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第7節 

1 調査研究及び監視・観測等の充実

(1)研究開発の総合的推進
 平成13年7月に総合科学技術会議によって決定された「平成14年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」の中では、環境分野については、地球温暖化研究、ゴミゼロ型・資源循環型技術研究、自然共生型流域圏・都市再生技術研究の3事項に対して、特に重点化するとされています。
 この方針の下、地球温暖化研究については、地球環境研究総合推進費(環境省)、人・自然・地球共生プロジェクト(文部科学省)、地球温暖化が農林水産業に与える影響の評価及び対策技術の開発(農林水産省)、地球温暖化防止エネルギー対策・二酸化炭素固定化・有効利用プログラム(経済産業省)、固体高分子型燃料電池/水素エネルギー利用プログラム(経済産業省)、地球温暖化に対応した国土保全支援システムに関する研究及び地球環境変動が水資源に与える影響評価及び対策技術・手法開発(国土交通省)、ゴミゼロ型・資源循環型技術研究については、農業由来の有機質資源の循環利用に係る政策の評価手法の開発に関する研究(農林水産省)、リサイクルの推進(経済産業省)、社会資本ストックの管理運営技術の開発(国土交通省)、廃棄物処理等科学研究費補助金(環境省)、自然共生型流域圏・都市再生技術研究については、環境技術開発等推進費(環境省)、流域圏における水循環・農林水産生態系の自然共生型管理技術の開発(農林水産省)、健全な水循環の形成に関する研究(厚生労働省)、自然共生型国土基盤整備技術の開発(国土交通省)などの研究開発が展開されることとなっています。
 総合科学技術会議はリーダーシップを発揮しつつ、関連府省との連携の下で、これら課題を中心として個別研究開発を全体として整合的に集成、再構築したシナリオ主導型のイニシアティブの下に推進していきます。
 また、中央環境審議会では、環境研究・環境技術開発の重点的・戦略的推進方策について、引き続き審議を進めていきます。環境省では、その結果を踏まえた環境研究・環境技術開発の推進のための具体的施策を講じていきます。

(2)環境省関連試験研究機関の整備と研究の推進
 ア 独立行政法人国立環境研究所
 中期計画に基づき、重点研究分野を中心に、重点特別研究プロジェクト、政策対応型調査・研究、基盤的調査・研究、知的研究基盤の整備等の環境研究を推進していきます。また、環境情報の提供を進めていきます。

 イ 国立水俣病総合研究センター
 国立水俣病総合研究センターにおいては、水銀汚染問題に関するわが国の経験の蓄積を活用し、国際共同研究等の国際協力に貢献していくなど本章第10節1(1)イ(イ)に掲げた施策を進めていくこととしています。

(3)公害防止等に関する調査研究の推進
 環境省に一括計上する平成14年度の関係行政機関の試験研究機関(国立機関及び独立行政法人)の地球環境保全等に関する研究のうち、公害の防止等に関する各府省の試験研究費は、総額19億173万円であり、7省25試験研究機関等において、環境への負荷が少ない循環を基調とする経済社会システムの実現、自然と人間との共生の確保等環境基本計画に定める長期的な目標の達成に資するため、環境の現状の的確な把握、環境汚染による環境変化の機構解明、環境汚染の未然防止、汚染された環境の修復等環境研究技術の幅広い領域にわたり、85の試験研究課題を実施します。
 その内容は次のとおりです。

 ア 大気環境の保全に資するための研究
 各種発生源からの窒素酸化物、ベンゼン等大気汚染物質排出抑制技術の開発等に関する9課題の研究を継続して実施するほか、有害大気汚染物質・揮発性有機化合物の高効率・簡易型処理システムに関する研究等新たに2課題の研究を実施します。

 イ 水環境の保全に資するための研究
 排水対策技術、モニタリング技術、地下水浄化技術等に関する12課題の研究を継続して実施するほか、酵母による環境モニタリング及びリン、重金属等の回収除去に関する研究等新たに3課題の研究を実施します。

 ウ 土壌環境の保全に資するための研究
 汚染土壌の修復技術、リスク評価・管理等に関する5課題の研究を継続して実施します。

 エ 循環型社会形成に資するための研究
 廃棄物の処理技術、再利用技術の開発等に関する6課題の研究を継続して実施するほか、生分解性プラスチックの適正使用のための分解菌データベース作製に関する研究を新たに実施します。

 オ 生物多様性の保全に資するための研究
 我が国における生物多様性の保護・管理等に関する12課題の研究を継続して実施するほか、生物農薬の放飼が在来昆虫個体群の遺伝子多様性に及ぼす影響の解析等新たに3課題の研究を実施します。

 カ 都市・生活環境の保全に資するための研究
 都市における総合的な環境保全を図るため、騒音及び悪臭の発生源対策技術等に関する3課題の研究を継続して実施するほか、臭気環境目標の設定に必要な臭気に係る量反応関係に関する研究等新たに2課題の研究を実施します。

