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第3節 

1 土壌環境の安全性の確保

(1)土壌環境の現況

 「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」に基づく特定有害物質による農用地の土壌汚染の実態を把握するため、昭和46年度から汚染のおそれのある地域を対象に細密調査が実施されており、平成10年度はカドミウム等に係る調査が5県12地域665haにおいて実施された。この結果、現在の指定地域とは別に新たに指定され得る地域はないが、指定地域周辺で基準値以上検出されたため、その検出面積の累計は129地域7,145haとなった。
 一方、市街地の土壌汚染問題については、汚染地の多くが私有地であり、局所的な汚染が多いこと等から顕在化することが少なかった。しかし、近年、土地所有者による調査等により汚染が判明する事例が増加しており、地方公共団体に対して行ったアンケート調査によると、平成11年3月末までに、環境基準を超過した土壌の存在が明らかになった事例は全国で累計292件判明している。

(2)土壌汚染対策

ア 環境基準の設定
 土壌環境基準は現在カドミウム等合計25項目が設定されている。
 なお、平成11年2月、水質汚濁に係る環境基準及び地下水の水質汚濁に係る環境基準に硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素並びにほう素が追加されたことを受け、地下水等における水質保全と密接な関係を有する土壌についても、土壌環境基準の項目追加等について平成11年7月14日に中央環境審議会に諮問したところであり、現在審議中である。

イ 未然防止対策
 土壌への有害物質の排出を規制するため、水質汚濁防止法に基づき工場・事業場からの排水規制や有害物質を含む水の地下浸透禁止措置、大気汚染防止法に基づき工場・事業場からのばい煙の排出規制措置、農薬取締法に基づき土壌残留性農薬の規制措置、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき廃棄物の適正処理確保のための規制措置等を講じている。
 また、金属鉱業等においては、鉱山保安法に基づき鉱害防止のための措置を講じている。金属鉱業等に係る鉱山の施設には、操業停止後も引き続き鉱害を発生するおそれがあるため、金属鉱業等鉱害対策特別措置法に基づく鉱害防止事業の計画的な実施等に努めている。
 平成5年度には、同法に基づく今後10年間の鉱害防止事業に関する基本方針を改正し、休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金制度により、当該防止工事の促進を図っている。また、金属鉱業事業団では、使用済特定施設の鉱害防止事業に必要な資金及び土壌改良事業に係る事業者負担金に対する融資・債務保証、鉱害防止事業基金への拠出金に対する融資、鉱害防止積立金及び鉱害防止事業基金の管理・運用、鉱害防止技術の開発のための調査研究、地方公共団体の実施する鉱害防止事業に対する調査指導及び設計等の指導支援の業務を実施している。また、鉱山における坑廃水処理について、永続的に消費されるエネルギーの削減を図るため、省エネルギー型坑廃水処理技術の開発を行っている。

ウ 農用地土壌汚染防止対策
 基準値以上検出地域のうち平成11年11月30日現在までに6,259ha(67地域)が対策地域として指定され、そのうち6,174ha(67地域)において対策計画が策定済みである。公害防除特別土地改良事業等(国庫補助)により5,157haで対策事業が完了し、県単独事業等による対策完了面積474haと合わせて5,631haで対策事業が完了(平成11年度末完了予定を含む。)している。対策事業の進捗率は78.8%である(1-3-1表)。
 なお、カドミウム汚染地域においては、対策事業等が完了するまでの暫定対策として、汚染米の発生防止のための措置が講じられている。
 このほか、重金属類による農用地の土壌汚染の全般的な状況を把握するため、定点において土壌環境負荷低減対策推進事業に基づく調査が実施されている。
 また、農用地の土壌が汚染されている地域等において、客土、土壌改良等の効果について現地改善対策試験が実施されている。さらに、農用地における土壌中の重金属等の蓄積防止に係る管理基準に基づき、土壌汚染の未然防止に努めている。



エ 市街地土壌汚染対策
 市街地の土壌については、環境基準の達成維持に向け、平成11年1月に策定した「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針」に基づき、土壌の汚染が明らか又はそのおそれがある場合には、土地改変等の機会を捉えて環境基準の適合状況の調査を実施し、汚染土壌の存在が判明した場合には可及的速やかに環境基準達成のために必要な措置が講じられるよう、事業者等の自主的な取組を促進している。また、民間事業者による市街地土壌汚染対策事業に対し、日本政策投資銀行が融資を行っている。
 さらに、地方公共団体が実施する環境基準の適合状況の調査、土壌汚染の調査・対策の技術体系をモデル実証する事業に対して助成するとともに、土壌汚染浄化新技術の確立、土壌汚染の実態把握や汚染対策に関する情報の整備・提供のための調査等を行った。

オ ダイオキシン類による土壌汚染対策
 社会的に大きな関心を集めているダイオキシン類については、平成11年7月に成立したダイオキシン類対策特別措置法に基づき、ダイオキシン類に係る土壌環境基準及びダイオキシン類による汚染の除去等をする必要があるダイオキシン類土壌汚染対策地域を指定する要件を定めることとされた。そのため、中央環境審議会の平成11年12月10日の答申を受け、環境基準を1,000pg-TEQ/g以下と設定するとともに、汚染の進行防止等の観点からモニタリングや調査を開始する調査指標を250pg-TEQ/g以上と定めた。さらに、対策地域の指定の要件は、環境基準を超過する地域であって、一般国民が立ち入ることができる地域とした。なお、これらの基準等の検討のため、「子供の遊び場」での土壌中ダイオキシン類実態調査や、ダイオキシン類汚染土壌を口から取り込んだときの体内でのダイオキシン類の吸収率に係る調査等を実施した。
 加えて、ダイオキシン類汚染土壌の浄化技術の確立のため、実用化レベルで実証試験を行うとともに、対策技術の総合的な体系を構築するため、多様な対策手法による環境リスクの低減効果や周辺環境への影響を検証した。

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