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環境白書の刊行に当たって

環境大臣 小池百合子

 日本には、世界に誇る「環境のわざ」があります。省エネルギー、リサイクル等の分野では、最高水準の技術が次々に開発され、消費者の選択に供されています。ソフトの分野では、環境報告書や金融分野での環境配慮など、さらに幅広い「環境のわざ」が広がっています。
 また、万葉の時代から自然を敬ってきた日本人の心は、持続可能なライフスタイルを生み出す可能性を秘めています。環境を大切に思い、これを自らの手で保全しようとする「環境の心」を育むためにも、また、すべての世代を通じて自然とふれあう中で健やかな心身を保つためにも、環境教育、環境学習を進めていきたいと思います。


環境教育の推進
「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」が平成15年7月に成立し、環境教育を推進しています。


 一人ひとりが消費者、投資家、事業者等のそれぞれの立場から環境を良くする意志を持って行動すれば、ものやお金の流れを変えることができます。環境を良くすることが経済を活性化させ、経済の活性化がさらに環境の改善につながる。そんな好循環を生み出す必要があります。たとえば、環境保全と、観光と地域振興を同時に追求するエコツーリズムは、このような環境と経済の好循環を目指した動きのひとつです。エコツーリズムの普及、定着のため、平成15年11月から「エコツーリズム推進会議」を開催し、具体的な推進策を検討しています。
 環境と経済の好循環を日本で始められれば、同じ志を世界中の人々に広げ、これから生まれてくる世代とも、地球の恵みを受けた幸せな暮らしを分かち合うことができるでしょう。「環境のわざと心」を世界に広げることにより、地球環境の保全に大きく貢献することができます。平成16年3月にアラブの環境大臣を日本に招待し、日本・アラブ環境大臣セミナーを開催したのも、そんな考えに基づくものです。
 「環境の世紀」と言われる二十一世紀は、これまで人類が経験してきた「産業革命」や「IT革命」に続く、いわば「環境革命」の時代であると考えます。環境を基軸として、私たちのライフスタイルや事業活動のあり方を根本から見直し、真の環境立国を目指そうではありませんか。環境という、人類共通のテーマのもとで、日本がリーダーとなって、世界中に持続可能な発展をもたらすことは、「環境のわざと心」を有するわが国の責務なのですから。

 平成16年5月


知床五湖と連山
平成16年1月に、日本政府として「知床」をユネスコの世界遺産委員会に推薦しました。

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