 キ 環境の監視、観測及び影響の予測評価技術の充実に資するための研究
 測定技術の精度向上及び信頼性の確保、測定対象の特性に見合った新たな計測技術の開発等に関する4課題の研究を継続して実施するほか、有害液体物質流出時の環境汚染モニタリングに関する研究等新たに2課題の研究を実施します。

 ク 化学物質等の環境リスク対策に資するための研究
 化学物質等のリスク評価、評価手法の開発等に関する13課題の研究を継続して実施するほか、化学物質等の環境リスク対策の基盤整備としてのトキシコゲノミクス研究等新たに3課題の研究を実施します。
 また地域における環境問題について地方公共団体と国が共同で研究を実施する地域密着型環境研究として、ノリ加工用海水の浄化再生に関する研究等3課題の研究を継続して実施するほか、ダイオキシン類による地域環境汚染の実態とその原因解明に関する研究等新たに2課題の研究を実施します。

(4)地球環境研究に関する調査研究等の推進
 地球環境保全のための科学的基盤づくりを進め、国際的取組に積極的に貢献するため、平成14年度においても「地球環境保全調査研究等総合推進計画」を策定し、調査研究、観測・監視等の総合的な実施体制を確保します。さらに、総合科学技術会議の地球温暖化研究イニシアティブに基づき、地球温暖化の現状把握と今後予想される自然や社会・経済の影響、それらに的確に対応するための各種技術や方策について、政府一体となって戦略的・集中的に調査研究を行います。
 「地球環境研究総合推進費」については、予算額約29億円を計上し、引き続き学際的、国際的、省際的な観点から地球環境研究の総合的な推進を図ります。さらに、平成14年度からは、従来のボトムアップ型のシステムに加え、トップダウン型のファンディングシステムを創設し、行政主導による戦略的・先導的な大規模研究開発を開始します。
 平成13年度に創設した、「地球環境保全試験研究費」については、引き続き地球温暖化の防止に関する研究の中でも、特に政府としての推進・調整が重要である関係行政機関の試験研究機関又は関係行政機関の行う研究を、政府として強力かつ効果的に進めます。
 アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)については、平成14年3月にマニラ(フィリピン)で開催された第7回政府間会合における決定に基づき、平成11年に神戸市内に開設されたAPNセンターを中核として、地域内研究活動の支援等の充実・強化を図ります。
 「地球環境戦略研究機関」(IGES)においては、第1期戦略研究プロジェクトの成果を踏まえ、気候変動や都市環境管理などのテーマに引き続き取り組むとともに、平成13年度からの第2期戦略研究計画に基づき新たに環境と経済などのプロジェクトを開始し、アジア・太平洋地域を中心とする国際的連携の下で21世紀の持続可能な社会の実現のための戦略研究を推進していきます。

(5)地球環境に関する観測・監視
 観測・監視については、世界気象機関(WMO)の全球大気監視(GAW)計画の一環として、温室効果ガス、CFC、オゾン層、有害紫外線等の定常観測を引き続き実施するとともに、日本周辺及び西太平洋海域における洋上大気・海水中の二酸化炭素等の定期観測、オゾンレーザーレーダーを用いたオゾンの高度分布の測定及びエーロゾルレーダーを用いたエーロゾルの高度分布の測定を継続します。
 また、平成14年度に打ち上げ予定の環境観測技術衛星(ADEOS-II)に搭載する成層圏オゾン層等観測機器の最終試験及び打ち上げ後の機能確認を行うとともに、温室効果ガスの観測を主目的とするセンサー(SOFIS)の開発研究を進める等人工衛星による観測・監視手法等の開発利用を一層推進します。さらに、海洋地球研究船「みらい」等を用いた観測研究、観測技術の研究開発を引き続き推進するとともに、深海地球ドリリング計画を推進し、地球規模の諸現象の解明・予測等の研究開発を推進します。
 さらに、第44次南極地域観測隊が昭和基地を中心に、海洋、気象電離層等の定常的な観測の他、地球規模の気候変動の解明を目的とした地球規模のモニタリング、研究観測等を実施します。
 また、全国の気象官署における観測開始以降の観測資料をデジタル化し、地球温暖化の状況等に関する調査研究を推進します。さらに、地球温暖化に伴う全球的な気候変動の予測を行い、その結果を「地球温暖化予測情報」として公表します。

(6)基礎的・基盤的研究の推進
 環境技術開発等推進費による基礎研究開発課題として、平成12年度に採択した「環境中の複合化学物質による次世代影響リスクの評価とリスク対応支援に関する研究」、「遺伝子地図と個体ベースモデルに基づく野生生物保全戦略の研究」の2課題の研究を継続して実施します。
 また、総合科学技術会議の「平成14年度の科学技術に関す髣算、人材等の資源配分の方針」で特に重点を置くとされた研究イニシアティブの分野のうち、「自然共生型流域圏・都市再生技術研究」を推進するため、公募方式により採択した研究開発プロジェクトに対して助成することにより、環境技術の開発・普及の促進を図ります。

