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第1節 

1 地球環境保全に関する国際的な連携の確保

(1)国際機構等による連携

ア 地球サミットのフォローアップ
(ア)国際的な取組
a 持続可能な開発委員会(CSD)
 1992年(平成4年)の地球サミットにおいて採択されたアジェンダ21第38章に基づき、1992年(平成4年)の第47回国連総会における設立の決議を経て、1993年(平成5年)6月国連経済社会理事会の下部組織としてCSDが設立された。
 CSDは我が国を含めた国連加盟国53か国から成り、その主要目的は、?アジェンダ21及び環境と開発の統合に関する国連の活動の実施状況の監視、?各国がアジェンダ21を実施するために着手した活動等についてまとめたレポート等の検討、?アジェンダ21に盛り込まれた技術移転や資金問題に関するコミットメント(約束)の実施の進捗状況のレヴュー、?リオ宣言及び森林原則声明に盛り込まれた諸原則の推進、?アジェンダ21の実施に関する適切な勧告の経済社会理事会を通じた国連総会への提出等である。
 1993年(平成5年)6月の第1回会合以来、毎年春に会合を開催しており、1999年(平成11年)4月に開催された第7回会合では、1997年(平成9年)の国連環境開発特別総会(UNGASS)で決定された「多年度作業計画」(5-1-2表)に従い、分野別のテーマとして海洋、分野横断的テーマとして消費生産パターンの変更、経済分野として観光についての検討が行われ、今後の行動の指針となる10の決議、閣僚クラスのハイレベル会合の「議長総括」等が採択された。


