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刊行にあたって

環境大臣
鈴木俊一

 平成15年版の環境白書をここに公表します。
 この1年間、国内外で環境問題に関わる様々な出来事がありました。わが国は、昨年6月、京都議定書を締結し、地球温暖化対策を推進する強い決意を世界に示しました。また、同年8月から9月にかけて、ヨハネスブルグサミットが開催され、持続可能な開発に向けた「具体的な行動」をさらに進めていく国際社会の決意が示されました。
 今日の環境問題は、つきつめると、国民の日常生活や通常の事業活動から生じる環境負荷があまりにも大きくなっていることに行き着きます。私たちは、自身の生活を根本から問い直すとともに、社会経済のあり方そのものを持続可能なものに変革していく必要があり、今、具体的な行動が求められているのです。
 そこで、本年の環境白書は、「地域社会から始まる持続可能な社会への変革」をテーマとし、日常生活や地域社会における足元からの自発的な取組が持続可能な社会への変革の第一歩となることを紹介することとしました。
 白書ではまず、地球環境の劣化が、環境・社会・経済の密接な関わりの中で深刻化していることを改めて訴えるとともに、地球規模の環境問題の解決に向け、個人・地域レベルでの足元からの取組が重要であることを明らかにしています。
 個人の取組については、製品の製造、輸送等による隠れた負荷も含めた日常生活に関わる環境負荷全体を考慮して一人ひとりが行動することが重要であることを示しました。その上で、一人ひとりの取組が広がることにより、行政、事業者などにも影響を与え、社会経済全体を変革していく可能性を持つことを明らかにしています。
 また、地域からの取組については、地域資源の的確な把握と主体間の幅広い連携、そして地域が一つの方向性を共有することにより、地域全体としてより良い環境を創っていこうという取組意識や能力『地域環境力』を高められることを示しました。その上で、地域環境力を備えた取組が環境保全と地域活性化を同時に達成する地域づくりのモデルとしてその他の地域に広がることにより、持続可能な社会への変革につながっていくことを明らかにしています。
 21世紀は「環境の世紀」であると言われています。これを現実化していくために、この白書を通じ、環境問題についての国民の皆様一人ひとりの関心を高め、活力ある持続可能な社会の構築に向けた具体的な行動を踏み出す後押しができれば、これに過ぎる喜びはありません。

平成15年6月

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