(7)環境基本計画推進調査
 環境基本計画推進調査は、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築するという環境基本計画の長期的目標の実現に向けた課題に対し、関係府省連携による調査研究を実施するものです。
 環境省に一括計上された平成14年度の環境基本計画推進調査費は1億5,000万円であり、平成13年度からの継続調査を含め、幅広い調査研究を実施します。

(8)環境保全に関するその他の試験研究
 環境保全に関する試験研究では、他にも下記のようなものがあります。
 電子デバイス製造プロセスで使用するエッチングガス(PFC)の代替ガス・システム及び代替プロセスの開発、地球上の二酸化炭素の分布を調査する広域環境影響モニタリング調査等を実施するほか、温室効果ガスの固定化・有効利用・処分技術の研究開発として、二酸化炭素の海洋隔離に伴う環境影響予測技術の開発、二酸化炭素の地中貯留技術の開発、二酸化炭素から次世代の液体燃料であるメタノールを合成する技術の開発、エネルギー効率が高く、オゾン層を破壊せず、地球温暖化効果の小さい特性を備えたCFC等の新規代替物質の技術開発、二酸化炭素や環境負荷物質の排出の少ない環境調和型生産技術の研究開発、バイオテクノロジーを利用した植物による原料生産技術を確立するための研究開発等を引き続き実施します。
 また、環境への負荷が小さく、新たな海洋空間の創造が可能な超大型浮体式海洋構造物(メガフロート)に関する研究開発、窒素酸化物を大幅に削減できる環境低負荷型舶用推進プラント(スーパーマリンガスタービン)の研究開発、同ガスタービンを搭載し、環境的にも経済的にも優れた次世代内航船(スーパーエコシップ)の研究開発を引き続き実施します。
 油流出の際、精度の高い漂流予測が必要であることから、漂流予測手法の高度化を図るための研究・開発を引き続き行います。
 また、自然環境に配慮した河川管理の取組の一つとして、岐阜県の木曽川三派川地区に設置した世界最大規模の実験河川を有する自然共生研究センターにおいて、河川湖沼の自然環境保全・復元のための基礎的・応用的研究を行います。
 さらに、生態学的観点より河川を理解し、川のあるべき姿を探ることを目的として河川生態学術研究を実施します。
 循環型社会及び安全な環境の形成のための建築・都市基盤整備技術の開発、シックハウス対策技術の開発等を引き続き実施するとともに、自然共生型国土基盤整備技術の開発、地球温暖化に対応した国土保全支援システムに関する研究等に着手します。
 環境負荷を低減し持続的農業を推進するための革新的技術の開発、農林水産生態系におけるダイオキシン類をはじめとする内分泌かく乱物質の動態解明とその影響防止技術の開発、家畜排せつ物や食品廃棄物等の有機性資源のリサイクル技術の開発、農林業に由来する廃棄物からバイオマスエネルギーを生産する技術の開発、野生鳥獣による農林漁業被害を軽減する管理技術の開発等を引き続き実施するとともに、地球温暖化が農林水産業に与える影響の評価や二酸化炭素、メタン等の温室効果ガスの排出削減・固定化技術の開発、流域圏における水・物質の循環についてのモニタリング、自然循環機能を維持向上させるための管理技術の開発に着手します。
 高度電磁波利用技術に関する国際共同研究、衛星搭載センサによるグローバル計測技術、環境情報の高度利用技術の研究開発等、電磁波を利用した地球環境計測技術に関する開発・調査研究を実施します。
 また、全球的地球環境変動を総合的に観測・把握してその知見を活用し、「気候予知」など高精度な地球環境変動予測の実現を図ることは、地球規模の諸問題の解決に不可欠という認識の下、地球の7割を占めるにもかかわらず従来、陸域に比べ情報が不足していた海洋の観測を飛躍的に向上させるため、海洋自動観測フロート約3千個を全世界の海洋に展開し、地球規模の高度海洋監視システムの構築を目指すARGO計画を推進するとともに、二酸化炭素等の温室効果気体の直接観測を可能とする成層圏プラットフォームの研究開発を推進します。
 さらに、地球規模の複雑な諸現象を忠実に再現することを目指した超高速計算機システム「地球シミュレータ」の本格的な運用を開始し、地球温暖化予測研究等の推進を図ります。
 異常気象や地球温暖化に伴う水資源利用可能量や、降水量のパターンの変動に対応するため、水資源利用可能量の変化、ダム等の機能への影響、水需給バランス等への影響等を様々な気候変動パターンに応じて予測するシステムの技術開発を行うとともに、これらの影響を回避・最小化するための対策手法・技術の開発を行います。
 東京都と神奈川県の県境付近をモデル地区として、交通流データと大気汚染データをリアルタイムで交通管制センターに集約し、その相関関係を体系的に分析するとともに、信号制御の高度化、交通情報板を用いた迂回誘導、都県境を越える信号制御の連動等により地区全体の交通公害の発生を極小化させるための交通管理の在り方について検討します。

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