b 国連環境開発特別総会(UNGASS)
 1997年(平成9年)6月、ニューヨーク国連本部において、地球サミットで採択されたアジェンダ21の実施状況を点検、評価することを目的として、国連環境開発特別総会(UNGASS)が開催された。この会議では、アジェンダ21の実施状況が必ずしも十分ではないとされ、2002年(平成14年)の国連総会による包括的レビュー(リオ+10)においてはより大きな目立った進展が示されるされることを保証するとの決意表明と、今後優先的に取り組むべき課題を明らかにした「アジェンダ21の一層の実施のための計画」が採択された。なお、我が国は、環境ODAを中心とした今後の環境分野の国際協力についての基本的理念と、今後の協力の柱となる「21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD)」を、同特別総会における橋本総理(当時)演説において表明した。
(イ)アジア・太平洋地域における取組
a アジア・太平洋環境会議(エコ・アジア)
 環境庁は、各国の環境大臣等が一堂に会して自由な意見交換を行う場を提供することにより、この地域における環境分野での協力を推進し、持続可能な開発の実現に資することを目的として、アジア・太平洋地域各国の環境大臣及び関係国際機関の代表等の参加を得て、1991年(平成3年)以来「アジア・太平洋環境会議(エコ・アジア)」を開催している。
 8回目の会合となったエコ・アジア’99は、我が国を含むアジア・太平洋地域17か国(8か国から環境大臣が出席)及び11国際機関の代表の参加を得て、1999年(平成11年)9月4日及び5日の両日、北海道札幌市で開催された。同会合では、前年に引き続き、主要テーマとして「気候変動問題」及び「リオ+10に向けた取組」に焦点を当て、アジア・太平洋地域としての取組について率直な意見交換を行った。
b 環日本海環境協力会議
 北東アジア地域の環境問題に関する環境行政レベルでの情報交換及び政策対話を行い、アジェンダ21で強調されている地域協力の促進を図るため、1992年(平成4年)より毎年、「環日本海環境協力会議」が開催されている。
 1999年(平成11年)11月京都府舞鶴市で開催された第8回会議では、地方自治体の環境保全及び環境協力の取組に焦点を当てるとともに、気候変動問題、インターネットの活用について活発な議論が行われた。
c 日本・中国・韓国三ヶ国環境大臣会合
 北東アジア地域の中で政治的、経済的な中核をなす日本・中国・韓国の3か国の環境大臣が、本地域のみならず、地球規模での環境問題に関する対話や協力関係の強化等を図るため、1999年(平成11年)1月より会合を持つこととなった。第2回会合は2000年(平成12年)2月に中国・北京で開催され、「環境共同体意識の向上」、「淡水(湖沼)汚染防止」、「陸上起因の海洋汚染防止」、「環境産業分野」において、今後3か国共同環境プロジェクト(TEMMプロジェクト)を形成・推進していくことを決定するとともに、中国の最重要課題である中国西部の生態系修復等に関連して、3国共同で協力を進めることで意見が一致した。
 また気候変動問題に関して、3国がCOP6の成功のために努力し、京都議定書の可能な限り早期の発効を目指すことで一致した。
 なお、第3回については日本で開催される予定である(時期は未定)。
d ESCAP/北東アジア環境協力高級事務レベル会議
 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は、アジェンダ21のフォローアップに資するものとして、環境と天然資源開発委員会の下に、我が国を含む北東アジア地域(日本、韓国、中国、ロシア、モンゴル、北朝鮮)6か国が、地域協力が不可欠な地球規模の環境問題や越境汚染につき意見交換や協力の枠組みを作る目的で1993年(平成5年)以来北東アジア環境協力高級事務レベル会議を開催している。
 2000年(平成12年)3月に、韓国・ソウルにて開催された第6回会合では、本会議のもと具体的な協力プロジェクトを実施する枠組みである「北東アジア環境協力プログラム(NEASPEC)」の制度的・財政的問題、及び実施されているプロジェクトの推進、並びに2000年(平成12年)8月31日〜9月5日に北九州市で開催予定のESCAP第4回アジア太平洋環境大臣会議への北東アジア地域から発信すべき内容について議論した。
e ’99こどもエコクラブアジア太平洋会議
 アジア太平洋地域の子どもたちによる自発的な環境保全活動を推進するため、日本の「こどもエコクラブ」会員と同地域諸国で同様の活動を行っている子どもたちの交流と連携を図るとともに、日米コモンアジェンダの環境教育プロジェクトの推進のため、平成8年度から開催している。
 平成11年度は6月に東京都において開催され、アジア太平洋地域9か国の子ども達が活発な意見交換、交流等を行った。
f アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)
 アジア太平洋地域における地球環境研究を支援し、地域的協力の推進等を行うために設けられたAPNについては、兵庫県の協力を得て、その機能を強化するためのAPNセンターを1999年(平成11年)8月に神戸市に設置し、推進基盤の充実・強化を図った。また、2000年(平成12年)3月には、イスラマバード(パキスタン)において、第5回政府間会合が開催され、平成12年度の支援プロジェクトなどが決定された。
g 地球環境戦略研究機関(IGES)
 総理の私的諮問機関である「21世紀地球環境懇話会」の提言(1995年(平成7年)1月)を受けて設立した、「地球環境戦略研究機関」において、アジア太平洋地域を中心に、地球環境の危機に対処するための戦略研究を実施している。現在10か国の行政機関、四つの国際機関、21の国際的研究機関が地球環境戦略研究機関設立憲章に署名し、運営・研究に協力している。1999年6月には、41の国から300名を超える研究者を集め、地球環境変動の人間社会的側面研究者による公開会合を開催した。また、7月には、IPCCの技術支援ユニットが地球環境戦略研究機関内に設置され、活動を行っている。
(ウ)国内における取組
a 「アジェンダ21」行動計画の実施
 アジェンダ21の国別行動計画については、地球サミットにおいて採択されたアジェンダ21においてその準備及び検討が示唆されており、1992年(平成4年)のミュンヘンサミット及び1993年(平成5年)の東京サミットにおいて、1993年(平成5年)末までに策定し、公表することとされた。これを受け、政府は1993年(平成5年)12月に開催された地球環境保全に関する関係閣僚会議において「『アジェンダ21』行動計画」を決定し、CSD事務局に提出した。
 この「『アジェンダ21』行動計画」は、「アジェンダ21」の章立てに応じたプログラム分野ごとに我が国が今後実施しようとする具体的な事項を行動計画としてとりまとめたものである。本行動計画にのっとり、持続可能な開発の達成に向けた種々の取組がなされている。
b ローカルアジェンダ21
 アジェンダ21においては、その実施主体として地方公共団体の役割を期待しており、地方公共団体の取組を効果的に進めるため、ローカルアジェンダ21を策定することを求めている。これを受けて、1994年(平成6年)6月に「ローカルアジェンダ21策定に当たっての考え方」として指針が取りまとめ、公表した。また、1995年(平成7年)6月には、地域の環境計画づくりを通じて得られてきたこれまでの経験では必ずしも十分でないと思われる配慮事項やポイントを特に重点的に取りまとめた「ローカルアジェンダ21策定ガイド」を公表した。
 なお、環境庁が、都道府県及び政令指定都市を対象に、ローカルアジェンダ21の策定状況調査を行ったところ、1999年(平成11年)5月31日現在で42都道府県、12政令指定都市、58市区町で既に策定済みとの回答を得た。
c 持続可能な開発のための日本評議会(JCSD)
 「アジェンダ21」の「持続可能な開発の実現のため、各国は、政府、産業界、NGO等が連携して取組を行うための体制を整えることが必要」との要請を受けて、平成8年、「持続可能な開発のための日本評議会(JCSD)」が設立され、持続可能な開発に関して、政府、産業界、非営利組織等我が国の社会の主たる構成メンバー相互の対話を定期的に行っている。平成12年1月には、アジア地域等11か国の「持続可能な開発のための国民評議会」(設立準備中の国も含む)の参加を得て、東京でワークショップを開催し、各国の経験の交流等を行った。

