3 二次的自然環境の維持、形成
(1)森林
雑木林、ため池、谷津田(谷戸)など、様々な形で人間が利用してきた二次的自然環境は、経済的価値の減少等により管理が不十分となり、また様々な開発の対象地とされてきた結果、このような環境を生息・生育地とする野生生物が減少していること等から、里地自然地域の適切な保全方策を検討するための調査を継続します。
身近な里山林や都市近郊林については、かつては薪炭材の伐採、落葉の採取等人々の生活の中で継続的に利用され維持・管理されることによって多様性豊かな二次的自然環境を形成してきたところです。
このため、森林の新たな利用を推進する中で、新たに、多様な利用活動の場となる「里山利用林」の設定、利用活動を通じてその保全・整備に寄与する「森林の里親」の募集、新たな保全・利用活動の立ち上げに対する支援等を行い、行政、森林所有者、地域や都市の住民等の連携・協力による自立的な保全・整備・利用活動を推進します。
また、森林の有する多様な機能の持続的な発揮のため、森林計画制度に基づき、健全な森林を維持・造成するとともに、林地開発許可制度の適正な運用により、森林の無秩序な開発を防止し、森林の機能の維持に努めます。特に森林整備事業の計画的な推進により、健全で活力ある森林の育成のための保育・間伐、長期育成循環施業(皆伐をせず、抜き伐りを繰り返すことにより長期間にわたって森林状態を維持し、公益的機能の維持増進を図る新たな施業)の導入、森林所有者の自助努力のみでは適正な管理が難しい森林における公的な機関による森林整備、生物多様性保全のための森林整備等を実施します。
さらに、持続可能な森林経営に関する基準・指標に係るデータ等を把握するとともに、その変化を継続的にモニターし、持続可能な森林経営の推進及び地域森林計画等の樹立に資するため、森林資源モニタリング調査を引き続き実施します。
治山事業においては、豊かな環境づくりに配慮し、荒廃山地の復旧整備、機能の低位な森林の整備等を緊急かつ計画的に推進するとともに、事業の実施に当たっては、必要に応じて周辺の生態系に配慮する等の対策に積極的に取り組みます。
また、災害に強い森林づくりを推進するため、機能が低下した保安林等について本数調整伐等の森林整備を進めるほか、住民参加による生活環境保全林整備事業を昨年に引き続き実施します。
保安林については、適正な配備、維持管理及び整備を推進します。
一方、森林や林業への理解を深め、国民参加による森林の緑づくり活動を推進するため、森林ボランティアの指導者等の人材育成等を実施します。
国有林野においては、平成10年10月に成立した国有林野事業改革関連法に基づき、その管理経営の方針を公益的機能の維持増進を旨とするものへ転換し、これまで国有林野全体の5割を占めていた木材生産林を資源の循環利用林として2割に縮小する一方、山地災害の防止、水源のかん養等の機能発揮を重視する森林については水土保全林に、森林生態系の保全、保健文化等の機能を第一に発揮する森林については森林と人との共生林に区分し、これらをいわゆる公益林として8割に拡大したところです。このような区分に基づき、林木だけでなく下層植生や動物相、表土の保全等森林生態系全般に着目し多様な森林の整備を行います。その中で育成複層林・天然生林施業の推進や育成単層林の適正な整備、広葉樹林の積極的な造成等を図るなど、自然環境の維持・形成に配慮した森林施業を推進します。
さらに、森林病害虫等の防除については、森林病害虫等防除法等に基づき松くい虫をはじめとする森林病害虫等に対する各種防除措置等を、環境の保全に配慮しつつ総合的に実施します。
このほか、保全管理水準の維持・向上を図るべき森林について、森林保全推進員等による森林パトロールや林野火災予防資機材の配備等の保全管理活動、防火森林・防火林道の整備等を行うとともに、全国山火事予防運動の実施等啓発活動を推進します。
国民参加による森林づくりを図るため、分収林制度を積極的に推進するとともに、「緑と水の森林基金」を活用し、森林資源の整備、利用等に関する総合的な調査研究、普及啓発等を推進します。
(2)農地
環境保全、自然に恵まれた美しい景観の提供といった農業・農村の持つ公益的機能を発揮させるという観点から適切な形での農地等の維持・形成を図ります。ため池等の周辺において生態系空間(ビオトープ)を保全する事業や生活環境の整備等を生態系の保全に配慮しながら総合的に行う事業等に助成し、多様な生物相と豊かな環境に恵まれた農村空間(エコビレッジ)の形成を促進するほか、農村地域に存在する生物の生息・生育地(樹林、池等)と農業用施設とのネットワーク化等、生物多様性を確保するための手法開発を進めます。
棚田で農業生産活動が行なわれることにより生ずる国土の保全、水源のかん養等の多面的機能を持続的に発揮していくため、棚田等の保全・利活用活動を推進するほか、農村地域の美しい景観や環境を良好に整備、管理していくために、地域住民、地元企業、地方公共団体等が一体となって身近な環境を見直し、自ら改善していく地域の環境改善活動(グラウンドワーク)の推進を図るための事業を行います。
また、自然環境の維持・形成に資するため、農業集落排水事業を促進するとともに、地域の実情に応じ、特定環境保全公共下水道等の整備を進めます。
農業においては、土づくり等を通じ化学肥料、農薬の使用の低減等を図る環境保全型農業の全国的な展開の一層の推進を図るため、たい肥等の活用による土づくりと局所施肥、天敵利用等による化学肥料・農薬の使用の低減を一体的に行う生産方式である「持続性の高い農業生産方式」を導入しようとする農業者に対する金融・税制上の特例措置を講じます。また、この持続性の高い農業生産方式の普及・定着のため、生産方式導入の拠点となる技術確立ほ場や土壌診断施設の整備を進めるとともに、たい肥等を含めた適正使用指針の策定等の地力増進対策の実施、有機性資源の循環利用促進等を重点的に実施し、農業の持つ自然循環機能の維持増進を図ります。また、家畜排せつ物の適正な処理と耕種農業におけるたい肥の利用を促進するため、畜産環境保全に関する農家指導及び耕種部門との連携、家畜排せつ物の処理利用施設の整備等を行います。
市街化区域内農地のうち、生産緑地地区に指定されたものについては、緑地としての機能が維持されるよう、適正な保全を図るほか、都市住民の交流の場としての活用を図るため、市民農園整備事業等により、市民農園の整備を推進します。