1 地球温暖化の防止
(1)気候変動枠組条約に基づく取組
気候変動枠組条約*により、わが国をはじめとする先進締約国等は、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量を1990年代の終わりまでに従前のレベルに戻すことが条約の目的に寄与するものであるとの認識の下、政策を採用し、措置をとり、その内容について、締約国会議へ情報(通報)を送付することが義務付けられています。
1995年(平成7年)にベルリンで開催された同条約の第1回締約国会議において、現行の条約上の規定で不十分とされた2000年以降の期間に先進締約国等が講ずべき対策やその目標について、検討するプロセスを開始することとなりました(ベルリン・マンデート)。これを受け設置されたアドホックグループにおける検討等の国際的努力の結果、1997年(平成9年)12月に京都で開催された第3回締約国会議において、先進締約国全体で、2008年から2012年までの間に1990年比で5%以上の排出削減を行うことが規定された京都議定書が全会一致で採択されました。(序説第2章第2節1参照) 2000年(平成12年)11月にオランダのハーグで開催された第6回締約国会議では、京都議定書の早期発効を目指し、各国が京都議定書を締結可能とするべく、議定書の詳細について合意を得ること、及び技術移転や能力育成の強化など枠組条約に基づく途上国支援策について合意を得ることを目的に議論がなされました。今回会合では、吸収源の取扱い、京都メカニズムの利用の制限、遵守制度のあり方が、相互に関連した一体的なものとして交渉が行われました。最終的には合意に至らず、平成13年に開催される再開会合に議論を持ち越す結果となりましたが、各国の立場・考え方の背景がより一層明確化され、相互認識が深まるとともに、議論の途中において、先進国間で、各国の意見が合意に非常に近づいたことは、今後の交渉の進展に貢献すると考えられます。
環境省では、クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施事業についての実現可能性調査を実施し、有望なプロジェクトの発掘や知見の蓄積に努めています。また、2000年(平成12年)7月に、マレーシアのペナン島において、アジア太平洋地域の開発途上国における温暖化対策を支援するため、「第10回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」を開催しました。
さらに、わが国として、地球温暖化防止京都会議において発表した「京都イニシアティブ」に基づき、平成10年度から5年間で3000人の温暖化対策関連分野の途上国における人材育成(平成10年度から平成11年度の2年間で約2,800人)、最優遇条件による円借款(1997年12月から2000年3月までで33件、約4,770億円を締結)等を実施したのをはじめ、太陽光・風力などの再生可能エネルギーの施設整備のための無償資金協力等の政府開発援助における開発途上国の支援、関係国際機関への財政的、技術的支援を引き続き行いました。
*気候変動枠組条約
地球温暖化防止に対する取組を国際的に協調して行っていくため、1992年(平成4年)5月に採択され、1994年(平成6年)3月21日に発効した。本条約は、気候系に対して危険な人為的影響を及ぼすこととならない水準において、大気中の温室効果ガス濃度を安定化することをその究極的な目的とし、締約国に温室効果ガスの排出・吸収目録の作成、温暖化対策のための国家計画の策定とその実施等の各種の義務を課している。
(2)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)における検討への率先的取組
平成12年に、IPCC第3次評価報告書(平成13年完成予定)及び吸収源特別報告書(平成12年5月完成)の執筆者としてわが国の専門家が参画しました。また、わが国の提案により、温室効果ガス排出・吸収量世界標準算定方式を定めるためのインベントリータスクフォースの中核的機能を平成11年に地球環境戦略研究機関内に設置し、本格的な活動を開始しました。このように温暖化対策と密接に関連するIPCCの活動に対して、わが国は、IPCC副議長を務めていることをはじめ、各種報告書作成プロセスへの参画、資金の拠出、関連研究の実施など積極的に貢献を行っています。