イ 国連における活動
 国連環境計画(UNEP)は、1972年(昭和47年)にストックホルムで開催された国連人間環境会議の結果として設立された国連機関であり、本部はケニアのナイロビに置かれている。UNEPの役割は、地球環境への取り組みの方向を設定し、国連内の持続可能な開発における環境分野の一貫した実施を促進し、かつ地球環境の権威ある擁護者として活動することであり、オゾン層保護、気候変動防止、廃棄物抑制、海洋環境保護、水質保全、土壌劣化防止(砂漠化防止を含む)、森林保全、生物多様性の保全等の環境問題の幅広い分野で活動してきた。また、近年は地球環境アセスメントを取りまとめた報告書(地球環境概況)の作成や、国際シンポジウム等の開催など、環境関連の情報提供に大きな役割を果たしている。
 UNEPに対して我が国は、創設当初から管理理事国としてUNEPの管理理事会に参画するとともに、国連環境基金に対し、1999年(平成11年)は約485万ドルを拠出する等多大の貢献を行ってきた。
 また、1992年(平成4年)10月に、UNEPの内部機関であるUNEP国際環境技術センターが、日本で初めての環境関係の国連施設として、大阪市及び滋賀県に開設された。同センターは、開発途上国等への環境上適正な技術の移転を目的とし、淡水湖沼集水域の環境管理の技術分野を担当する滋賀事務所と、大都市の環境管理を中心とした技術分野を担当する大阪事務所とから構成され、環境保全技術に関するデータベースの整備、情報提供、研修、コンサルティング等の業務を行っている。
 国連アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)は、アジア・太平洋地域の持続可能な開発に向けて、1992年(平成4年)に「環境と持続可能な開発委員会」を設置して検討を進めてきたが、1997年(平成9年)4月に開催された第53回総会において同委員会を「環境と天然資源開発委員会」を改組し、1998年(平成10年)以降、毎年会合を開催し、事業の実施状況及び事業計画等について検討している。また、ESCAPでは、アジア太平洋地域の持続可能な開発の実現を目指し、「環境と開発に関する閣僚会議」として、1985年(昭和60年)以来、5年ごとに環境大臣会議を開催している。1999年(平成11年)4月に開催された第55回総会において、2000年(平成12年)8月31日から9月5日まで、北九州市にて第4回アジア太平洋環境大臣会議を開催することを決定した。今回の会議では、アジア太平洋地域におけるアジェンダ21の実施状況をレビューするとともに、本地域における環境と開発に関する将来の方向性が議論される予定である。アジア・太平洋地域における環境教育の充実・普及に貢献するため、国連教育科学文化機関(UNESCO)と協力して、環境教育に関するセミナーを1999年(平成11年)11及び12月に我が国で開催した。また、我が国は、UNESCOが実施する海洋学、生態学、水文学等の地球環境科学に関する調査・研究・訓練事業に協力して、平成11年度においては総額22万ドルの信託基金を拠出し、事業の推進に貢献した。

