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第6節 

1 地球温暖化の防止

(1)気候変動枠組条約に基づく取組
 気候変動枠組条約*により、わが国をはじめとする先進締約国等は、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量を1990年代の終わりまでに従前のレベルに戻すことが条約の目的に寄与するものであるとの認識の下、政策を採用し、措置をとり、その内容について、締約国会議へ情報(通報)を送付することが義務付けられています。
 1995年(平成7年)にベルリンで開催された同条約の第1回締約国会議(COP1)において、現行の条約上の規定で不十分とされた2000年以降の期間に先進締約国等が講ずべき対策やその目標について、検討するプロセスを開始することとなりました(ベルリン・マンデート)。これを受け設置されたアドホックグループにおける検討等の国際的努力の結果、1997年(平成9年)12月に京都で開催された第3回締約国会議(COP3)において、先進各国の温室効果ガス排出量について法的拘束力のある具体的な数量化された約束を定めた京都議定書が全会一致で採択されました。2000年(平成12年)11月にオランダのハーグで開催された第6回締約国会議(COP6)では、京都議定書の実施に必要となるルールや手続等について合意に至らなかったため、2001年(平成13年)7月にドイツのボンで再開会合が開催されました。再開会合では、京都議定書の運用ルールについての基本的な合意(ボン合意)が得られ、その後同年10〜11月にモロッコのマラケシュで開催された第7回締約国会議(COP7)において、京都議定書の具体的な運用に関する細目を定める文書が決定され、これにより、先進諸国等の京都議定書締結に向けた環境が整いました。これを受け、わが国は、京都議定書締結の国会承認及び担保法としての地球温暖化対策の推進に関する法律の改正を経て、2002年(平成14年)6月4日、京都議定書を締結しました。
 しかしながら、世界最大の温室効果ガス排出国である米国は、京都議定書を支持しないことを表明し、2002年(平成14年)2月14日には、ブッシュ大統領が米国の気候変動政策を発表しました。米国は依然として京都議定書不支持の姿勢を変えていません。
 2002年(平成14年)8月に開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議においては、その前後に多くの国が京都議定書を締結し、または締結の意思表明を行い、取りまとめられた実施計画においてわが国のイニシアティブにより「京都議定書の締結国は、未締結国に対しそのタイムリーな締結を強く求める」ことが明記されるなど、気候変動問題に関しても国際社会のモメンタムが高まりました。
 また、同年10〜11月にインドのニューデリーで開催された第8回締約国会議(COP8)においては、京都議定書の早期発効や地球規模での排出削減について議論され、気候変動及び持続可能な開発に関するデリー閣僚宣言(デリー宣言)が採択されるとともに、京都議定書実施に向けて進展がありました。
 地球温暖化対策の実効性を確保するためには、すべての国が温室効果ガスの削減に努めることが必須であり、今後米国や開発途上国を含むすべての国が参加する共通のルールが構築されるよう、わが国として、引き続き最大限の努力を傾けていくこととしています。
 また、アジア太平洋地域の開発途上国における地球温暖化対策の取組の促進を図るため、環境省では2002年(平成14年)7月に、バンコクにおいて「第12回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」を開催しました。
 さらに、わが国として、第3回締約国会議(COP3)において発表した「京都イニシアティブ」に基づき、平成10年度から5年間で3,000人の地球温暖化対策関連分野の途上国における人材育成(平成10年度から平成12年度の3年間で約4,600人)、最優遇条件による円借款(平成9年12月から平成14年3月までで55件、約6,900億円の供与を約束)等を実施したのをはじめ、2001年度に新設された「地球環境無償」等の政府開発援助における開発途上国の支援、関係国際機関への財政的、技術的支援を引き続き行いました。

(2)京都メカニズムの実施に向けた取組
 京都メカニズムとは、京都議定書に基づく国としての数値約束を達成するための仕組みとして、市場原理を活用する3つの手法(共同実施(JI:Joint Implementation 京都議定書第6条)、クリーン開発メカニズム(CDM:Clean Development Mechanism 京都議定書第12条)、排出量取引(Emissions Trading 京都議定書第17条))のことを指します。国だけではなく、民間事業者の参加も促すことで、市場を活性化させ、環境効率性、経済効率性の高い対策が実施されることが期待されています。
 地球温暖化対策推進大綱においても、京都メカニズムが国内対策に対して補足的であることを原則としつつも、適切に活用していくことが重要としています。このための当面の措置として、CDM/JI事業に対する国の承認・支援体制の整備、CDM/JIによるクレジットの保有・移転等の登録を行う国別登録簿(National Registry)の整備、民間事業者等によるCDM/JI事業実施の支援、ホスト国の理解の増進と能力向上、2008年からの国際排出量取引の準備を行うこととしています。
 この方針を受けて、平成14年7月19日に開催された推進本部において、関係省庁からなる京都メカニズム活用連絡会(以下「連絡会」)を設置し、CDM/JIの投資国としての事業承認手続を決定するとともに、事業者等からの申請に対して事業承認を行うこととしました。連絡会では、これまでに2件の事業を承認しています。また、国別登録簿の整備について、経済産業省と環境省が共同して構築作業を開始しました。
 さらに、1999年度から継続してCDM/JI事業のフィージビリティ調査を実施しています。これは、途上国等において、バイオマス利用、廃棄物処分場の適正管理、植林等のプロジェクトについて、CDM/JIとして活用可能かどうかの調査を行っているもので、着実にCDM/JIの知見を蓄積してきています。また、民間事業者がCDM/JI事業を検討する際に用いる実施マニュアルの策定も進めています。
 2002年度からは、わが国の認証機関等が指定運営組織に指定されることを支援する観点から、CDM認証モデル事業やCDM運営組織整備事業等の人材育成事業を行っています。これにより、CDM事業の認証に係る知見の蓄積を図り、CDM認証機関の育成を図ることとしています。
 また、環境省によるホームページ上の情報提供や相談受付(「京都メカニズム情報コーナー(e-mail:kyotomecha@env.go.jp)」の開設等)及び、経済産業省による京都メカニズム関連プロジェクトに関する個別相談窓口(京都メカニズム・ヘルプデスク:e-mail:Kyomecha@meti.go.jp)の設置など、京都メカニズムの活用や地球温暖化対策に関する民間事業者等との連携の強化を図っています。

(3)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)における検討への率先的取組
 わが国の提案により、温室効果ガス排出・吸収量世界標準算定方式を定めるためのインベントリータスクフォースの中核的機能を平成11年に地球環境戦略研究機関内に設置し、その活動の支援を行いました。また、地球温暖化対策と密接に関連するIPCCの活動に対して、わが国は、各種報告書作成プロセスへの参画、資金の拠出、関連研究の実施など積極的に貢献を行っています。

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