前のページ 次のページ

第1節 

3 環境影響評価の実施

(1)環境影響評価法に基づく環境影響評価

 環境影響評価法は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立・干拓、土地区画整理事業等の面的開発事業のうち、規模が大きく、環境影響が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価手続の実施を義務付けている(4-1-1図)。
 同法は平成11年6月から全面施行されているが、環境影響評価方法書の手続は平成10年6月から行っており、平成11年12月までに17件の手続が開始されている。
 また、条例や行政指導などに従い、同法により作成されるべき各種書類に相当する書類が、同法の施行前に作成されている事業については、同法における該当書類が既に作成されたものとみなして、中途からこの法律の手続を開始することができるとされている。平成11年12月までに、同法に基づく環境影響評価手続が終了した事業は9件となっている。



(2)閣議決定に基づく環境影響評価

 環境影響評価法が全面施行されるまでは、昭和59年8月に閣議決定された「環境影響評価実施要綱」に基づく環境影響評価手続が行われた。
 平成11年12月末までにこの要綱に基づく環境影響評価手続が終了した事業は累計で456件となっている(4-1-1表)。



(3)個別法等による環境影響評価等

 港湾法、公有水面埋立法等の個別法等に基づく環境影響評価について、平成11年度に実施されたものの概要は以下のとおりである。
? 港湾計画
 港湾法に基づいて定められる港湾計画は、港湾における開発、利用及び保全に当たっての指針となる長期的・基本的な計画であり、計画の策定に際しては、「港湾の開発・利用並びに開発保全航路の開発に関する基本指針」を受けて、環境に与える影響についての評価を行っている。平成11年度においては、港湾審議会計画部会が3回開催され、和歌山下津港、中津港等の港湾計画について所要の審議を行った。
? 公有水面の埋立て
 公有水面埋立法においては、埋立ての免許に際して環境に与える影響について事前に検討することとされており、50haを超える埋立てや環境保全上特別の配慮を要する埋立てについては、主務大臣が埋立ての免許を認可するに際して環境庁長官の意見を求めることとされている。平成11年度においては、神戸港内、泉州港内等(関西国際空港?期事業)等の埋立てについて検討を行い、所要の意見を述べた。
? 発電所の立地
 発電所の立地については、環境影響評価法、電気事業法及び通商産業省省議決定に基づく環境影響評価が実施されている。また、電源開発調整審議会における調査審議の際には、通商産業省の行った環境審査結果などをもとに環境保全についても検討が行われている。平成11年度においては、電源開発調整審議会が2回開催され、広野発電所5・6号機、京極発電所等の計画について所要の調整を行った。
? その他
・市街化区域に関する都市計画
 都市計画法に基づく市街化区域に関する都市計画については、あらかじめ環境庁長官の意見を求めることとされており、平成11年度においても環境汚染の未然防止の観点から所要の調整を行った。
・総合保養地域の整備
 総合保養地域整備法に基づく基本構想の作成及び事業の実施に際しては、その内容に応じて環境保全上の観点からの検討などを行うこととされ、また、主務大臣が基本構想を承認するに際して環境庁長官に協議することとされている。

(4)地方公共団体における取組

 都道府県・政令指定都市の多くは、条例や要綱による独自の環境影響評価手続を設けていたが、環境影響評価法の制定等を背景に、制度の見直しが活発に行われ、ほとんどの団体が条例の制定、あるいは、改正を行っている(4-1-2表)。
 条例の概要としては、環境影響評価の方法について住民等の意見を聴く仕組み(スコーピング)や、事業又は施設が都市計画に定められる場合の特例などについては、環境影響評価法と同じ手続を設けている。
 また、審査会等第三者機関への諮問については、すべての団体が導入しており、事業者に事後調査を義務付けするものが多い。
 対象事業については環境影響評価法対象の規模要件を下回るものに加え、廃棄物処理施設やスポーツ・レクリエーション施設、畜産施設、土石の採取、複合事業なども対象としており、さらに環境基本法に規定されている「環境」よりも広い範囲の「環境」の保全を目的とし、埋蔵文化財、地域コミュニティの維持、安全などについても評価対象にするなど、地域の独自性が発揮されている。

前のページ 次のページ