ウ 経済協力開発機構(OECD)及び国際エネルギー機関(IEA)における活動
 OECDは、先進工業国間の経済に関する国際協力機関であり、2000年(平成12年)3月31日現在29か国が加盟している。最高意思決定機関は理事会であり、毎年1回閣僚レベルの閣僚理事会が開催される。
 1960年代末の全世界的な環境問題への関心の高まりを反映し、1970年(昭和45年)7月環境委員会が設置され、1992年(平成4年)3月には、一部改組の上、環境政策委員会へと名称が変更された。
 環境政策委員会では、各加盟国政府が環境政策を企画立案する上で重要と思われる問題について検討が行われる。その結果は必要に応じて理事会においてOECD決定あるいは勧告として採択されるほか、調査、研究等の成果がレポートとして公表され広く活用されており、汚染者負担原則(PPP)の確立・普及等の成果を生んできている。
 また、近年はOECDのその他の委員会においても各々の視点から環境問題が横断的に取り上げられてきている。さらに、環境政策委員会と他の各委員会との合同の作業も増加しており、「貿易と環境」に関する合同専門家や、「農業と環境」に関する合同専門家会合等が設置されるなど、分野横断的な検討を行っている。環境政策委員会では、おおむね5年に1度閣僚レベルの会議を開催しており、前回1998年(平成10年)の第6回環境政策委員会閣僚会議(OECD環境大臣会合)では、21世紀のグローバル化時代における持続可能な開発を目指し各国及びOECDがとるべき行動についての指針を示した「行動のための共通ゴール」を採択したほか、2001年に開催される次回OECD環境大臣会合までに21世紀におけるOECDの環境戦略を策定することを決定した。
 さらに、先進国間で共通に取り得る費用効果にすぐれた温室効果ガス排出抑制や吸収源強化のための政策・措置について分析・評価が進められている。また、1995年(平成7年)の気候変動枠組条約第1回締約国会議において、OECD/IEA加盟24か国の提案により発足した気候変動技術イニシアティブ(CTI)については、CTI議長国である我が国のリーダーシップの下、1997年(平成9年)12月の気候変動枠組条約第3回締約国会議期間中に発表したCTI参加国による閣僚声明も踏まえ、国際協力による技術の開発・普及と長期的視点に立った革新的技術の具体化を進めている。

