓国、ベルギー、ドイツ、スイスであり、品目としては、鉛スクラップ、ハンダのくず等であり、主に金属回収を目的とするものでした。一方、バーゼル法に基づき輸入が承認された量は毎年数千トンから1万トン程度であり、15年の1年間では8,562トンとなっています。相手国はフィリピン、シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、中国、韓国であり、品目としては、ガラスカレット(ブラウン管のくず)、銅スラッジ、銀スラッジ、電子部品スクラップ、含銅灰、廃バッテリー等であり、ガラスの再生利用や金属の回収など再生利用を目的とするものでした。
 また、バーゼル条約制定の趣旨やバーゼル法及び廃棄物処理法による規制内容等の周知を図り、有害廃棄物等の不法輸出入を防止するためのバーゼル法等説明会を全国各地で税関等の協力を得て開催するとともに、環境省・経済産業省において輸出入に関する事前相談を行っています。

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