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環境白書の刊行にあたって

環境大臣 大木 浩

 平成14年版の環境白書をここに公表します。
 「持続可能な開発」を掲げた地球サミットから10年。その間、私たちは環境問題を解決すべく努力してきました。
 しかし、今日の環境問題は、廃棄物問題や自動車公害など地域的な問題から、地球温暖化や生物多様性の喪失など空間的、時間的広がりを持つ問題にまで拡大し、深刻化しています。
 こうしたなか、政府は、「21世紀『環の国』づくり会議」を開催し、地球規模での国際協力の環、物質循環の環、生態系の環等の実現を訴え、経済、財政の基本方針を定める経済財政諮問会議でも重点的に推進すべき分野の第一として「循環型経済社会の構築など環境問題への対応」を挙げるなど、国政全体において環境保全政策の重要性が高まっています。
 本年の環境白書は、「動き始めた持続可能な社会づくり」をテーマにしています。社会全体の構造改革に取り組む今こそ、持続可能な社会経済システムヘと変革するよい機会であることを示し、その萌芽ともいえるさまざまな具体的取組とその背景にある新しい考え方を紹介しています。
 白書ではまず、持続可能な社会づくりのためには、社会経済システムと自然環境の二つの健全な循環が必要であること、経済成長を上回る環境効率性の向上が必要であり、また可能であることを示し、これらの実現のために、市民や企業が積極的に進めているさまざまな取組や、政府における新たな対応を紹介しています。
 次いで、地球環境の限界を考えれば、今日の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済システムの抜本的な見直しを視野に入れた対策を早急に講じる必要があることを指摘しています。
 その上で、これらの取組は長期的には経済にプラスになり得るとともに、わが国の国際社会に対する貢献策となることを明らかにしています。
 ヨハネスブルグサミットの開催を迎えた本年、私たちはこの機会をとらえ、今後どのような選択を行い第一歩を踏み出すべきか考える必要があります。
 この白書が、環境問題についての国民の皆様一人ひとりの関心を高め、百年先を見通した活力ある持続可能な社会づくりの具体的な行動の参考となれば、これに過ぎる喜びはありません。

平成14年5月

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