エ 世界貿易機関(WTO)における取組
(ア)WTO貿易と環境に関する委員会(CTE)の取組
 環境問題への関心の高まりに伴い、1995年(平成7年)WTOは貿易と環境に関する委員会(CTE)を設置した。以来、CTEは環境と貿易に関する国際的な議論の中心的なフォーラムとなっている。1996年(平成8年)12月には、シンガポールでの第1回閣僚会議に貿易と環境に関する報告書を提出した。その後、CTEは、毎年3〜5回のペースで会合を開催している。1999年(平成11年)には、3回開催され「多国間環境協定による環境目的の貿易措置とWTOとの関係」を始めとする10の項目について検討を行ったほか、3月には貿易と環境に関するハイレベル・シンポジウムを開催した。
(イ)第3回WTO閣僚会議(於シアトル)
 WTO次期交渉の枠組みを定めるため、1999年(平成11年)11月から12月にかけて第3回WTO閣僚会議が米国のシアトルで開催された。同会議では、環境問題に対する市民社会の関心の高まりを受けて、貿易と環境の問題についても取組が期待されたが、会議自体が閣僚宣言を発出することなく終了したため、進展は見られなかった。

オ アジア・太平洋経済協力(APEC)における環境問題への取組
 1994年(平成6年)にカナダのバンクーバーで開催されたAPEC環境担当閣僚会合において、持続可能な開発を実現する上で取り組むべき優先的な分野の一つとして「持続可能な都市」が取り上げられた。本テーマは、1996年(平成8年)のマニラでの持続可能な開発担当閣僚会議においても、主要議題の一つとして取り上げられた。また、1997年のトロントでの持続可能な開発のための環境大臣会合では、「持続可能な都市のための行動計画」が承認され、我が国が平成10年に開催した「持続可能な都市のための環境教育シンポジウム」を始め、各国に於いて取組が進められている。

カ 主要国首脳会議(サミット)における環境問題への取組
 1981年(昭和56年)のオタワサミット以来、経済宣言において環境問題が取り上げられてきているが、特に1989年(平成元年)のアルシュ・サミット以降地球環境問題が重要な課題として位置付けられていることが大きな特色である。
 1999年(平成11年)6月のケルン・サミットでは、持続可能な開発に向けた取組の強化を図るため、WTO次期ラウンド交渉において環境に対して十分な考慮がされるべきこと、国際開発金融機関の活動を支援する際に環境上の配慮を行うこと及びOECDの枠組みの中で輸出金融機関のための共通の環境上の指針の作成に向け作業を行うことにつき合意した。また、気候変動については、これが持続可能な開発に対する極めて深刻な脅威であるとの認識を再確認し、京都議定書の早期発効を目的としてブエノスアイレス行動計画の実施において時期を得た進展が得られるよう図るべく作業を進めること及び温室効果ガス排出量削減のための国内措置を策定し、実施することを約束するとともに、これらの措置の「優良事例(ベスト・プラクティス)」について経験を共有することに合意した。さらに、より多くの開発途上国が温室効果ガスの排出量の制限に参画することを促進することとし、資金供与制度、技術の開発・移転、対処能力の形成を通じて支援することの必要を強調した。
 また、このサミットに先立ち1999年(平成11年)3月にドイツのシュヴェリーンで開催されたG8環境大臣会合においては、「気候変動」、「環境と運輸」、「バイオセイフティ議定書」、「環境分野における国連改革」及び「環境と安全保障」に関し、G8としての取組について検討が行われた。

