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第3節 

2 環境に配慮した行動の提案

(1)省エネによる環境負荷の低減
 家電製品等の新規購入や買換えの際に、序章で見た「省エネラベリング制度」の対象商品を購入したり、第1章で見た「次世代省エネルギー基準」に適合した住宅に住むことによる省エネ化が、地球環境を守ることに貢献します。これ以外に、こまめな消灯や、主電源を切って待機電力を抑える等、使い方を工夫することによっても省エネは可能です。
 (財)省エネルギーセンターのアンケート調査によると、省エネ行動の容易さとエネルギーの年間節約額との関係は、図2-3-3のとおりです。例えば、「エアコンをつけっぱなしにしない」等機器の使い方に気をつける行動は、比較的負担感が少なく、大きな節約効果をあげることができます。また、洗濯や冷蔵庫の開閉等をまとめて行うことで、環境負荷低減効果をあげるものもあります。




(2)食からの環境負荷の低減
 最近、季節や地域に関わりなく、さまざまな食品を手に入れることができるようになりました。輸入も含めた食品供給地の拡大が原因の一つですが、加温したビニールハウス等の施設栽培率の増加も一因です。加温栽培には多くのエネルギーを要し、二酸化炭素の排出量を増やしています(図2-3-4)。旬の時期に旬のものを食べることは、自然の移り変わりを意識し失われつつある季節感を回復するとともに、環境にも貢献するくらし方です。



(3)衣服での環境負荷の低減
 今日、各家庭での冷暖房兼用エアコンの普及率は100%を超え、数台を所持している家庭も少なくありません。
 エアコン一台当たり、夏場に設定温度を27℃から1℃上げるだけで年間5.9kgの、また冬場に設定温度を21℃から1℃下げるだけで年間25.7kgの二酸化炭素排出量削減が可能となります。まずは衣服によって温度調節することが、二酸化炭素の排出量減少につながります。職場によっては、夏季の適正冷房の実施とそれを補完するための軽装が励行されています。「夏の軽装は相手にとって失礼ではなく、省エネで環境にやさしく、四季のある日本の良識である」という発想の転換が求められます。
 近年では、夏はより涼しく、冬はより暖かな衣服が、技術開発の結果として製品化されています。夏の室温28℃でも暑さを感じにくいよう工夫したシャツやスーツ等が、夏季の適正冷房実施に一役買うことが期待されます。冬用には、軽くて暖かい繊維が開発されています。

(4)屋上緑化と壁面緑化
 都市部の開発・都市化等により、自然環境が変えられ自然との関わりが減少しています。自然の減少は、潤いやゆとりの喪失だけでなく、大気汚染、生物多様性の減少、防災機能の低下や都市のヒートアイランド現象なども招きます。こうした問題を解決するためには、都市公園や街路樹のみならず、庭園のほか、屋上や壁面など建築物における緑化が必要です。
 屋上・壁面緑化は、夏季の室温上昇を抑制し、冷房の省エネに貢献します。また、騒音の低減や建築物の保護、空気の浄化や都市気象の改善にも役立ちます。



(5)生活用水、排水対策
 日本の生活用水の使用量は最近横ばいの傾向にあるものの(図2-3-5)、排水に含まれるさまざまな物質が、環境に負荷を与えています。特に、生活排水中の環境負荷を示す生物化学的酸素要求量(BOD)を個別に見てみると、台所から発生する負荷量が4割以上と大きな割合を占めています(図2-3-6)。





 家庭での発生源対策としては、汚濁物質の除去という面から、生活排水処理施設の整備による削減が考えられます。しかし、施設整備には多くの費用と時間を要することから、まず、発生源を減らす工夫も大切です。
 家庭から排出される汚濁をBODで示すと、表2-3-1のとおりです。飲み残しを少なくする等、家庭からの負荷をなるべく減らす工夫が、川や海や湖沼の水質保全につながります。例えば、みそ汁など食べ残しのない分量だけ調理することや、食用油の適正な処理などの工夫が挙げられます。




コラム1 「環のくらし」を目指して
 政府は、持続可能な簡素で質を重視する循環型社会としての「環の国」を目指して、「環の国くらし会議」を開催しました。具体的提案を掲載した「私の環のくらし ハンドブック」や、低公害車、省エネ家電、住宅等地球温暖化防止への取組を支援する具体的な商品やその使い方等を紹介した「環のくらし応援BOOK」、「同 Part・2」を作成し、「環のくらし」の実践を呼びかけるメッセージを発信しました。
(「環のくらし」のホームページ http://www.wanokurashi.ne.jp

コラム2 鳥や虫の来る庭
 自然と関わる一つの手段として、生物の生息・生育空間であるビオトープがあります。ビオトープは主に学校や公園などで作られてきましたが、最近では、家庭の庭やベランダ、屋上などに、野生の鳥や虫などが来られる小さな草地や水辺、木立などを作る動きがあります。
(「おしえてビオトープ」のホームページ http://www.env.go.jp/nature/biodic/eap61/




コラム3 水洗トイレの音消し水
 水洗トイレは、節水型の機種でさえ一回に8lもの水を必要とします。水道水を供給するためには、水源から取水して浄化し、各家庭に配水するまでに多くのエネルギーが消費され、その結果、二酸化炭素が排出されます。
 音を消すためにこの水を流さないように、擬似的な流水音を出す装置が設置され、節水の効果が出ています。
 しかし、海外では、そもそも周囲を気にして音消し水を流す習慣はないといわれています。

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