1 地球環境保全に関する国際的な連携の確保
(1)多国間の枠組みによる連携
ア 国連を通じた取組
(ア)ヨハネスブルグサミット後の持続可能な開発に向けた取組
わが国は、ヨハネスブルグサミットにおいて採択された「実施計画」が着実に実施され、持続可能な開発に向けた全世界的な取組が強化されるよう、わが国の経験や取組の成果に基づいて最大限貢献していきます。また、産業界、学界、地方自治体、NGOなど幅広い主体が持続可能な開発の実現に向けて積極的に活動できるよう支援していきます。この他、金融業の環境配慮行動を促進するため、UNEPファイナンスイニシアチブの活動に貢献していきます。
(イ)国連環境計画(UNEP)における活動
わが国は、第22回管理理事会で決定された重点分野及びヨハネスブルグサミットのフォローアップをUNEPが実行するに当たり、わが国の有する環境分野での多くの経験と豊富な知見を活かし、今後とも積極的に貢献していきます。また、UNEP親善大使の加藤登紀子さんの活動を支援します。
また、UNEP国際環境技術センターが実施する環境保全技術に関する情報の収集・整備及び発信への協力等を継続するとともに、関係府県市等と協力しつつ、同センターの円滑な業務の遂行を引き続き積極的に支援していきます。
(ウ)その他
国連教育科学文化機関(UNESCO)のアジア・太平洋地域教育開発計画(APEID)の下で、アジア・太平洋地域諸国の環境教育の専門家をわが国に招致してセミナーを開催する等、UNESCOと協力してアジア・太平洋地域における環境教育の充実・普及を図っていきます。さらに、UNESCOに科学振興に関する信託基金を拠出し、人間と生物圏(MAB:Man and the Biosphere)計画の下でのアジア・太平洋地域における生物圏保存地域(Biosphere Reserve)のネットワークを利用した生物多様性の保護と持続可能な活用、人材・研究機関の養成のためのセミナー等の地球環境科学関係事業を一層推進します。
また、「クリーンな環境のための北九州イニシアティブ・ネットワーク*」の活動に対して、わが国としても積極的に貢献していきます。
イ 経済協力開発機構(OECD)及び国際エネルギー機関(IEA)における活動
OECD閣僚理事会のコミュニケ等を踏まえつつ、わが国としてはOECD環境戦略の推進やOECD持続可能な開発プロジェクトをはじめ、OECDの環境分野における活動に積極的に参画・貢献します。
また、気候変動技術イニシアティブ(CTI)の活動を通じ、国際協調の下、地球温暖化防止に向けた技術戦略の策定、途上国への地球温暖化防止技術の普及、革新的な地球温暖化防止条約の国際共同研究等を積極的に推進します。
ウ 世界貿易機関(WTO)等における取組
第4回WTO閣僚会議で採択された閣僚宣言を踏まえ、自由貿易の推進と環境保全の両立を図っていくよう、WTOにおける議論に積極的に参加します。また、最近取組が進んでいる経済連携協定を通じた環境政策強化の方策の検討や貿易自由化に伴う環境影響評価に係る手法の開発を行います。
エ 主要国首脳会議(サミット)における取組
サミットにおいて環境問題は次第に重要性を増してきている中、わが国としては、引き続き国際的なイニシアティブを発揮していくため積極的な役割を果たしていきます。
オ アジア・太平洋地域における取組
アジア・太平洋環境会議(エコ・アジア)及びエコアジア・パネルを開催するとともに、アジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト(APEIS)において、衛星データ等を活用したアジア・太平洋地域における統合的モニタリング・評価をより実践的に発展させ、その成果を活用した革新的な環境戦略オプションの研究を行い、各国との共働プロセスを通じた持続可能な開発を可能にするための環境政策立案の支援を推進します。さらに、アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)の活動を積極的に支援し、アジア太平洋地域の新たな社会発展のモデルの形成を推進します。
また、日中韓3か国環境大臣会合については、中国で開催される第5回会合に積極的に貢献するとともに、環境教育ワークショップ・シンポジウム等のプロジェクトを推進します。さらに、「環日本海環境協力会議」及び「ESCAP/北東アジア環境協力高級事務レベル会議」への支援を通じ、アジア・太平洋地域、さらには地球規模の環境保全に関する政策対話の強化に努めます。
個別分野に関しても、「地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」を今後とも開催するとともに、域内各国の酸性雨測定局のネットワーク化を図る「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」を推進するほか、域内の研究協力を推進し各国の地球環境問題への対処能力の向上を図る「アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)」の活動を強化し、ヨハネスブルグサミットのパートナーシップ・イニシアティブとして登録した「持続可能な開発のための科学的能力向上プログラム」を新設するなど積極的貢献を行っていきます。
「地球環境戦略研究機関」(IGES)においては、国際的な地球温暖化対策の立案をはじめとした、21世紀の持続可能な社会の実現のための戦略研究を、アジア太平洋地域を中心とする国際的連携の下で推進していきます。また、IPCCの技術支援ユニットの活動も推進します。
最近、日本への影響とともに、その問題が注目されている黄砂については、中国、韓国、モンゴル等の関係各国や国際機関との連携を強化しつつ、日本国内の取組はもとより、国際的なプロジェクト等を推進していきます。
(2)二国間の枠組みによる連携
米国、ドイツ、ロシア、中国、韓国との環境保護協力協定に基づく協力、EU等との環境協力、米国、ドイツ等との科学技術協力協定に基づく共同研究・調査等を進めます。
日中間についても、気象庁気象研究所、独立行政法人国立環境研究所等による黄砂に関する共同研究や、「21世紀に向けた日中環境協力に関する共同発表」の下での「日中環境開発モデル都市構想」等具体的な協力を進めていきます。
(3)国際的な連携の確保に資する海外広報の推進
地球環境保全に関するわが国のイニシアティブを示すため、環境白書等定期刊行物、国際的に要望の高い行政資料の英文版、目的に応じた海外広報用資料などの作成・配布やインターネットを通じ、環境問題に対するわが国の取組につき積極的に海外広報を行っていきます。