(2)2国間の枠組みによる連携

ア 環境保護協力協定に基づく取組
(ア)米国
 1975年(昭和50年)8月に日米環境保護協力協定が締結されて以来、同協定に基づき広範な環境問題を討議するため、閣僚レベルによる合同企画調整委員会を過去11回開催している。第11回委員会は、2000年(平成12年)3月ワシントンで開催され、両国にとって関心の深い化学物質問題、環境設計・ライフサイクルアセスメント、環境と貿易、大気汚染物質の越境移動途上国への環境協力と日米の連携の可能性等について意見交換が行われ、共同プロジェクトの実施について議論が行われた。
 また、同協定に基づき、現在17のプロジェクトが設置されており、情報交換、会議の開催、専門家の交流が進められている。
(イ)ドイツ
 1997年(平成9年)8月に、日独環境保護協力協定が締結された。この協定では、地球温暖化の防止、オゾン層の保護や砂漠化の防止などの分野について、政策、法令及び技術についての情報等の交換を通じて、日独両政府は環境の保護の分野における協力を発展させることとしている。この協定に基づく第1回合同委員会が1998年(平成10年)12月にドイツのボンで開催され、両国の環境政策に関する意見交換、今後の協力活動などについて活発な議論が行われた。
(ウ)ロシア
 1991年(平成3年)4月に、日ソ環境保護協力協定が締結された。1999年(平成11年)6月モスクワにおいて、同協定に基づく第2回日露環境保護合同委員会が開催され、両国の環境政策、地球環境問題に対する取組等について活発な議論が行われた。
(エ)中国
 1994年(平成6年)3月に締結された日中環境保護協力協定に基づく第4回日中環境保護合同委員会が、1999年(平成11年)11月に中国・北京で開催され、地球環境問題等につき話し合われたほか、ダイオキシンの汚染状況の解明等に関する調査研究等の、12件のプロジェクトを共同で実施することについて意見の一致を見た。また、これに引き続き、北京で第3回日中環境協力総合フォーラムが開催され、環境協力に関係している日中双方の官民の様々な機関、団体が2日間にわたって意見交換等を行った。
(オ)韓国
 1993年(平成5年)6月に締結された日韓環境保護協力協定に基づく第5回日韓環境保護協力合同委員会が、1999年(平成11年)7月に東京で開催され、21世紀に向けた両国の協力等が話し合われたほか、北東アジアにおける大気汚染物質の長距離輸送と酸性沈着の観測に関する研究等の、32件のプロジェクトを共同で実施することについて意見の一致を見た。

イ 科学技術協力協定に基づく取組
(ア)米国
 1988年(昭和63年)6月に締結された日米科学技術協力協定の下、閣僚級の合同高級委員会がこれまで7回開催された。第7回会合は、1997年(平成9年)10月東京にて開催された。
 同協定の附属書?においては、7つの主要協力分野が挙げられており、このうち「地球科学及び地球環境」分野においては現在82プロジェクトの実施につき意見の一致を見、共同研究等を行っている。
(イ)カナダ
 1986年(昭和61年)に締結された日加科学技術協力協定に基づき、これまで合同委員会が6回開催され、環境分野における協力が進められている。同協定の下に「北太平洋における地球科学・環境パネル」が設置され、第2回会合が1998年(平成10年)9月に開催されるなど、協力が進められている。
(ウ)英国
 1994年(平成6年)6月に締結された日英科学技術協力協定に基づき、第3回合同委員会が2000年(平成12年)2月に開催された。同協定の締結により、これまでの科学技術協力に基づく研究協力等がより一層推進されることとなった。
(エ)ドイツ
 1974年(昭和49年)に締結された日独科学技術協力協定に基づき、「環境保護技術パネル」が設置され、1976年(昭和51年)以来17回パネル会合が開催されるなど協力が行われている。第17回パネル会合は1998年(平成10年)11月にドイツで開催され、協力プロジェクトについて意見交換が行われた。第17回合同委員会は1999年(平成11年)12月に東京で開催され、右パネル会合等の報告が行われた。
(オ)ロシア
 1973年(昭和48年)に締結された日ソ科学技術協力協定の下、ソ連と継続性を有する同一の国家であるロシアとの間で第5回委員会が1999年(平成11年)6月に開催された。同協定に基づき、「極東シベリアの森林が地球環境に及ぼす影響の評価に関する研究」等のテーマについて協力が進められている。
(カ)フィンランド
 1997年(平成9年)9月、日・フィンランド科学技術協力協定が締結され、1998年(平成10年)9月、本協定に基づく第1回合同委員会が開催された。
(キ)その他
 上記のほか、フランス、イタリア、オーストラリア、インド、イスラエル等と、科学技術協力協定に基づく協力プロジェクトを通じ、環境分野の国際協力を実施している。

