2 公害紛争処理等
(1)公害紛争の処理状況
公害紛争については、総理府(平成13年1月6日以降は総務省)の外局として設置された公害等調整委員会及び都道府県に置かれている都道府県公害審査会等が公害紛争処理法の定めるところにより処理することとされています。
公害紛争処理法に定められている公害紛争処理手続には、あっせん、調停、仲裁及び裁定の四つがあり、これらのうち裁定には、公害に係る被害についての損害賠償責任の有無及び賠償すべき損害額を判断する責任裁定と、加害行為と被害の発生との間の因果関係の存否のみについて判断する原因裁定の2種類があります。
公害等調整委員会は、裁定を専属的に行うほか、重大事件(水俣病やイタイイタイ病などの事件)、広域処理事件(航空機騒音や新幹線騒音)等について、あっせん、調停及び仲裁を行い、都道府県公害審査会等は、それ以外の紛争について、あっせん、調停及び仲裁を行っています。
ア 公害等調整委員会に係属した事件
平成12年中に公害等調整委員会が受け付けた公害紛争事件は2件で、これらに前年から繰り越された9件を加えた計11件(調停事件7件、責任裁定事件3件、原因裁定事件1件、)が平成12年中に係属しました。係属した事件の内訳は、次のとおりです。
(ア)調停事件
1) 豊島産業廃棄物水質汚濁被害等調停申請事件 3件
2) 中海本庄工区干陸事業水質汚濁被害等調停申請事件 2件
3) 四日市市産業廃棄物処分場水質汚濁防止等調停申請事件 1件
4) 水俣病に係る損害賠償調停申請事件 1件
(イ)責任裁定事件
1) 尾鷲市における養殖真珠被害責任裁定申請事件 1件
2) 佐伯市における養殖真珠被害責任裁定申請事件 1件
3) 奄美大島における漁業被害等責任裁定申請事件 1件
(ウ)原因裁定事件
1) 杉並区不燃ゴミ中継施設健康被害原因裁定申請事件 1件
このうち平成12年中に終結した事件は、豊島産業廃棄物水質汚濁被害等調停申請事件3件外1件で、残り7件が平成13年に繰り越されました。
イ 都道府県公害審査会等に係属した事件
平成12年中に都道府県の公害審査会等が受け付けた公害紛争事件は23件で、これに前年から繰り越された64件を加えた計87件(調停事件85件、義務履行勧告申出事件2件)が平成12年中に係属しました。このうち平成12年中に終結した事件は39件で、残り48件が平成13年に繰り越されました。
ウ 公害紛争処理に関する連絡協議
公害紛争の適切な処理を図るため、公害紛争処理連絡協議会、公害紛争処理関係ブロック会議等を開催し、公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等の相互の情報交換・連絡協議に努めました。
(2)公害苦情の処理状況
ア 公害苦情処理制度
公害に関する苦情は、地域住民の生活に密着した問題であり、その適切な処理は、住民の生活環境を保全するためにも、また、将来の公害紛争の未然防止のためにも極めて重要です。
このような観点から、公害紛争処理法においては、地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるべきものと規定され、さらに、都道府県及び市区町村は公害苦情相談員を置くことができるとされています。
また、公害等調整委員会は、地方公共団体の長に対し、公害に関する苦情の処理状況について報告を求めるとともに、地方公共団体が行う公害苦情の適切な処理のための指導、情報の提供を行っています。
イ 公害苦情の現状
平成11年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口が受け付けた苦情件数は、7万6,080件です。
このうち、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭のいわゆる「典型7公害」の苦情件数は5万8,915件で、前年度に比べて6,013件(9.3%)減少しました。
ウ 公害苦情の処理状況
平成11年度において、典型7公害の苦情について、公害苦情の申立てから処理までに要した期間をみると、1か月以内に67.6%と約3分の2が処理されています(図4-8-2)。
エ 公害苦情処理に関する指導等
地方公共団体が行う公害苦情の処理に関する指導等を行うため、公害苦情の処理に当たる地方公共団体の担当者を対象とした公害苦情相談研究会及び公害苦情相談員等ブロック会議を開催しました。
(3)環境犯罪の取締り
ア 環境犯罪の検挙状況
警察では、環境を破壊する悪質な行為を環境犯罪ととらえ、特にわが国で深刻な問題となっている産業廃棄物の不法投棄事犯等に重点を置いた取締りを推進しています。平成11年中に検挙した環境犯罪の検挙件数は、2,534件で、過去5年間における環境犯罪の法令別検挙件数の推移は、表4-8-2のとおりです。
イ 廃棄物事犯の取締り
警察が平成11年中に廃棄物処理法違反で検挙した2,469件の態様別検挙件数は、表4-8-3のとおりです。このうち不法投棄事犯が76.2%、また、産業廃棄物事犯が44.3.%を占めています。
ウ 水質汚濁事犯の取締り
警察では、平成11年中に水質汚濁防止法違反により水質汚濁事犯を6件検挙しました。このうち、工場等が水質汚濁防止法に定められた基準に違反して汚水を排出した排出基準違反が5件でした。
エ 検察庁における公害関係法令違反事件の受理・処理状況
最近5年間において全国の検察庁で取り扱った公害関係法令違反事件の受理・処理人員の推移は、表4-8-4のとおりであり、平成12年中の通常受理人員は、3,393人で前年より19人減少しています。
平成12年中における罪名別公害関係法令違反事件の通常受理人員は、表4-8-5のとおりで、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」違反の2,812人が最も多く、全体の82.9パーセントを占め、以下、「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」違反(465人)、「水質汚濁防止法」違反(26人)の順となっています。
平成12年中における罪名別公害関係法令違反事件の処理人員は、表4-8-6のとおりで、起訴人員は2,177人、不起訴人員は1,162人、起訴率は65.2パーセントとなっています。起訴人員のうち公判請求された者は472人、略式請求された者は1,705人となっています。