ウ その他の活動
(ア)コモン・アジェンダ(地球的展望に立った協力のための共通課題)
 1993年(平成5年)7月に行われた日米首脳会談は、環境問題等の21世紀の課題に対処する方策を模索する場として「コモン・アジェンダ(地球的展望に立った協力のための共通課題)」を打ち出し、その枠組みの中で「地球環境の保護」等五つの柱の下で協力を行うことにつき意見の一致が見られた。地球環境の保護については、定期的協議のための「次官級フォーラム(環境政策対話)の創設」及び「保全」、「森林」等の七つの分野が合意された。
 1993年(平成5年)9月にワシントンにおいて第1回次官級全体会合が開催されて以来、現在までに9回の全体会合が開催されており、環境を始めとする協力分野について協議が行われた。また、環境政策対話は、これまでに8回開催され、地球環境問題を中心に協議が行われた。
(イ)天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)
 UJNRは1964年(昭和39年)に設置され、第16回全体会議が1998年(平成10年)10月に米国で開催された。
(ウ)日・EU環境ハイレベル会合
 1991年(平成3年)7月に出された日・EC共同宣言において、環境分野における日本とEC間の協力の必要性が強調された。これを受けて、平成4年以降8回の会合が開催された。第8回会合は、1999年(平成11年)7月ベルギーのブラッセルにて開催され、環境分野における日・EU間の協力が着実に進展している。
(エ)日加環境政策協議
 1995年(平成7年)8月にカナダから、両国間の環境政策対話の場の設置について提案がなされたことを受けて、1996年(平成8年)3月、第1回日加環境政策協議がバンクーバーで開催された。第2回会合は、1998年(平成10年)9月に東京で開催され、両国の環境政策の現状や気候変動問題等について意見交換等が行われた。
(オ)日豪環境政策協議
 1999年(平成11年)4月に豪から、環境問題に関する日本と豪の定期的対話の創設の提案があり、第1回会合が、1999年(平成11年)9月東京で開催された。気候変動、化学物質等について、実務レベルでの意見交換を行った。
(カ)21世紀に向けた日中環境協力
 これまで、日中間においては「日中環境協力総合フォーラム」を始め、環境分野に関する政策対話を進めてきたところであるが、1997年(平成9年)9月に橋本総理(当時)が訪中時に李鵬総理(当時)と「環境開発モデル都市構想」と「環境情報ネットワーク整備」の2本柱からなる「21世紀に向けた日中環境協力」ついて意見の一致をみた。その「環境開発モデル都市構想」については、1999年(平成11年)4月に専門家委員会よりモデル都市(重慶、貴陽、大連)において実施されるべきプロジェクトが推薦され、2000年(平成12年)3月に、そのうち8プロジェクトへの円借款のほか、11月にはソフト面の協力について検討するためプロジェクト形成調査団が派遣された。また、「環境情報ネットワーク整備」については、2回の基本設計調査を経て、概要説明調査団が派遣され、着実な進展が見られている。
(キ)その他
 このほか、スペイン、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー等との間で、協力プロジェクトを通じ、環境分野の国際協力を実施している。

(3)海外広報等の推進

 我が国が、深刻な公害問題を克服する過程で得た豊富な経験や環境分野での知見を国際社会に提供することや、日本が地球環境問題に積極的に取り組んでいることを国際社会に伝えることは、我が国が国際社会において責任ある役割を果たす上で重要である。
 このため、環境庁は、環境白書を英訳した「Quality of the Environment in Japan」や英文の季刊ニュースレター「Japan Environment Quarterly」を発行するとともに、日本の環境政策の紹介のための広報パンフレット「Working for the Environment - An Introduction to the Environment Agency and the Japan's Environmental Policy」等海外広報資料の作成・配布やインターネットを通じた海外広報を行っている。

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